番外編④
付き合い始めてからも、私たちはアイドルを続けた。
私は9人で活動を続けていたし、透真さんも5人のグループで活動していた。
付き合ったからといって、仕事が変わるわけじゃない。
むしろ、お互いに今まで以上に仕事を大切にした。
そんな中で、私たちはそれぞれ俳優としての仕事も増えていった。
最初は少しだけだった出演も、少しずつ増えていく。
ドラマの撮影。
映画の撮影。
慣れないことも多かったけれど、新しいことに挑戦できるのは楽しかった。
そして、ある日。
「ねね、次のドラマなんだけど」
マネージャーから渡された資料を見て、私は固まった。
「……恋愛ドラマ?」
「そう」
そして、出演者の名前を見た。
「黒川透真」
「……え?」
まさかと思って、もう一度確認する。
間違いない。
主演の相手役は、透真さんだった。
そのことを伝えると、透真さんも驚いていた。
「まさか、ねねと共演するとは思わなかった」
「私もです」
付き合っていることを知られてはいけない。
だから撮影現場では、いつも通りにする。
恋人役として距離を縮める。
カメラの前では、恋人同士。
カメラが止まれば、いつもの私たち。
そんな不思議な時間が続いた。
ドラマが放送されると、反響は想像以上だった。
2人の演技を褒める声。
「この2人、本当にお似合い」
「本当に付き合ってたらいいのに」
「もうこのまま結婚してほしい」
そんなコメントまで増えていった。
スマホを見ながら、私は思わず笑った。
「……結婚してほしいって」
隣にいた透真さんが画面を覗き込む。
「ほんとだ」
「どうします?」
冗談のつもりで聞いた。
すると透真さんは、少しだけ笑った。
「俺は、いいけど」
「……え?」
「ねねは?」
私はしばらく黙ってから、笑った。
「私も……いいですよ」
それからしばらくして。
私たちは、それぞれのグループ活動を続けながら、俳優としても活動を続けた。
そして、何年か経ったある日。
事務所から正式に発表された。
私と透真さんが、結婚すること。
発表された瞬間、SNSにはたくさんの言葉が溢れた。
「え、本当に結婚した!」
「ずっとお似合いだと思ってた」
「ドラマの2人が本当になった」
「結婚してほしいって言ってたら本当にした」
そんな言葉を見ながら、私は笑った。
まさか、あの頃の自分が。
透真さんのことを「チャラそうな人」だと思っていたなんて。
今では、隣にいることが当たり前になった。
「ねね」
「はい?」
「なんか、すごいね」
「何がですか?」
「ドラマで結婚してほしいって言われて、本当に結婚した」
「ふふっ」
私は笑った。
「じゃあ、ドラマのおかげですね」
「それもあるかも」
透真さんも笑う。
でも、本当は分かっている。
ドラマがきっかけだったわけじゃない。
もっと前から。
私たちは少しずつ、お互いを知っていった。
好きになって。
待って。
それぞれの大切なものを守って。
そして今、こうして同じ場所にいる。
画面の向こうで「本当に結婚してほしい」と言っていた人たちに、私たちは最後にちゃんと答えを届けることができた。
私たちは、本当に結婚した。




