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だめになる前の
「おじさんはね、ポエムなんて書いてるから嫌われるんだよ」
美少女の言葉は重く響いた。
私は、だめかもしれない。
☆
おもえば
私がだめになったのはずいぶんと前のことだった気がする。
当時付き合っていた彼女が、ふみかという名前だった。
字は知らなかった。
その程度の付き合いだった。
ふみかの手からはいつもいいにおいがした。
「なにかつけてるの?」
と私がたずねても、
「なにもつけてないよ」
と彼女は言うのだった。
彼女が病にむしばまれていたことを知るのはずっと後のことで
それは悪いことじゃないよと死の間際に彼女は言った、
「ああそれで、よかったんですね」
彼女が泣いて
私も泣いた
☆
ある寒い冬の日に
私は鼻水を垂らして歩いていた
粉雪が降っていた
路面電車がごとごとと通り過ぎ
ああ寒いなあ寒いなあとほんとうに
ほんとうに心の底から思いながら歩いていた
商店街のつぶれたのかやってるのかわからない店の窓に
古い壺が飾ってあるのを見た
むかし祖母の家に行ったときのにおいを思い出した
べつに思い出したくもないにおいだ
私がだめになる前の
しかしだめになることを予感させるにおいだ
私は目をそらして
地面を見つめて歩き去った




