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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第一章 ヒューマニア王国

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第55話 恐怖の魔土術実技演習

「皆さん、今日は魔土術を実際に的に向かってはなってもらいます。属性は何でも構いません。攻撃系がない人は身体強化や回復魔土術をかけてみてください」


 大人気となったノア先生の講義。今回は訓練場で行われている。詠唱する際に注意すべきこと、ポイントなどを丁寧に説明する。学院生のほとんどが頷いて真剣に聞いていたが、またしてもアイツらが出てきた。


「おい! 下民! 早くこちらのヘッポコット様とミスバッカに魔土術を撃たせろ! お前に我ら上級貴族の魔土術というものを特別に見せやる」


(またアイツらか……)


 周囲の学院生が皆そう思っている。


「構いませんよ。それではお二人に特別には皆さんのお手本となっていただきましょう」


 そうノアが言って、二人を前へ来させる。しかし、肝心の的が見当たらない。


「おい! 的はどこにあるんだ! どこに撃てばいいんだよ!」


 怒鳴り散らすミスバッカにノアが笑顔で答える。


「今からランダムにあなた方の周囲に的が現れます。お二人はその的に向かって思い切り撃ち込んでください。距離は近いので外すことはありません」


「いいだろう。早くやれ!」


 ミスバッカとヘッポコットがニヤリと笑ってノアの顔を見ている。


「皆さん! これからここのお二人がとても良いお手本となりますので、しっかりと見ておいてください。いきなりだと気弱い人は失神するかもしれませんので」


「「「……へ? 失神?」」」



「それでは始め!」


「よし来い! お前たちに貴族のすごさを見せつけて――」


 突如お馬鹿貴族の目の前にソイラグリズリーが現れた。


「「ウ、ウギャアアー!!!」」


 パタリと倒れるミスバッカとヘッポコット。見事に綺麗な失神だ。


「あ……漏らしてる……」



 周囲の学院生は漏らして失神した二人を笑う余裕がなかった。それ以上に突然現れた魔物に対するインパクトがあまりにも大き過ぎて……



「こ、これが上級貴族だと……ただいばり散らして情けないだけじゃないか」


 オコール・アングリーは複雑な気持ちだった。自分自身にも言えることだったからだろう。今まで相手の力量を見ずに庶民か貴族か、もしくは下級か上級の貴族かで差別していた自分がいかに愚かだったかを思い知らされたからだ。


 失神した二人をノアが魔土術で遠くへ移動させた後、シーンとなった学院生に講義を続ける。


「皆さん、これはダンジョンや王国外の世界を想定した模擬訓練と思ってください」


 ザワついている。学院生たちの動揺が手に取るように伝わって来る。


「今一度、何のために学院に入学して学んでいるのかを考えてみてください。立派に魔土術を撃てたらそれでいいのですか? 実戦でなんの役にも立たない見かけだけの騎士になれたらそれでいいのですか?」


 ノアの言葉が学院生の胸に突き刺さる。


「ヒューマニア王国が今以上に発展するためには皆さんの力が必要です。今以上に王国全体が快適で豊かな生活を送るためには我々学院生が卒業後、ここガイアの地で、ダンジョンの中で活躍しなければなりません!」


「…………」 


「平和な日々が続くとも限りません。時には魔物の群れが、或いは多種族との戦いが起こるかもしれません! そんな時に我々が立ち上がらなければ王国が滅びてしまうのです! この訓練は、皆さんが将来活躍するための第一歩だとお考えください。 魔物への慣れです」


「……魔物への慣れ」


 学院生全員がすっかりノアの話術に引き込まれている。王国にとって嬉しく思うべきことだが、あのノアの腹黒さを徐々に理解しつつあるミラ王女は呆れた表情で見守っていた。ちなみに隣のリリアナ王女は目を輝かせてノアの話を聞いて頷いている。


「魔物は本物です。しかしもう生きていません。動かないですが、その迫力は十分です。なんと、魔土術学院が我々のためにS級の魔物を用意してくださったのです!」


 どよめく学院生。笑って見守る校長とエミール先生。しっかりと学院のすごさをアピールしている。実際は自分で獲って自分の講義で活用している、自作自演なのだが。


「皆さん、大体3人から5人くらいでグループを作ってください。どのようなメンバー構成でも構いません。将来魔土戦士(ソレイヤー)になりたいという人は剣を握って魔物に向かって斬りかかってください。補助系魔土術士(ソレイジ)になりたい人は同じグループのメンバーにバフをかけてください」


「なるほど。これは素晴らしいアイデアね!」


 ミネルヴァ校長が喜んでいる。


「これは実践を想定した訓練です。グループ同士が固まらずにばらけてくださいね! それでは訓練開始!」



 一気に学院生パーティーの前に数十体の魔物が現れる。学院生の悲鳴と共にひ弱ではあるが詠唱して魔土術を放つ。チクっとする程度のダメージだろうが魔物の剝製にパチン、ペチンと当てている。


「クソォ! 喰らえ!」


 同じくひ弱だが必死に剣で斬りかかる魔土戦士ソレイヤー希望の学院生たち。他の学院生も恐怖で腰が引けてはいるがバフをメンバーにかけている。


「いいですよ! 皆さん! その調子です! ん?」


 目の前でマリアが必死にファイアを当てていた。同じグループのリリアナ王女も足は震えているが最弱に抑えたパワーの風魔土術をしっかり魔物に当てている。


 ヘンリーはノアから本気で斬りかかると剥製が壊れそうだから、魔土術を直接放って攻撃しろと注文を受け、ティアはファイアをできるかぎり小さく絞って詠唱し、魔物の目とコアをピンポイントで撃ち抜くように課題を出されていた。


「お兄ちゃん、これちょっと厳しいわよ。どうやって炎を1センチ程度に圧縮するのよ! やれないと単位を落とすとか意味わからないし!」


「あはは。僕は苦手な魔土術での攻撃。まっすぐに飛ばないよ……でも、これがもし使えるようになったら……そう考えるようにしている!」


「ヘンリーは本当に前向きよね……わかったわよ! 私も頑張るわ」


 そしてミラ王女もまた、苦戦していた。


「どうやったらハイソイラをパーティーメンバー全員に同時にかけられるのよ……周りの学院生の前だから、いつものようにノアに詰め寄ることができないわ」


 やはり、厳しい課題をしっかり与えられていた。



「皆さん! とてもいいです! この気持ちの強さを忘れないでください! 今後必ず実際のダンジョンへ()()()()訓練できるように僕が手配しますので、それまでに必ず力をつけてくださいね。でないと死にますから」


 この人、笑顔でとんでもないこと言うなと感じる学院生だったが、不思議なことに講義から離れるものはいなかった。その後、学院生の魔土術レベルはノアと教員たちの努力もあり、めきめき上達していった。




 こうして一年の月日が流れ、物語が大きく動き始める。



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