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ポナの季節  作者: 大橋むつお
43/92

43『幕が上がる……予感』


ポナの季節・43

『幕が上がる……予感』         

  


ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとって新子が自分で付けたあだ名




「えー、なんで!?」という寝言で目が覚めてしまった。


 ポナの世田谷女学院は土曜は休みの学校だったが、今日から土曜日も授業をやることになった。なったというのはポナの一人合点で、入学式の時には説明があった……らしい。


――生徒の慣れる様子を見て、一学期中には土曜の授業を始めます――


 そういう話があったそうである。で、月曜日には土曜授業開始の連絡が朝礼で宣言されたが、自分が寺沢家の実子でないことが分かったことや、大ニイの中国船とのゴタゴタ、まだ癒えていないポチの喪失感、幽霊女生徒浜崎安祐美の願い、そういうもののために、先生の話は上の空になっていた……というのがポナの言い訳。


 初めて乗る土曜の電車は空いている。会社はほとんど休みだし、公立の生徒は乗っていない。


 ポナは、電車の中でスマホをイジルようなことはしない。大した生活信条からではなく、ただボンヤリしていたいというのが理由で、ただひたすら、ボンヤリと外の景色を見て居る。天然のボンヤリでもあるが、そうすることによって、日々の煩わしいことや、現在進行形の悩みから解放される……という大義名分の言い訳を持っているが、ポナのために、あえて詮索はしないでおこう。


 ポナは気づいていないが、軽くプリプリの曲を口ずさんでいる。これは安祐美のせいだ。夢の中で毎晩歌の練習をしている。                        


 で、イメージトレーニングのために安祐美と会ったあくる日からこんな調子なのだが、ごく小さな声なので誰に聞かれることも無い。


 だが、今日は土曜日である。


 隣に立っている修学院高校の男子生徒には聞こえていた。


 この修学院の生徒は四月から、ずっとポナの横や後ろにいるのだが、ボンヤリのポナは、全く気が付いていなかった。この修学院の男子生徒も、この先ポナに影響してくるのだが、これも、今は淡い高校生の恋心と、そっとしておこう。

 ただ、この日、修学院の男子君は、ポナが近頃呟いているのがプリプリの曲であることを発見したことだけを記しておく。


 学校に着いてびっくりした。ピロティーの掲示板に吉岡先生がポスターを貼っているところに出くわした。


――アゴダ劇場公演出場者スタッフ大募集!――と書いてあったからだ。


「先生、アゴダ劇場でやるんですか!?」

「あ、うん。ちょっとしたコネで、キャンセル押えられたんでね。まあ、運も実力の内よ」

 良く見ると、ポスターの端っこには『演劇同好会』の文字と、現在の部員数が書かれていた。部員数一名。

「え、この一名ってだれですか?」

「あ、あんたのクラスの鈴木友子。最初に質問してくれた子」

「でも、演目書いてませんけど」



 いつのまにか、由紀と奈菜もやってきて、ポスターを見上げている。



「もう少し人が集まらないと決められないもんね」

「あ、それもそうだ……」

 奈菜が、間の抜けた感心をする。

「ももクロみたいに創作劇やるんですか?」

「あたしは、あの吉岡先生じゃないの。そんな無茶しないわ。人数と個性に合った既成の脚本。レパは五十くらいはあるから、なんとかなる」


 この吉岡先生の粘着力もなかなか。ひょっとしたら、幕は上がるかもしれない……。




ポナの周辺の人たち


父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師

母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん

長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉

次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。

長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官

次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ

三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )

ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。


高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)

支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子

橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長

浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊

吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。


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