44『初めてのリハーサル』
ポナの季節・44
『初めてのリハーサル』
ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとって新子が自分で付けたあだ名
だれも安祐美の存在を不思議には思わなかった。
目が覚めると忘れているが、みんな、この一週間毎晩夢で安祐美の猛特訓を受けている。
「じゃ、ポジションに着いたらチューニングして」
安祐美は、テキパキと無駄のない指示をする。
ボーカル 安祐美
ギター みなみ
ベース 由紀
キーボード 奈菜
ドラム ポナ
チューニングを終えると、それぞれがソロで適当に演奏。安祐美から若干のダメが出て調整した。
なんせ、みなみがコネで借りてくれた貸しスタジオは、二時間半しか使えない。夢の中ではないので、安祐美はリアルな時間を引き延ばすことはできない。
ダイアモンズ、世界で一番熱い夏、OH YEAH!、パパプリンセス、友達のまま、ジュリアン、ONEプリンセスプリンセス、KISS、SEVEN YEARS AFTERを二回ずつ、ダイアモンズは念入りにもう一回繰り返した。
途中でポチが生きていた時のそのままに現れた。ポナもみんなも驚かなかった。夢の中でポチは毎晩現れていたのである。ポチは、一見大人しげに曲を聞いているようだが、耳がピンと立ち、尻尾をリズムに合わせて激しく振っている。あまりに激しく振るので一度千切れて飛んで行ってしまった。ポチは駆けてスタジオの隅に転がっていた尻尾を咥えて器用に体を捻って尻尾を元にもどしてリズムを刻んだ。
しばらくすると、知らない若者たちが滲みだすように壁から現れて、ポナたちの曲をポチといっしょにリズムにノリながら聞いてくれた。
ダイアモンズの三回目が終わると、みんな口笛を鳴らしたり、大拍手をしながら消えていった。
「今の……いったいどこの人たち?」
ポナはドラムセットの中でポチを抱っこしながら、安祐美に聞いた。他のメンバーも汗を拭いたりポカリを飲んだりして、目で同じ質問をする。
「あの人たちは、あたしの仲間。応援して、あたしに力をくれたの」
「仲間って……幽霊さん?」
「まあね、あたしは運がいいから実体化できてるけど、あの人たちは、あたしたちがトランス状態になってノリノリになった時でなきゃ見えない。当然実体ないから、触ることもできないけど。ね、みなみ、あたしと握手してみて」
「うん……」
みなみは、手の汗を拭って安祐美と握手した。
「あ、ちゃんと握手できる! 手も温かいよ!」
「うそ!?」
みんながかわるがわる安祐美と握手、由紀とポナは、握手して、思わずハグしてしまった。
「これって……」
「そう、ここにいるみんなとさっきの幽霊さんたちのお蔭。もちろん、きっかけになってくれたのはポチだけどね」
「そうなんだ……」
「でも、放っておくと学校でも街中でも付いてくるから、普段はペンダントの中に入れておいた方がいい」
「どうやって?」
「ペンダント見せて、ハウスって言えばいいよ」
「えと……ハウス!」
瞬間でポチの姿が消えたが、手にしたペンダントにはポチが中に入った手応えがあった。
勢いでアキバに出てみた。安祐美が今(現代)の曲を肌で感じてみたいといったからである。
AKBシアターの前に来た。
「ここは無理だよ。チケ高いし、もう満席だろうし」
「なんとかなるよ」
安祐美は、さっさとチケの窓口へ行った、
「全員分とれたよ!」
「いったい、どうしたの?」
「キャンセル分五人前、チケ代は、あたしのおごりってことで」
「おごり?」
「くわしくは聞くな(#´∪`#)」
ポナたちは、最前列でリアルAKBを観ることができた。その日、シアターの売り上げは、五人分合わなかったそうな……。
ポナの周辺の人たち
父 寺沢達孝(59歳) 定年間近の高校教師
母 寺沢豊子(49歳) 父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男 寺沢達幸(30歳) 海上自衛隊 一等海尉
次男 寺沢孝史(28歳) 元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女 寺沢優奈(26歳) 横浜中央署の女性警官
次女 寺沢優里(19歳) 城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女 寺沢新子(15歳) 世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ 寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。
高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜 ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀 ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生 美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。




