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こんなはずじゃ  作者: 莉璃翠


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4/8

番外編②

契約が終わるまで、残り2年。


透真さんに気持ちを伝えてからも、私たちは何も変わらなかった。


仕事では今まで通り。


2人きりになれば、少しだけ特別な空気になる。


でも、あの日に約束した。


焦らないこと。


だから私は、今まで以上にグループのことを大切にした。


8人のメンバーと過ごす時間。


ステージに立つ時間。


ファンのみんなの声。


全部が大切だった。


透真さんも、何も急かさなかった。


時々一緒に帰ったり、少し話したり。


それだけだった。


でも、その距離感が心地よかった。


そして、2年が過ぎた。


22歳になった私は、契約満了の日を迎えていた。


最後の仕事を終え、9人で事務所を出る。


「なんか、不思議だね」


ゆなが言った。


「15歳からだもんね」


「本当に長かった」


みんなで笑う。


寂しさはあった。


この場所で過ごした7年間は、私にとって大切な時間だった。


でも、私たちはもう決めていた。


「これからも、9人でやろう」


「うん」


「もちろん」


「今さら離れるとか無理でしょ」


みんなの声を聞いて、私も笑った。


「私も、みんなと続けたい」


それが私の答えだった。


9人で新しい事務所を作る。


これからは、自分たちで決めて、自分たちで歩いていく。


事務所を出たあと、私はスマホを取り出した。


連絡先を開く。


黒川透真。


短いメッセージを打った。


『契約、終わりました』


すぐに返信が来た。


『お疲れさま』


そのあと、もう1通。


『会える?』


胸が少しだけ高鳴った。


『はい』


待ち合わせた場所に行くと、透真さんがいた。


「お疲れさま」


「ありがとうございます」


「7年間、本当にお疲れさま」


その言葉を聞いた瞬間、いろんな思いが込み上げてきた。


「透真さんも」


「俺はまだ契約中だけどね」


「そうでした」


思わず笑う。


少し話したあと、透真さんが私を見る。


「ねね」


「はい」


「前に言ったこと、覚えてる?」


私は頷いた。


忘れるはずがなかった。


「……覚えてます」


「俺は、今も同じ気持ちだよ」


胸がいっぱいになる。


あの日から、ずっと待っていてくれた。


急かすこともなく。


無理に答えを求めることもなく。


ただ、私が自分のタイミングで決めるのを待ってくれた。


「私も」


声が少し震えた。


「私も、ずっと好きでした」


透真さんが笑った。


「じゃあ……今度は、待たなくてもいい?」


私も笑う。


「はい」


その言葉だけで、十分だった。


私はようやく、透真さんの隣に立つことを選べた。


仕事も。


グループも。


ファンのみんなも。


そして、自分の気持ちも。


どれかを諦めるんじゃなくて、全部を大切にしながら進んでいく。


「これから、よろしくお願いします」


「こちらこそ」


そう言って笑い合った。


長い間、胸の中にしまっていた気持ちが、ようやく形になった。


私たちは、その日から付き合うことになった。

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