表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/14

第5戦 テニスのレンジャー様(後編)



「タイム!!タイム!!」



七花はそう言うと紫苑に駆け寄り、テニスのルールを簡単に説明した。



「私が知ってるテニヌとは随分違うようね……」


「テニスだからね!?」



タイムを終え、七花はベンチへ戻る。



「じゃあ今度は私の番よ!カメ○メ波!」



紫苑がサーブを放つ。


ものすごい速さで打ち込まれたボールは相手コートで大きく跳ね上がり、そのまま佐々部の顔面へ襲いかかった。


「ツイストサーブ!?」


子分が驚きの声を上げる。

避けきれず、佐々部の顔にボールが直撃した。



“佐々部15 - 紫苑15”



「やるじゃない」


そう言いながらも佐々部は鼻血を拭う。


「あんた弱いね」


紫苑にそう挑発され、佐々部の表情が真剣なものへ変わった。



「勝者は私よ」



佐々部がサーブを放つ。


それは着地してもほとんど跳ねず、凄まじい勢いで地面を滑った。


「タン○イザーサーブきたーーー!!!」


子分がテンション高く叫ぶ。

しかし紫苑はラケットを地面に擦らせながら平然と打ち返した。


高く浮いたボールに佐々部が跳び上がる。

空中で体を縮め、そのまま全力で叩き込んだ。



“佐々部30 - 紫苑15”



「にゃろう……」


紫苑は悔しそうに唇を尖らせる。



「きゃーーー!! 佐々部様ーーー!!」


いつの間にか大勢のギャラリーが集まっていた。


「佐々部! 佐々部! 佐々部! 佐々部!」

「勝つのは佐々部! 勝つのは佐々部!」



ファサッ。



佐々部が上着を脱ぎ捨てる。


その瞬間、辺りが静まり返った。



「私よ」



たった一言。

それだけで再び黄色い歓声が沸き起こる。


(なにこれ……)


七花は困惑していた。


一方その頃、紫苑はなぜかラケットを空へ掲げていた。


「おらに元気をわけてくれ」


「さっきから違う作品混ざってない!?」


七花は思わずツッコむ。

だが、一応手は掲げておいた。


そして紫苑がサーブを放つ。


しかしそれはただの打球ではなかった。

ボールと一緒に、なにか別のエネルギーまで放たれている。



ボンッ!!!


衝撃波で佐々部が尻もちをつく。


着地したボールは破裂し、地面を大きく抉っていた。



“佐々部30 - 紫苑30”



「…卑怯者!!!!」


子分が叫ぶと、周囲も一斉にブーイングを始めた。


パチンッ。


立ち上がった佐々部が指を鳴らす。



「その程度?」



その一言で大歓声が巻き起こる。


しかし七花は気づいていた。

佐々部の脚が、小刻みに震えていることに。


佐々部は深呼吸をすると、再びタン○イザーサーブを打ち込む。

紫苑が綺麗に返球し、激しいラリーが始まった。


途中、紫苑が二人になったり、佐々部が巨大化したりしていたが、七花はもう気にしないことにした。



「そろそろね」



佐々部が呟いた瞬間、紫苑の視界が闇に包まれる。紫苑は音だけを頼りに正確に打ち返した。


しばらくすると。


その音すら消えた。


握っていたラケットが、ぽとりと手から落ちる。



“佐々部40 - 紫苑30”



歓声が沸き起こる。


だが紫苑にはもう何も聞こえていなかった。

手足の感覚も消え、その場に崩れ落ちる。



「テニスってこんなに辛いものだったかしら……」



紫苑が呟く。

なお、本日始めたばかりである。


その時だった。


紫苑の脳裏に記憶が駆け巡る。

厳しい修行の日々。

忘れかけていた感情。

さくらんぼの種を100m飛ばせた時の、あの快感。



楽しい!!!!!



紫苑から眩い光が放たれ、勢いよく立ち上がる。その瞬間、空気が変わった。



「テニスって楽しいじゃん?」



放たれたサーブは、速すぎて誰にも見えなかった。

トンッ、と音だけが響く。



静寂。



“佐々部40 - 紫苑40”



「なに……今の……」


佐々部が動揺する。


今度は佐々部がサーブを打つが、紫苑はキラキラした笑顔のまま見えない速度で返球する。



“佐々部40 - 紫苑A”



佐々部がその場に立ち尽くす。


「こんなの……」


悔しげに呟く。



静まり返っていた中、子分が叫んだ。


「佐々部がんばれーーー!!!!」


その声をきっかけに観客たちも次々と声を張り上げる。


「佐々部! 佐々部! 佐々部! 佐々部!」

「勝つのは佐々部! 勝つのは佐々部!」


それを聞いた佐々部は、ハッと目を見開き、ふっと微笑んだ。



「私について来な」



大歓声が巻き起こる。


紫苑が超高速のサーブを放つ。

佐々部はそれを見極め、ラケットを振り抜いた。



「うぉおおおおおおおおお!!!」



凄まじい衝撃。

両手で押さえ込みながら、なんとか打ち返す。


紫苑も即座に返球するが、その打球はネット脇のワイヤーに当たり、ボールが真っ二つに裂けた。



「……佐々部」


「勝たんか!!!佐々部ぇ!!!」


子分が叫ぶ。


「王者に…死角はない!!!!」


佐々部はそう言うと、二つに分かれたボールをそれぞれ打ち返した。


紫苑が高く跳び上がる。


宙に浮いた二つのボール。

その一点を全力で叩き込んだ。



ドンッ!!!



“ゲームアンドマッチ!勝者、戦時紫苑!!”



七花がベンチから駆け寄る。



「やった!!!! やったね!!!! 紫苑ちゃん!!!!」



「おめでとう。戦時紫苑」


佐々部が歩み寄り、静かに手を差し出す。

紫苑もその手を握り返す。



「紫苑、機会があればまた対戦しましょう。そうね、今度は楽しむテニスで」


「えぇ」



歓声が沸き起こる。


そこには互いを認め合った者同士の清々しい空気が流れていた。


次の瞬間。



「じゃあ、ちょっとそこに座ってくれるかしら」



どこからともなくバリカンを取り出す紫苑。



「いま良い空気だったよね!?」



七花のツッコミなど気に留めず、容赦なく佐々部の頭を剃っていく。当の本人は潔く俯いていた。




「……紫苑ちゃん、助けてくれてありがとう」



ピコン♪と紫苑のベルトが鳴る。



「ふっ…正義は必ず勝つのよ」



気分良さげにドナドナの口笛を吹きながら、バリカンで髪の毛を剃る紫苑。その光景はどうみても悪役にみえるのであった。




「へぇ、やるじゃん」


遠くから紫苑を見つめ微笑む謎の影。



その後。


紫苑の悪評は"やばい子"からクラスメイトの髪をモヒカンにした“やべー奴”にグレードアップした。


そして、ごく一部。

ひそかに紫苑のファンクラブが立ち上がっていた。


もっとも本人は何も気づいていない。




『そう、これは戦隊村出身の超絶エリート少女が、天才テニスプレイヤー…否、天才的赤レンジャーに成長するまでの物語である』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ