第二話 入学式でやらかしたことで、少年は強気な少女に絡まれる
一人のショートボブの少女が木の陰から顔を覗かせていた。
『あわわわわわわわわ…なんてこった』
少女は怯えた様子で遠くで起きている光景を凝視していた。
彼女の名前はレイラ・ハートヴイッジ。ユルクシア騎士学校の新一年生だ。
そんな彼女が何に怯えているのか。
それは剣を持った少年がユルクシア騎士学校の生徒を血祭りにあげている様子をみているからであった。
少女は剣を持った少年の名を知っている。少し前に会話をしたレゾックという少年だ。
何がどうなってそんなことになっているのか皆目検討もつかないが見つかったら大変なことになるのではないかとレイラは考えていた。
『学校の周りを探索していただけなのになんでこんなことが起きてるの~』
今レイラのいるところは学校の敷地内ではない。がレゾックたちのいるグラウンドは一般公開されており、遮蔽物等もないため自由に出入りができるのだ。
そこに偶然入り戦闘を見てしい恐怖したためレイラは隠れいる。
『でもレゾックくん凄いな…相手、上級生のはずなのに勝っちゃった』
やってることには驚いたが、それはレゾックに強さがあってこそ。レイラは騎士を志す者として感心していた。
『ワタシも頑張らなくちゃ』
レイラは小さく拳を握りしめ気合いをいれると、レゾックたちが立ち去るのを待ちその場から退散していった。
「よ~し、頑張るぞ~!」
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青空の元、数多の制服に身を包んだ新入生が校長の話を聞いていた。
「諸君入学おめでとう。今日という日を迎えられたこと嬉しく思う。これから君たちには様々な苦難や困難が訪れるだろう。是非とも切磋琢磨してくれたまえ。とまぁ聞きたくもない話は早々におわりにして次に移ろう。さて君たちはこの学校に入るために必死で勉強と魔法を磨てきたわけだがこの学校には推薦制度があるということは知っているかい?」
『推薦制度』その言葉を聞いた新入生たちはどよめいていた。
この学校に推薦入学するためには圧倒的な魔法の才を持った者に対し国の重鎮が直々に入学を志願することが条件であり、数十年に一人現れるかどうかといわれている。
「その反応をみるに皆知っているようだね。それじゃあ登場してもらおうか。今年の推薦入学者レゾック・グリーパーくんだ!」
シュフルテ校長が入るよう合図をすると気まずそうな顔をしながらレゾックが歩いてきた。
レゾックを見て生徒たちは「あいつが推薦生か?」「なんかパッとしないねー」「強そうには見えないけど」等口々に言っていた。
「さぁレゾックくん、新入生代表としてこれからの抱負を語ってもらおうか」
「あ~やっぱやるんですか。わかりましたよ」
レゾックは深呼吸をするとざわいついている新入生たちに向かって、学校にいる人たちに向けて語り始めた。
「え~っとですね、俺はある人たちに恩返しをするためにこの学校に来ました。なので、騎士になるためなら誰であろうと蹴落とします。入学したらにはトップになるつもりでいるんで皆さん覚悟しといてください。以上です」
レゾックの言葉に先ほどまで聞こえていた喋り声が消え、静まり返った。
そんな中で一人の生徒が声を荒げた。
「っざけんじゃねぇぞ!推薦入学だからって調子のってんじゃねぇぞボケ!」
その生徒を皮切りに他の新入生たちもレゾックに罵詈雑言をぶつけだした。
それを見たシュフルテ校長は手で顔を抑えながらため息をついた。
「やってくれたなレゾックくん。もう少し他の言葉はなかったのか」
「良いじゃないですか。今ので少しは楽しい学校生活になる気がしましたよ」
「君が良いなら良いのだか。まぁいい早く下がりたまえ。このままでは収拾がつかない」
「わかりました。それでは」
レゾックは舞台裏に下がるときに黒髪のロングヘアーの少女とすれ違った。
まるで凍て刺すような雰囲気を醸し出す少女にレゾックは武者震いをしていた。
その少女が新入生たちの前に現れると先程までの騒々しさが嘘のように静まり返った。
何者なのかはわからないがレゾックはその少女に対してある種の興奮を覚えていた。
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入学式が終わり、新入生は自分たちの配属されたクラスの教室に集まっていた。
その中の『1-1』とこの国の言語で書かれた教室で少女が身ぶり手振りで早速できた友人に自分が見た光景の説明をしていた。
「だからホントなんだってば!レゾックくんがこの学校の生徒を血祭りにあげてたの!」
「も~そんなわけないでしょ。レイラ、アイツの言ってたことムカつくのはわかるけど嘘はいけないよ」
「ホントなんだってば~信じてよ~」
だがその友人に信じてもらえずレイラは半べそ状態だった。
それでもなんとか信じてもらおうと奮闘していると、扉が開きレイラの話していた人物が入ってきた。
すると全員がレゾックの方を向き一瞬静寂が訪れた。
「あれもしかして歓迎されていない?」
頭を掻くレゾックに一人の少女が歩み寄っていった。
「当たり前でしょ、あんなことを言っておいて歓迎しようなんて思う人がいると思う?」
腰まで伸びた蒼い髪に鋭い眼光。その少女は凄い剣幕で詰め寄ると腰に描けてあった剣を抜き、レゾックの眼前に突き出した。
「アタシと勝負しなさい。そしてアナタが負ければ先程の発言を撤回し真面目に学ぶと誓いなさい」
「おいおい、誰だか知らないけど仲良くしようぜ?」
「仲良く?ハッ、出来るわけないでしょ、アナタのような無礼者と」
「どっちのほうが無礼者だか」
レゾックの呟きが聞こえたのか少女は一歩前に進み剣を喉元に当てた。
「勘弁してくれよ」
両手を挙げながら一歩下がり廊下に出るとレゾックは誰かとぶつかった。
「あイタたた。あらこんにちは~、今からホームルームを始めるので席についてるくださいね~。ミツキさんも今は危ないからそれしまっておいてくださいね~」
おっとりとした見た目の女性はレゾックに突っ掛かっていたミツキに笑顔で注意をした。
ミツキは女性の指示に従い剣を納めるとレゾックに鋭い眼光を向けた。
「後で覚えておきなさい」
逃がしはしないと言い残しミツキは自分の席へと戻っていった。
レゾックも自分の席に行き座ろうと隣にいる自分と目を合わさないようにそっぽを向き怯えていた。声をかけようか迷ったが気にせず座ると、全員が着席しているか確かめた女性がゆっくりとした口調で喋り始めた。
「は~い皆さ~ん、元気ですか~?私は元気で~す。あっ、自己紹介がまだでしたね~。私の名前はフィアフィル・ファルルーシェです。フィア先生って呼んでくれると嬉しいな~」
フィア先生の登場は良くも悪くも先程のまでのピリついた雰囲気を和ませていた。
レゾックがこのまま終わって早く帰ろうと考えていると、その考えは一瞬にして打ち砕かれる。
「そういえば~ミツキさんとレゾックさん、さっきは何してたのかな~?」
質問にミツキは立ち上がりレゾックを指差しながら説明を始めた。
「アタシはあの人の舐めた態度を正すために勝負を挑んだんです。入学式でのあの発言アタシは許せません」
説明を聞いたフィア先生は暫く考え込むと、何か思いついたかのように手を叩いた。
「それじゃあ今からグラウンドに行きましょう!私もあの言い方はどうかな~と思ってたんですよ~。でも~レゾックさんはそんなこと本当は思ってないと思うんですよ~。なのでちゃ~んと闘って本当の想いを見せつけてあげてください。そうと決まれば早速グラウンドに~レッツゴ~。ほら~皆も行くんだよ~早く早く~」
最悪だ。レゾックは天井を仰いでいた。
それとは対象にやる気に満ち溢れているミツキは剣を手に取ると何も言わずに先生に続きを教室を出ていった。そして続くかのように他の生徒たちも教室を後にした。
だが一人残っている生徒がいた。それは隣で怯えていた生徒だった。
「何してるんだ?皆行っちまったぞ」
レゾックが声をかけるとその生徒は恐る恐るレゾックの方を向いた。
レゾックはその顔に見覚えがあった。校門の前で出会った少女レイラ・ハートヴィッジだった。
「アンタ朝会った――――――」
「ご免なさいご免なさいご免なさいご免なさいご免なさい」
レイラは何度も謝ると全速力で教室を出ていってしまった。
「何なんだよ一体」
取り残されたレゾックは少し悲しみを覚えながらも重い腰を上げグラウンドへと向かっていった。
******
グラウンドに着くとミツキを中心に1-1の生徒とフィア先生が囲んでいた。
「遅い!早くしなさい」
レゾックはため息をつきながらミツキの正面に立った。
「本当にやらないとダメか?」
「ここまで来て帰る気?怖じ気づいたのかしら?」
「はぁ…わかりやすい挑発に乗るきはないけど、ここまで来ちまったしな」
レゾックが手を前にかざし純白の剣を召喚すると周囲の生徒たちから感嘆の声が上がった。
「アナタがどんな魔法を使おうとアタシは負けない」
ミツキも剣を抜くと戦闘体勢をとった。
緊張感漂う空気の中、マイペースな声が響いた。
「は~いそれじゃあルール説明をしま~す。相手を戦闘不能にするか降参の意を示せば終了で~す。当たり前のことだけど~殺しちゃダメだよ~。それじゃあ~始め~」
「え?」
唐突な始まりに出遅れたレゾックは最初から全開のミツキの攻撃を剣を使い正面で受け止めた。
「っぶねー。アンタ殺すきか!」
「さぁどうかしら」
ミツキは一旦距離を取ると、力強く走り出しレゾックに攻撃を浴びせた。
だが、レゾックはその攻撃を一歩も動かず涼しい顔をして防ぎきった。
「どうした?もう終わりか?」
「そんなわけないでしょ!」
ミツキはレゾックの周りを走り始めた。そして土煙が舞い上がり、ミツキの姿が見えなくなった。
レゾックが警戒して剣を構えると土煙を突き破りミツキが突進してきた。
だがそのままレゾックの横を素通りすると土煙の中に戻り、別の場所から突進をしてきた。
レゾックはそれを剣を使い受け流すとミツキはそのまま土煙の中に戻り、何度も何度も様々な位置から攻撃を仕掛けた。
しかし、その攻撃は全てレゾックに防がれていた。
それでも何度も何度もミツキは突進を繰り返した。
ミツキは初手を防がれた時点でこのまま続けても攻撃を当てることが出来ないとわかっていた。それでも突進をし続けたのには理由があった。
レゾックの背後の土煙を突き破りミツキが突進してきた。レゾックは即座に反応し向きを変え剣を構えた。しかし、そこにミツキの姿はなかった。
「なに?!」
ミツキがいたのはレゾックの背後だった。それもたった今土煙の中から現れて。
完全に裏をつかれたレゾックはミツキの攻撃を防ぐことが出来ずくらうと吹っ飛ばされた。
「いってー!まじで斬りやがったな」
レゾックは斬られた部位を押さえながら叫んだが、斬られた場所は出血しておらず制服が裂けているだけだった。
「流石、丈夫なのねアナタ」
「お前今何しやがった」
不可解な現象、種を明かすとは思えないがレゾックは質問した。
だが、返ってきたのは意外な返答だった。
「教えてあげても良いわ。だけど一つだけ質問に答えて。それが条件よ」
「へぇ教えてくれるのか、いいぜ答えてやるよ。何だ?」
「アナタこの学校の生徒と闘い勝ったというのは本当なの?」
「あ~なんでそのこと知ってるんだ?」
「あの子が話してたわよ?」
ミツキが指を指したのはレイラだった。レイラは自分が見られていることに気づくと隣にいる生徒の後ろに隠れた。
「ご免なさいご免なさいご免なさい、たまたま通りかかっただけなんです。だから殺さないでください!」
『は?』
ちょっと待てと、何故自分がレイラを殺さなければならないのか理解できなかった。闘いはしたが一応殺すような真似はしていなかった。
だが戦闘を振り替えって思い当たる場面があることに気づいた。
「違うぞ!あれはあぁするしかなかったんだよ!殺してねぇから生きてるから!」
レゾックが説明するもレイラは謝罪をするだけだった。
「あーもうどうしたもんか…」
「後でちゃんと話せばいいでしょ。それよりも話の続きよ。本当にアナタが倒したの?」
「ん、あぁそうだが?」
「一人で?」
レゾックはコクりと頷いた。
「そう、ありがとう。それじゃあアナタの疑問の答えをあげるわ」
ミツキが剣を掲げ振り下ろすとレゾックの左右の地面が見えない何かに斬り裂かれた。
「アナタアタシのこと付加魔法使いだと思ってたんでしょ。残念、アタシは付加魔法と固有魔法の二つの魔法を使える二種魔法使いなの」
『二種魔法使い』通常魔法は一人につき一つだが、ごく稀に二種類の魔法を使える者がいる。レゾックも存在は知っていたが、その存在は幻とまで言われるほど珍しく戦闘の最中でミツキが二種魔法使いという可能性は考えていなかった。
「へぇ、まさか本当にいるとは思わなかったな。で、どんな固有魔法なんだ?勿論教えてくれるんだろ?」
「えぇ勿論。アタシの固有魔法は風を操る!」
ミツキはその場でレゾック目掛けて剣を突き出した。
すると突風が起こりレゾック目掛けて進んでいきレゾックを覆い隠した。
舞い上がった土煙が晴れるとそこにはまるで刃物でズタズタに切り裂かれたかのような状態のレゾックが立っていた。
「なるほどな、風の刃か。面白い」
「面白がっていられる暇はないわよ」
ミツキが走り出すと先程と同じようにレゾック周りに土煙を巻き込んだ風の渦が発生した。
「同じてが通じると思ってんのか?」
「さっきと同じだと思わないことね」
姿は見えず常に移動しているため声で位置を探ることも難しい。
レゾックは息を吐き意識を研ぎ澄ました。
刹那、全方位から風の砲弾がレゾックを襲った。
レゾックは即座に防御姿勢をとると全身に風の砲弾を受けた。
一つ一つの威力は高くはないためダメージは無いに等しかった。だが注意を引くには十分な攻撃だった。
正に嵐となった状態のなかでもレゾックは落ち着いていた。風の砲弾を耐えながらミツキが現れるのを待っていた。
そしてその時は訪れた。
背後に今までの風とは異なる気配を感じた。
レゾックは身体に打ち付ける風を無視して背後に剣を振った。
だが、そこにミツキはおらず剣が斬ったのは風だった。
『やっぱりいないか』
レゾックが予測していた。本命は一回目ではなく二回目三回目だろうと。
レゾックの予測通り、風の砲弾とは違う気配が背後と左から現れた。
『これで終わりだ』
レゾックはその場で回転するとその二つの気配目掛けて剣を振った。
しかし――――――そこにミツキの姿はなかった。
『何処だ―――――』
気づいた時には眼前に迫っていた。
ミツキは上空にいたのだ。
最後の一撃。それは手加減なしの全力。当たれば無傷ではすまない。
レゾックは無理矢理身体をひねりミツキと対峙した。
それが両者最後の行動。遂に勝敗がついた。
勝ったのは――――――――




