第21話
東雲さんのマンションを出て、駐車場に向かう。
俺は歩きでも来れる距離だけど、久世さんは社用車で来ているようだ。
「今日は無理言って悪かったね」
歩きながら、久世さんは困ったような顔で笑った。
「いえ……俺、何もできませんけど」
「そんなに謙遜しないでよ」
「俺は井上くんは適任だって思ったよ」
そう言ったと同時に立ち止まって、俺の方を見た。
「井上くんは、相手をちゃんと見ることができる人だと思うんだよね」
「……そう、なんですか?」
「あまり硬くならずに観光気分で行っておいで。どうせお金はかからないわけだし」
爽やかイケメンが意地悪な顔で笑った。
* * *
今日はいろいろあって疲れたな。
まさか自分が、東雲さんと旅……出張に行くことになるなんて。
ベッドにうつ伏せにゴロンとなっていたら、ドアをノックした音と同時に兄貴が入ってきた。
ノックの意味とは?
「どうしたんだ?」
陽キャのくせに、言葉短めにクールに声かけてきた。
「んー、仕事で出張の同行をすることになった」
「家事代行の仕事で、か?」
起き上がってベッドに座り、兄貴の方を向き直す。
「そうなんだよ」
「どういうことだ?それ」
ツッコミに答えられずにいると、空気を察した兄貴が
「……ワケありか」
と小さく納得していた。
相談したいけど、東雲さんのことをどう説明すればいいのか、今の俺には分からない。
「何かあれば相談に乗るぞ」
頭を軽くポンと叩かれ、そのまま部屋を出て行った。




