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こんなはずじゃ  作者: 莉璃翠


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6/8

番外編④

付き合い始めてからも、私たちはアイドルを続けた。


私は9人で活動を続けていたし、透真さんも5人のグループで活動していた。


付き合ったからといって、仕事が変わるわけじゃない。


むしろ、お互いに今まで以上に仕事を大切にした。


そんな中で、私たちはそれぞれ俳優としての仕事も増えていった。


最初は少しだけだった出演も、少しずつ増えていく。


ドラマの撮影。


映画の撮影。


慣れないことも多かったけれど、新しいことに挑戦できるのは楽しかった。


そして、ある日。


「ねね、次のドラマなんだけど」


マネージャーから渡された資料を見て、私は固まった。


「……恋愛ドラマ?」


「そう」


そして、出演者の名前を見た。


「黒川透真」


「……え?」


まさかと思って、もう一度確認する。


間違いない。


主演の相手役は、透真さんだった。


そのことを伝えると、透真さんも驚いていた。


「まさか、ねねと共演するとは思わなかった」


「私もです」


付き合っていることを知られてはいけない。


だから撮影現場では、いつも通りにする。


恋人役として距離を縮める。


カメラの前では、恋人同士。


カメラが止まれば、いつもの私たち。


そんな不思議な時間が続いた。


ドラマが放送されると、反響は想像以上だった。


2人の演技を褒める声。


「この2人、本当にお似合い」


「本当に付き合ってたらいいのに」


「もうこのまま結婚してほしい」


そんなコメントまで増えていった。


スマホを見ながら、私は思わず笑った。


「……結婚してほしいって」


隣にいた透真さんが画面を覗き込む。


「ほんとだ」


「どうします?」


冗談のつもりで聞いた。


すると透真さんは、少しだけ笑った。


「俺は、いいけど」


「……え?」


「ねねは?」


私はしばらく黙ってから、笑った。


「私も……いいですよ」


それからしばらくして。


私たちは、それぞれのグループ活動を続けながら、俳優としても活動を続けた。


そして、何年か経ったある日。


事務所から正式に発表された。


私と透真さんが、結婚すること。


発表された瞬間、SNSにはたくさんの言葉が溢れた。


「え、本当に結婚した!」


「ずっとお似合いだと思ってた」


「ドラマの2人が本当になった」


「結婚してほしいって言ってたら本当にした」


そんな言葉を見ながら、私は笑った。


まさか、あの頃の自分が。


透真さんのことを「チャラそうな人」だと思っていたなんて。


今では、隣にいることが当たり前になった。


「ねね」


「はい?」


「なんか、すごいね」


「何がですか?」


「ドラマで結婚してほしいって言われて、本当に結婚した」


「ふふっ」


私は笑った。


「じゃあ、ドラマのおかげですね」


「それもあるかも」


透真さんも笑う。


でも、本当は分かっている。


ドラマがきっかけだったわけじゃない。


もっと前から。


私たちは少しずつ、お互いを知っていった。


好きになって。


待って。


それぞれの大切なものを守って。


そして今、こうして同じ場所にいる。


画面の向こうで「本当に結婚してほしい」と言っていた人たちに、私たちは最後にちゃんと答えを届けることができた。


私たちは、本当に結婚した。

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