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第44話

分かっているのは、俺の社会人スキルは使いものにならないということだ。

パソコンは大学ではほとんど使ってないし、メールとか電話もマナーなんて覚えてない。

就活はスマホやタブレットで十分だったしな。


「じゃあ……」

東雲さんが何か指示しようとしてる。

これはこれで緊張するな、何を言われるんだろう。


「書類や領収書の仕分け、お願いしてもいい?」

「へ?」

何か拍子抜けだった。


「これと、これと、これと、えっとこれも」

いやいや、どんどん増えてくなぁ。

「あれと、これと、それも」

拍子抜け撤回、これはこれで大変そうな量だった。


「最終確認ですが、本当に俺が思うような整理整頓でいいんですね?指示なしでいいんですね?」

一応の念押し。

だって初めての指示が『井上くんが思うように整理整頓してくれたらいいから』と。

「もちろん!井上くんが、ちゃんとしてくれる人だって分かってるから」

人懐っこそうな笑顔で言われてしまい、気恥ずかしくなって目を背けてしまった。


かき集めてきた書類や紙資料をリビングで仕分けしている間、東雲さんは仕事部屋で何かをゴゾゴゾと探しているようだった。

俺が謎に入れない、東雲さんの聖域。

「一緒に探しましょうか」は言えなかった。


「あったーー!」

東雲さんの声が響く。

「どうしたんですか?」

「あ!このノートPCなんだけど今は使ってなくて、だから井上くんに使ってもらおうかと思って探してたんだ」

「俺が使う?」

「そうそう、今後のためにもいろいろと教えてあげるよ」

ニコッと笑顔で言った東雲さんの方がワクワクしているんじゃないだろうか。

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