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止まらずに進む時間

『いつまでもそうやって逃げてていいの?』


逃げてるんじゃないの。

立ち上がれないの。

怖くて怖くて。


『向き合わなきゃ何も変わらない』


向き合ったってしんどいだけ。

もう頑張ったよ。


『諦めるの?』


…………。


『少しだけ立ち向かうことも大事だよ。いつかきっと、心から笑える日が来るから』


◇◆◇


私は目を開けた。

ああ、寝てたのか。

なんだったんだろうな、今の夢。

ぼんやりと天井を見つめる。

……変な夢。

私はゆっくりと体を起こした。

結局、班は茉莉のいる班に入ることになった。

断る理由もないし、先生にもそう伝えたのだから変えることはできない。

いつものように深く考えないことにした。

考えたって仕方ない。

今から悩んだところで何かが変わるわけでもない。

そう思ったのに。


『また諦めるの?』


ふと夢の中の声が頭をよぎった。


「…………」


私は小さく首を振った。

夢だ、ただの夢だ。

私はそれ以上考えるのをやめた。


◇◆◇

ーー職業体験当日


私は職業体験実行委員だったため、みんなよりも三十分ほど早くに登校した。

他のクラスの実行委員は仲がいい子と話していて、私は少しだけ居心地悪さを覚えていた。

早くきたものの、待機時間が長く、結局仕事を始めたのはクラスの人達が増えてからだった。

主に実行委員の仕事はみんなをクラスごとに列に並ばせることだった。

私は増えてきた自分のクラスの生徒を列に並べ、この後の日程の確認をした。

開会式的なものをしてからバスに乗り込み、遊園地に向かう。

うちのクラスは午前は自由時間だから、アトラクションにはすぐ乗れる。

午後からは各々選んだ仕事の場所に行き、仕事をして中央広場に集まって閉会式。

お礼の言葉は私の担当だ。


「花奏さん」

「あ、先生」

「ある程度みんな並んでくれたし、開会式は他の子の管轄だから班の子のところに行ってきてもいいよ。なぎちゃんももうきてるよ」

「……わかりました」


先生にお礼を言って、私は列の後ろへ向かった。

班の子たちはすでに集まって話をしていた。

私は渚に駆け寄った。


「渚!おはよー!!」

「花奏、遅かったね。おはよう」

「実行委員の仕事だよぉ……」

「あー、塾で言ってたね。お疲れ」

「ありがと!」

「お、花奏ちゃん来た。おはようー」


茉莉の隣にいた女子が私に気づいて声をかけた。


「お、おはよう」


そういうと、満足したのかその女子はすぐに会話に戻っていった。

びっくりしたぁ……。


「そういえば、渚は絶叫系いけるの?」

「うん、乗れるよ」

「へえ、意外」

「え、なんで?」


渚が不思議そうに首を傾げた。


「いやぁ、なんとなく? 絶叫系とか苦手そうなイメージあった」

「なにそれ。花奏の中の私、どうなってんの?」

「えー?おとなしい絶叫系は怖がるタイプ?」

「舐めてるな」


渚が呆れたように笑う。

私もつられて笑った。

こういう何気ない会話は、やっぱり楽しい。

変なことを言っても、渚は笑ってくれる。

少しくらいふざけても、嫌な顔をしない。

だから、渚といると安心する。


「花奏は?」

「ん?」

「絶叫系。いけるの?」

「あー、私はねぇ……」


乗れるか乗れないかで言えば乗れる。

怖くないかと言われれば、そんなことはないけれど。


「乗れるけどうるさい。慣れたら大丈夫だけど、慣れるまでうるさい」

「ええ……」


しばらく話していると、開会式が始まった。

こうして、私たちの職業体験が始まった。

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