第51話
「東雲さんがね、『きっと私のことで悩むことが出てくるだろうから、そのときは相談に乗ってほしい』『私が話したことも話していい』って言っていたんだ」
なんだそれ。
「えっと、どういうことですか?」
「東雲さんが病気持ちだって話をしただろう?それで周りを困らせていないか必要以上に気にしすぎるところもあるんだ」
「そんな……」
東雲さんの病気のことは忘れた頃に、そういう現実を突きつけてくる。
だって楽しかったんだよ。少なくても俺は。
「……くん?井上くん?」
「あ……はい……」
「どうしたんだい?」
きっと久世さんは東雲さんの本音を含めた全部を知っている。だったら俺も自分が思っていることは全部話したいと思った。
「なんで東雲さんは”そう”なんですか?」
自分の語彙力の低さを恨んだ。それなのに久世さんは質問の意図や意味が分かったようだ。
「病気を発症してから今までの積み重ねが、今の東雲さんを作ってしまったんだよ」
すごくつらい。今までどんな経験をしてきたんだろう。
「教えるのがすごくうまくて驚いたんです。東雲さんのパソコンスキルはもちろんですけど、世話焼きなとことか、こんな上司がいたら仕事楽しそうだなって思いました。家事だけは全然ですけど」
久世さんの表情が少し悲しそうに見える。
「そうだね、仕事の能力”は”本当に高いんだよ」
「家事だって、昔は出来ていたんだよ」
空気がすごくツラくなってきて、思わず話題を変えてしまった。
「あ、そういえば久世さんは東雲さんとはどのくらいの付き合いなんですか?」
「東雲さんが前の仕事を辞める前くらいからかな」
東雲さんの前職の話なんて聞いたことがない。




