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第53話

なるほど。


「でもつらそうにしているときに放っておけないです」


こればっかりは久世さん、どうしようもないんです。とは言わないけど、分かってくれてたらいいな。

「そうだね、井上くんは優しいから」

「そんなことないです」


「じゃあ、そういうときは『話してみる』のはどうかな?東雲さん本人に聞くのもいいし、僕に聞いたっていい」

そう言った瞬間、久世さんが”あ!”と思いついた顔をした。


「だったら”森下さん”に会ってみるかい?」

誰だそれ。

「僕のように、東雲さんを支援している人なんだけど」


それを聞いて、ちょっと抵抗があった。

だって前に言っていた『東雲さんの対応』をしている人なんでしょ?

なんか……そうじゃないんだよな。


「すみません、ちょっと考えさせてもらってもいいですか?」

「分かったよ」

一体どういう人なのか聞きそびれてしまったけど、まぁ、いっか。


「また話が戻ってしまうんですが、東雲さんの『仕事部屋』に俺って入れないんです。それはなんででしょうか?」

「きっと、東雲さんにとって『安全な場所』なんだろうね」

「一定の距離を保ちたい人っているじゃない?そういう感じだよ」

なんで久世さんは入れてるんだよ、というツッコミは置いておいた。


「だったら何で家政夫を薦めてくれたんですか?距離が近くなってしまうのに」

「あぁ、それは東雲さんが『時間外に教えなきゃ』って必要以上に使命感を感じてしまう人だから、それだったら『いつでも教えられる』環境の方が幾分かマシだろうって思ったんだ」


なるほど。

久世さんはそこまで考えてくれていたのか。


「なんで”俺”なんですか?」

つい聞いてしまったけど、久世さんはニコッと笑った。

「井上くんは本当に優しいと思うし、東雲さんもそれは分かってると思う。東雲さんは病気のこともあって周囲の人まで意識を張り巡らせてしまうんだけど、危険じゃない、信用できるって思ったんじゃないかな」


さすがに照れてしまい、首の後ろをボリボリ掻いた。

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