番外編③
「……で?」
ゆなが腕を組んで、私を見る。
「付き合ったんだよね?」
「……うん」
「本当に?」
「本当に」
答えた瞬間、8人の視線が一斉に私に集まった。
「そっかぁ……」
みゆが小さく笑う。
「ついにね」
「ねね、顔に出てるよ」
みつきに言われて、私は慌てて頬を押さえた。
「出てないよ」
「出てる」
「めちゃくちゃ出てる」
みんなが笑う。
でも、少しすると空気が変わった。
ゆなが真面目な顔で私を見る。
「ねね」
「はい」
「私たち、ずっと透真のこと警戒してたの覚えてる?」
「……うん」
忘れるはずがない。
透真さんが私に近づき始めた頃、8人はずっと心配していた。
私が傷つくんじゃないか。
遊ばれてしまうんじゃないか。
だから、あの時は透真さん本人にも伝えた。
「ねねを泣かせたら許さないからね」
「覚えてる」
ゆなが苦笑する。
「じゃあ、今は?」
私は少し考えた。
「……大丈夫だと思う」
「なんで?」
「透真さんは、私が待ってって言った時、待ってくれたから」
それだけじゃない。
私がグループを大切にしたいと言った時も、嫌な顔をしなかった。
自分の気持ちを押しつけることもなかった。
私が決めるまで、ずっと待ってくれた。
「だから、私は透真さんを信じてる」
しばらく沈黙があった。
やがて、さやかがふっと笑った。
「……ねねがそこまで言うなら、私たちが口を出すことじゃないね」
「でも!」
あやがすぐに口を挟む。
「もし泣かされたら?」
「その時は私たちが行く」
「全員でね」
まりが笑う。
「9人分の圧、すごそう」
「透真、逃げられないじゃん」
みんなで笑った。
私は少し恥ずかしくなって、
「もう……」
と呟く。
その時、スマホが震えた。
画面を見る。
透真さんからだった。
『終わった? 迎えに行こうか?』
思わず笑ってしまう。
「……透真さん?」
ゆながすぐに気づいた。
「うん」
「顔!」
「だから出てないって!」
また笑い声が響く。
しばらくして、事務所の外に出る。
少し離れたところに透真さんが立っていた。
私たちに気づいて、軽く手を上げる。
すると、ゆなが透真さんのところへ歩いていった。
「透真」
「はい」
「ねねのこと、よろしくね」
透真さんは少し驚いたあと、真剣な顔で頷いた。
「もちろん」
その返事を聞いて、ゆなは笑った。
「ならいい」
その後ろから、みんなも次々に声をかける。
「変なことしたらすぐ呼んでね、ねね」
「何かあったら絶対言って」
「透真、分かってるよね?」
「はい」
透真さんが苦笑する。
私はその様子を見ながら、少しだけ笑った。
ずっと私を守ってくれた8人。
そして、私が自分で選んだ人。
その両方が同じ場所にいることが、なんだか嬉しかった。
「ねね、帰ろ」
透真さんが声をかける。
「うん」
私は8人に手を振って、透真さんの隣に並んだ。
後ろから、
「ねねー! ちゃんと連絡してよー!」
と声が飛んでくる。
「はーい!」
笑いながら返事をする。
隣を歩く透真さんを見る。
もう、「チャラそうな人」なんて思わない。
私が好きになった人。
そして、8人が最後には託してくれた人。
そんなことを考えながら、私は透真さんと並んで歩いた。




