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ポナの季節  作者: 大橋むつお
40/92

40『オレの妹なんだから』 


ポナの季節・40

『オレの妹なんだから』        

  


ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとって新子が自分で付けたあだ名





 アメリカの大統領が声明を出した。


『今回の尖閣沖で起こった事件は、中国の危険な火遊びで、全責任は中国にある。これに機敏に対応した日本の海上自衛隊『ひとなみ』の艦長と砲雷長の決断と行動は軍人として当然であり、また卓越していた。アメリカは日本の二人の海軍将校を称賛する』


 これにEU諸国、ASEAN諸国、果てはロシアまでが同意し、国際的に大ニイは英雄になってしまった。


 日本では軍事的英雄行為は野犬に立ち向かった子犬ほどにも興味も感心も持たれない。しかし外圧に弱い政府は、大慌てで艦長と大ニイの謹慎を解除した。マスコミも市民団体も蒸発したようにいなくなってしまった。



「明日から艦にもどるよ」

 大ニイも、風邪で学校を休んだ生徒が日常に戻るような気楽さで言った。

「大ニイ、悔しくないの?」

「特にはな、こんなことは防大にいたころから教えられてたからな。それよりポナ…………」


 大ニイが正面からポナの顔を覗き込んだ。


「な、なによ」


「おまえ、可愛くなったな」

 

「や、やっと気づいた。あたしは昔から可愛い子なのっ(^_^;)」

「そうだよな、オレの妹なんだから」


「ふぇ?」


 ポナは、この一言にジーンときた。


 まだ心のどこかで血がつながっていないことの引け目があった。可愛いと言われたことよりも、当然のように「妹だから」と言われたことが嬉しかった。


「ハハ、赤くなることはないだろ。自分でも可愛いって言ってるんだから」

「もう、妹イジルんじゃないって!」

「女の子が可愛くなるのには二通りある。恋をしているときと、自分に自信を持った時だ。ポナのは……恋してるわけではさそうだ」

「なんで、そんなこと分かんのよ。あたしだって恋の一つや二つ」

「無理すんな。自衛隊で長いこと飯食ってると、分かるんだ人の顔が変わるのが。新入隊員が基礎訓練を終えると、そういう顔になる」


 ポナは、少し迷って幽霊の安祐美の話をした。大ニイは笑うと思ったが、意外に真剣に聞いてくれた。


「そういうことはある。積極的には言わないけど、自衛隊にもそういう話はいろいろある。出港の時旧海軍の人たちが見送ってくれていることもあるし、嵐の中で、当直が励ますように並走してる旧海軍の艦船を見たりとかな……」

「励ましに……」

「うん。思いを残して逝った人たちばかりだからな……夢の中で特訓とか言ってたけど……」


 安祐美は、夢の中で特訓すると言っていたけど、ポナにも、他のメンバーにも記憶はなかった。ただ、指のタコと、喉に違和感があるきりだった。ただ、タコがこないだとは少し違っていた。大ニイはギターじゃなくてドラムのタコだと言っていた。




「生活文化局から、こんなの来てた」



 奈菜がA4の封筒を見せた。

「え、これ、ヘブンリーアーティストのオーディションの案内じゃん!」

「あたし自覚ないんだけど」

 不思議を語る由紀と奈菜の声も少し変わっていた。

「あ、みなみからメール……」

「あ、乃木坂の?」

「えー、貸しスタジオが借りられたって……で、みなみにも自覚なしだ」

「これって、安祐美かな……」


 いつの間にか安祐美に「ちゃん付け」をしなくなったことに気づくと同時に、放課後の中庭で安祐美の気配を感じている三人だった。




ポナの周辺の人たち


父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師

母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん

長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉

次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。

長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官

次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ

三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )

ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。


高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)

支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子

橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長

浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊


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