第28話
「ほら!やっぱり飲みすぎてる」
高瀬さんに呆れられてる。
「だってお酒が美味しかったからー」
いつものように笑った東雲さんだったが、今はただの酔っ払いにしか見えない。
「ホテルを近場で押さえておいてよかったよ」
肩を撫で下ろす高瀬さん。
「身体弱いんだから、あまり無茶しないように」
「え?」
この会話をしている頃には東雲さんは半分、夢の中のようだ。
俺の肩を貸しながら、……千鳥足の人なんて久しぶりに見たな。
「そうなんですか?」
あまりの俺の食いつきぶりに、高瀬さんも焦ったようだ。
「あ、いや、まあ、本人が言っていないなら、俺の口から話すことはできないよ」
「だけど井上くんだったら、無事にうちまで送り届けてくれるって安心したんだ」
「かわいい妹のように思っているんだ、どうかよろしく頼むよ」
男前に頼まれてしまった。
「俺そんな立派なもんじゃないですよ、今回だってお金は高瀬さんが出してくださったんですよね。遅くなりましたが、ありがとうございました」
「いやいや、男は時間をかけて磨かれていくものだと俺は思ってるんだ」
「井上くんも良い男になりなよ」
「明日の表彰式も頼んだよ」
そうだ!表彰式!
「表彰式って何ですか?」
「聞いてないの?」
「趣味で書いてた小説が入賞したんだって」
一つくらいその才能を俺にも分けてほしいなんて思ったけど、俺の心を見透かした高瀬さんにすぐ言われてしまった。
「誰にでも強いところと弱いところはあるんだよ」と。
東雲さんも今に至るまでにいろいろあったんだろうか……
貸した肩の先にいる酔っ払いはそんなふうには見えないが。




