医療
最新のテクノロジーをもってしても私の具合はよくならなかった。ベッドにあおむけになり、天井のいもむしみたいな模様がいっぱいあるのを見つめて、あの模様って何ていう名前だったっけと思う。
病室の窓からは曇り空が見えて 廊下へのドアは開けっ放しで 先生の白衣が見えて いろんなものが白いなあと 私は思ったのだった
かりそめの姿である、私は。
そんなことを言われたのだった。祖母に。子供の頃の話だ。
「お前はね、お釈迦様の生まれ変わりなんだ」
真剣な目だった。その頃には祖母はまだ元気だった。だからそれは認知症とかではなく本当にそう思っていたにちがいない。
祖母は信心深い人だった。畑でとれた野菜だの何だのを毎日寺へ持っていった。そして仏様を拝んで帰ってくるのだった。
「駿河湾の天気はいかがですか」
と先生は言った。
静かな病室だ。
窓から見える空は一面の雲。
「晴れているそうですよ。ほらカラスが」
私は三羽のカラスが少し遠くを飛んでいるのを指さした。
「ああ、本当ですね。カラスが」
先生はそう言ってうなずいた。
人の魅力とはなんなのだろう、というのが三日前の私の課題だった。
「どうでもいいよ」
と母は言った。
「すべては幻想にちがいない」
私のベッドの横の椅子に座り、母は背を丸めている。
ただでさえ小さい体がもっと小さく見えた。
母の白髪は増えた。この一年でずいぶんと。
もうすっかりお婆さんに見えた。




