第52話
俺って東雲さんのこと何にも知らないんだな……ってなぜか疎外感にも似たような気持ちになった。久世さんや高瀬さん、宮内さんは昔からの付き合いだったのだろうか。
そんなことを考えているのを悟った久世さんが
「そんなに考え込む必要はないよ」と言ってくれた。
「東雲さんの病気の怖いところは本人が自覚していないのに周りを振り回してしまうことだと思うんだ。そして東雲さんもそのことを自覚してる。だから井上くんがそんなふうに思い詰めてはいけない。それが一番、東雲さんが悲しむことだからね」
「俺、どうすればいいんですかね」
本音がすごい勢いでぼそっと出てきた。東雲さんと日中ずっといるのに、東雲さんのことを気にしてはいけない、心配してはいけないと言われてるみたいで。
「分かろうとしなくていいんだよ」
これまた久世さんが予想だにしないことを言ってきた。
「だってその病気になったことがないんだし」
「……いや、そうですけど」
俺の戸惑いを察した久世さんは慌てて否定した。
「言い方が悪かったね」
「理解はできない。理解してほしいって期待することも東雲さんとしてはつらい。だから病気のことを知って、『寄り添う』っていうのはどうかな?」
どういうことだ?
「井上くんはもう東雲さんのいろんな面を見ているだろう?元気なときも、つらそうにしているときも、病気がそうさせているのかもしれないけど、普通の人以上にいろんな東雲さんがいる。全部が東雲さんなんだって思うことを寄り添うって意味で言ってみたんだけど……どうかな?」




