第31話
「表彰式もだったよね?ちょっと疲れたろう?」
少し東雲さんがうつむく。
「でも、ついて来てくれただけの井上くんの方がもっと疲れたよ」
ん?どういうことだ?
「何言ってるの。井上くんはまだ若いんだし、東雲さんが心配することじゃないよ」
「ちょっと頑張りすぎちゃっただろうけど、俺にも出張の話を聞かせて欲しいな」
それから東雲さんがゆっくり話し始めた。
行きの新幹線では人が多くて緊張して、景色を見て新幹線を堪能したかったのにすぐ寝ちゃったこと。
博多はやっぱり人が多くて怖かったこと。
高瀬さんがイケオジで癒されたこと。
やりがいがありそうなお仕事を頼まれたこと。
夜のお酒が美味しすぎたこと。
表彰式は無心で立ってたこと。
帰りは興奮してしまったこと。
……井上くんがついて来てくれて本当に安心したこと。
話し終える頃には東雲さんの顔に光が戻っていて、その様子を見た後、俺は仕事を始めた。
今日は鮭の定食っぽいのを作ってみた。
鮭は嫌いな人は少ないだろう。
味噌汁もレトルトじゃなくって手作りしてみて、ご飯も茶碗によそってみた。
卵焼きもだし巻き卵にしてみたり、習ったばかりのほうれん草のおひたしもセットで。
冷蔵庫に入れておくんじゃなくって、定食セットをシンクの上に置いて、すぐに食べられるようにしておいた。
「東雲さん、次からは火曜と木曜だけじゃなくて、提案通り、水曜日も来るからね」
「時間は井上くんと被っちゃうけど、いいかな?」
東雲さんは大きく頷いた。
この日は久世さんと一緒に、東雲さんの家を出た。




