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だめになる前の

「おじさんはね、ポエムなんて書いてるから嫌われるんだよ」

美少女の言葉は重く響いた。

私は、だめかもしれない。



おもえば

私がだめになったのはずいぶんと前のことだった気がする。

当時付き合っていた彼女が、ふみかという名前だった。

字は知らなかった。

その程度の付き合いだった。

ふみかの手からはいつもいいにおいがした。

「なにかつけてるの?」

と私がたずねても、

「なにもつけてないよ」

と彼女は言うのだった。

彼女が病にむしばまれていたことを知るのはずっと後のことで

それは悪いことじゃないよと死の間際に彼女は言った、

「ああそれで、よかったんですね」

彼女が泣いて

私も泣いた



ある寒い冬の日に

私は鼻水を垂らして歩いていた

粉雪が降っていた

路面電車がごとごとと通り過ぎ

ああ寒いなあ寒いなあとほんとうに

ほんとうに心の底から思いながら歩いていた

商店街のつぶれたのかやってるのかわからない店の窓に

古い壺が飾ってあるのを見た

むかし祖母の家に行ったときのにおいを思い出した

べつに思い出したくもないにおいだ

私がだめになる前の

しかしだめになることを予感させるにおいだ

私は目をそらして

地面を見つめて歩き去った

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