第45話
「もうこんな時間だね」
東雲さんがぼそっと言って、はじめて時間が17時を過ぎていることに気付いた。
「とりあえず、今は家事の仕事優先で、他は少しずつ勉強していこっか」
なんだか東雲さんがちゃんとしてる。
「もちろん家事の仕事は今まで通り、頑張ります。東雲さんの迷惑でなければ、その後1時間とか……時間外で勉強させてもらえませんか?」
純粋にそう思った。
まだ知らない知識、同級生が社会で得ているであろうデスクワークの知識を東雲さんが教えてくれるかもしれないのだ。時間外でもいいから教えてもらいたい。
その姿勢が食い気味だったのか、東雲さんはクスッと笑った。
「いいよー」
心がホワホワしてる。
その後の東雲さんの提案には俺も驚いたが、やっぱり少し嬉しかった。
「連絡先、交換しとこっか。ま、私からの返信は期待しないでねー」
そりゃ、LINE苦手って言ってたしな。
「大丈夫ですよ、既読さえつけてもらえたら」
「勉強、頑張ろうね」
「一人前にしてあげよう」
東雲さんは終始、ニコニコしてる。
例えば会社に勤めてたとして、先輩が指導つけてくれるってこんな気分なのかな。
* * *
「ただいまー」
「おかえり、あら今日は嬉しそう」
母さんには何でもお見通し……いや、俺が分かりやすいのかも。
「東雲さんにね、デスクワークの基礎を教えてもらうことになったんだ」
「お客さんの”しののめさん”ね」
母さんがニコッとしてくれた。東雲さんの話をしたのは落ち込んでたとき以来かな。
「東雲さんは仕事はすごくできる人でさ」
もはや小学生レベルの報告だ。その後も母さんはずっと俺の話を嬉しそうに聞いてくれた。
ハンバーグの作り方を聞きそびれてしまった。




