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ポナの季節  作者: 大橋むつお
41/92

41『幕が上がる……か①』 


ポナの季節・41

『幕が上がる……か①』  


ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとって新子が自分で付けたあだ名




 今日、美術の先生が替わった。今までの畑中先生は腰を痛めて、なんと辞めてしまう。


 もともと来春には定年の先生だったし、お医者さんから半年の休職を言い渡されたので、これを切りに辞めることにしたのだそうだ。



「申し訳ない。せっかくこれからというときに辞めることになって。無理をすると寝たきりになる恐れもあると医者に言われてね、わたしも、まだまだ生きて絵を描きたいんで、これを潮に辞めることにした」

「どうして、腰を痛めたんですか?」

 由紀が遠慮なく聞いた。

「よくぞ聞いた。好奇心だよ」

「好奇心で腰を痛めるんですか?」

「ああ、8Kの3Dのテレビを買ってな、3Dの映像を見とったと思え。きれいな女の子がパレオ付の水着であらわれた」

「パレオってなんですか?」

「水着の腰のところに腰巻みたいに巻いとるじゃろ」

「ああ」みんなから声が上がった。

「それが風に揺らめいてな、脚がとてもきれいな子で、風が吹いてパレオがたなびいた時につい身を乗り出してみた。3Dなんで身をよじれば見えるような気がしてな……で、やっちまった」

 由紀のように遠慮なく笑う子もいたが、退職に繋がるような怪我なので、どう反応していいか分からない子に分かれた。

「それって、芸術家の性なんですよね。美しいものには、つい目が行ってしまう」

「ハハハ、ただのオッサンの助兵衛根性さ!」

 美術教室が笑いに満ちた。気づくと自分たちの後ろでも笑い声がしたので、驚いてポナたちが振り返った。


 そこには、ぐちゃぐちゃのおもちゃ箱から引っ張り出してきたばかりのボサボサ頭のリカちゃん人形みたいなオネーサンが居た。


「ああ、その馬鹿笑いしとるのが、わたしの後釜の吉岡あかね先生じゃ。ちょうどええ、前に来て自己紹介しなさい」

「はいはい」

 調子よく返事して吉岡先生がみんなをかき分けるようにしてピョンピョンと前に出てきた。



「えー、あたしが……」



 と吉岡先生が言いかけたとき、横から助兵衛根性の先生が声を掛けた。

「君が喋ると長いから、わたしを廊下まで出してくれんかね、カミさんが、ずっと待っとるみたいでな」

 吉岡先生が車いすを押し、誰言うともなく、みんなもエレベーターまで付いていった。

 先生に似合わない上品そうな奥さんが恐縮して待っていた。


「じゃ、畑中先生。またご挨拶に行きます!」


 吉岡先生が女生徒みたいに挨拶。グッドラックとサムズアップして畑中先生はエレベーターのドアを閉めた。

 みんなは、すぐに美術室には戻らずに、階数表示が一階を示すまで見送った。

「さあ、じゃ、あたしの長い話をできるだけ短くするから部屋に戻るよ!」

 みんなは、その場の空気で走って美術室に戻った。

 退職。それも怪我が元になった中途退職を、畑中先生も吉岡先生も、明るくカラリと済ませてしまった。二人とも大した人だとポナは思った。


「えーと、あたしはね……」



 吉岡先生は、おもちゃ箱みたいな頭の中を整理するように前髪をかきあげた。形のいいオデコが露わになる。ちょっとした驚き。


 こういうのをアールデコっていうのかな……。


 畑中先生にならった美術用語が冗談みたいに浮かぶポナだった。



ポナの周辺の人たち


父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師

母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん

長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉

次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。

長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官

次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ

三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )

ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。


高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)

支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子

橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長

浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊


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