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ポナの季節  作者: 大橋むつお
35/92

35『Person Of No Account ④』     


ポナの季節・35

『Person Of No Account ④』     



ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとって新子が自分で付けたあだ名



「あたしもポナなんだよ」


 たまたまニックネームが同じだったように、浜崎安祐美は気楽に言った。ポナは少し反発を感じる。



 こないだまでのポナなら気楽に聞き流せたが、寺沢家の実の子ではないと分かった時のショックが癒えずに心の疼きとして残っている。たとえ幽霊だってお気楽に言われてはムナクソが悪い。



「気に障ったようね。でも、あなたにも、あたしのPerson Of No Account は分からないわ」

「分かりたくもないわよ。さっさと、あたしの靴返してよ!」

 安祐美に幽霊らしさがないもんで、ついツッケンドンな物言いになってしまう。

「もう返してるわよ。あたしが意地悪したような目で見ないでよ」

 足許を見ると、両足のローファーが揃っていた。でも感覚的には、片足が裸足のままだ。

「え、どうして……?」

「あなたが、ちゃんとあたしに向き合ってくれていないから、靴の実感が戻ってこないの。一度幽霊が手にしたら共感してくれない限り靴の実感は、戻ってこないわ。靴は、ちゃんと履いているのよ」

「いいわ。ありがと。実感なくても、ちゃんと靴が履けてるんだから……って、なにこれぇ?」


 二三歩歩くと、違和感で歩けなくなった。


「実感が無いというのは、そういうこと。ポナも実の子同様に育てられてきたけど、血の繋がりが無いって分かって……拭いきれていないんでしょ。違和感」

「どうして、そんなこと……?」

「あの子が教えてくれたの」

 安祐美は、かなたの客席の入り口あたりを指さした。


 ……そこにはポチがいた!


「ポ、ポチ!」

「あの子は、ペンダントになっても、まだああやってあなたの傍から離れないの。あの子のお蔭、あなたとお話しできるのも」

「ポチ、こっちおいで! ポチ!」

 ポチは、ポナの傍に行きたがって尻尾を振って足踏みしているが、なにか見えないバリアーがあるように、そこからは近寄れなかった。


「ポチ!」


 客席に降りると、ポチの姿は消えてしまった。


「あたしを受け入れてくれたら、ポチは実体としてポナの傍に現れるわ」

「意地悪しないで!」

「意地悪じゃない。これはポナが作っている距離だから」

「あたしが……」


 ポナは、数歩無意識に安祐美に近づいた。


「あたし、三十六年前の三月三十一日に死んだの……もう一日遅ければ、世田女の学籍簿に載せてもらえたのにね。校長先生は入学式で、あたしの入学を宣言してくれたけど、あくまで名誉上のこと。学籍簿にも乗らない員数外。つまり、ポナ以上のPerson Of No Account なんだ」

「そうなんだ……」

「あたし、生きて入学出来たら軽音に入るつもりだった。うちは家族そろってJポップ好き。あたしは特にプリプリの大ファン……DIAMONDSだよ、霊柩車が出ていくときの曲。みんな涙ながらに歌ってくれてさ、あたしも棺桶の中で歌ってたよ……灰になるまで歌ってた……」

「そう……」


 気づくとポチが、すぐそばまでやってきていた。


「少し分かってくれたんだ。一つお願いしたいことがあるんだけど……」


 視線を戻すと安祐美は恋人だったらキスするような近さになっていた。


「!!……ち、近い(;'∀')」


 




ポナと周辺の人たち


父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師

母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん

長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉

次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。

長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官

次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ

三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )

ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。


高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)

支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子

橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長

浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊


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