第37話
けど、ふと思った。
「久世さんが家事を代行することはできなかったんですか?」
「もちろん感じる疑問だね、それは訪問看護ではできないんだ」
なんだそれって思った。
高瀬さんが言うには3ヶ月、家事代行を頼まなかったって。
無理しながら家事をしてたんだろう。
初日の室内の有様を見たらそう思ってしまう。
「何で一人暮らしをしてるんですか?」
「家族には”普通”だと思われたいみたい」
家族は現状を知らない?知られたくない?
そんな関係が、俺は自分の家族を基準に考えてるから想像つかない。
「東雲さんって働きすぎだと思うんです」
「俺が思うに、仕事でしか自分を認めてもらえないって思ってしまってるんじゃないかな」
ツラい、けど俺よりも東雲さんの方がもっとツラい。
「俺にできることって何ですか?」
素直にそう思った。
良くも悪くも平々凡々と暮らしてた俺にとって、その難易度高い人生を送ってる東雲さんにしてあげられることって何かあるのかなって。
それを聞いて久世さんは口角を上げて優しく言ってくれた。
「”普通”に接することなんじゃないかな」
普通、ふつう、フツウ……
”普通”って何だ?
それより俺の頭が疲れてきたかな、理解がいろいろと追いつかない。
「俺にも支援者がどう接するべきか正解は分からないんだよね、でも井上くんには”何も知らなかった”ように接してもらうのが一番嬉しいかもしれないって、俺は思う」
久世さんは気付いてない。
東雲さんがこう考えていそうだって憶測で言わない。
あくまで”俺が思うに”であって、実際は俺が思うようにすればいい、ヒントは与えたよって……
そう言われてる気がした。




