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第72話~ナシュマ編~

 妖祁(ようき)の件で、東雲(しののめ)や青年のような造られたヒトがいるということは理解している。しかし見知ったカズキの姿が、何体も目の前にあるとなると話は別だ。


 その目的は?


「これが気になるの? オレの師が造ったんだよー。召喚士っていう人間の複製。記憶見たけど、クラウドって人間が大好きで随分一途な子だね。他はどうでもよさそうだけど」


「み?」


「あ、不思議そうな顔。うん、オレは他人の記憶が見られるんだ。まぁ脳とか心臓とかに潜るから、負担かかって相手は大概廃人になっちゃうけどねー」


 そんなことを笑顔でさらりと言う辺りが恐ろしい。ナシュマは一息つき、部屋を飛んでみる。カズキと同じ姿が七体。その中に、液体すらない不自然な空のガラス管が一本あった。


「ああ、それ? 中身はもういないよ。記憶と魔力の定着が上手くいったから、人間の世界に送り込んだんだ。ある人間を殺すためにね。こんな回りくどいことしなくても、周りの人間ごと殺っちゃえばいいのにねー。命数減るから余計な人間に手を出すなってウルサイんだよー」


 間違いなく狙いはクラウドら仲間の誰かであろう。今までは鴎伐おうき妖祁(ようき)など、人間にそれなりの好意を持ってる者が多かったが、魔界にいる以上、(そう)のように人間を生物として認識していない魔族が殆どだと思った方が良さそうだ。同時に妖祁(ようき)側とはまた違った視線で魔族の考えを知ることができる。


「さーてと、オレは少し出かけてくるから、君はここでお留守番しててねー」


「みっ!?」


 抵抗する間もなく無造作に体を掴まれ、隣の部屋にあった大きな鳥籠のようなものに入れられてしまった。


「じゃあお友達と仲良くねー」


 (そう)が姿を消し、ナシュマは溜め息を吐いた。これからが正念場だと思った途端この仕打ちだ。良運というものと、とことん相性が悪いらしい。


「み」


 闇夜の滝のように、天井に開いた穴から月の光一筋が流れ落ちて、籠を照らしている。その籠の角には一匹の小動物。自分と同じ姿をしているところを見ると同じ種類なのだろう。毛色は真っ白だが。


 ずいぶん怯えた様子で身を縮めている。(そう)が出て行った扉を見つめていることを考えれば、怯えている原因は(そう)にあろう。


 赤い双眸がナシュマを捉えた。今度は威嚇をするように低く唸って睨つけてくる。(そう)の実験材料にされているのだろう、他に対して猜疑心を抱いてもおかしくはない。ナシュマは近づき、翼で頭を撫でる。言葉は通じぬが慰めにはなるはずだ。


 怖くない存在だと主張して、ようやく相手も納得したのか身を寄せてくる。


「み♪」


「みぃっ?」


 片時も離れぬような身の寄せ方は、いささか理解されすぎてしまったか。


「?」


 ふと目についた蔵書の数々。幸い叉胤(ざいん)から魔界の文字の基礎は習っているので読めるかもしれない。ナシュマは早速翼で閂を抜き、扉を開けて書架まで飛んだ。


 適当に書物を引っ張り出して目を通していった。その多くは錬金術に関するものだったが、中には今の王都ができる遥か昔の歴史書もあった。人間の世界よりも長い長い歴史が窺える。


 そして、ある一冊の書物に目が留まる。ナシュマはにやりと笑い一ページ目を開いた。


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