第94話 洗塵《せんじん》
【巻ノ二・残頁玖拾肆:『大魏市井考・長干里』残巻】
「長干里とは、金陵の市井の枢なり。朱雀橋横たわり、秦淮水隔つ。南岸は商賈輻輳し、泥濘雑処す。北に平康の画舫を望めば、夜々に笙歌あり。奢靡と腐敗相い寄り、酔生と夢死並び存す」
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あと数日もすれば立冬を迎える。深秋の夕暮れ時の建康城長干里は、すでに車馬が行き交い、喧騒が渦巻いていた。この市井こそ、大魏で最も光怪陸離たる縮図そのものだ。
濁った緑の水を湛える秦淮河を隔て、水面には時折、誰も見向きもしない浮き草のような土左衛門が流れ過ぎていく。北岸は骨の髄まで金を溶かす平康坊であり、華美な画舫の欄干から淫靡な管弦の音が響き渡る。対する南岸は、三教九流が雑居する商店と民家がひしめいていた。狭い青石板の路面には、腐った野菜屑や発酵した酒粕、車馬の糞尿が混ざり合い、沿道の店先や従僕たちが馬車の後ろで大慌てで掃除に追われている。だが視線を上げれば、川沿いの高楼に穿たれた朱塗りの格子窓が大きく開け放たれ、奥から高雅な白檀の香りと、炙り子羊の濃厚な脂の香りが漂ってくるのだ。川一本を隔てて、朱門の酒肉と市井の泥濘が、このように生々しく隣り合っていた。
一月余りの旅を経て、謝必安は再び建康の土を踏んだ。連日の疾走と殺戮の連続に、最後に湯を浴びたのがいつかすら忘れてしまっていた。青緑色の拾遺の官服は泥水と黒血にまみれ、乾ききり、泥と血がこびりついて鉄板のように硬くなっている。乱れた長髪は擦り切れた黒木の一本簪で無造作に留められているだけだ。彼は懐にずっしりと重い金毛の大猫を抱え、肩には高慢な銀毛の小猫を乗せ、雑踏の中をゆらゆらと彷徨っていた。まるで半月あまり前、この地で怪異の調査に当たっていた放蕩な拾遺の姿に戻ったかのようだ。
懐の中で丸まっていた銜蝉がでっぷりとした肉体を捩じらせ、モフモフの顎を謝必安の腕に押し当てて不満げに唸った。『親父ぃ……俺様もう腹が減りすぎてペシャンコだぞ。先に小魚の干物でも数本買って腹ごしらえさせてくれよ……じゃなきゃ、気に入る宿屋を見つける前に日が暮れちまう』
肩に乗った阿奴は優雅にあくびを噛み殺し、オッドアイの双眸を半分細めて微睡みながら、周囲の凡俗どもが向けてくる驚愕の視線など意にも介さず澄ましていた。
謝必安が宿定めをしようと周囲を見回していた時、雑踏がにわかに押し寄せてきた。顔を覆う帷帽を被り、幽かな香りを纏う柔らかな絹の衣を着た一人の女とすれ違った瞬間、ひんやりとした芳香が鼻腔をくすぐった。それは極めて独特な香りだった。西域の曼陀羅のような人を惑わす妖艶さを含みつつ、烈酒と年代物の生薬が醸し出す重厚な熱気が混ざり合っている。
謝必安は足を止め、ハッと振り返った。だが、その艶やかな後ろ姿はすでに茫々たる人波の中へと掻き消えていた。
銜蝉が鼻をヒクヒクと激しく動かし、声を上げた。『あん? 親父、この匂い……なんだか忘憂閣のあの狐女の匂いにそっくりじゃねえか?』
謝必安の瞳がかすかに揺れたが、すぐに自嘲気味に笑って猫の頭を軽く叩いた。「お前ってデブは、あの女のことが頭から離れねえんだな。俺としては会わずに済むなら一生顔を合わせたくねえよ。建康の数十万の人口の中で、そうそう鉢合わせるわけがねえだろ。まあいい、お前の言う通りだ、まずは腹を満たすのが先決だな」
路地を二つ抜けた角に、店構えが立派で真紅の大提灯を掲げた「四海居」という宿屋を見つけた。
謝必安が大堂に足を踏み入れると、入口の給仕は彼の乱れた身なりと血生臭い悪臭を見るや眉を吊り上げ、雑巾を振り回して追い払おうとした。謝必安は無駄口を叩かず、袖に手を差し入れると、ずっしりと重い五両の銀塊を一つ取り出し、黒漆の帳場へ「バチンッ」と叩きつけた。
「上部屋を一つ、大きな湯桶付きだ。すぐに熱湯を大桶三杯分用意して部屋へ運べ。それから、この店で一番の看板料理を一式揃えて持ってこい!」
帳場の主と給仕は、そのきめ細やかな文様が刻まれた純度の高い官銀を目にするや、顔に浮かべていた蔑みを一瞬にして揉み手と卑屈な笑顔へと変えた。「へへっ、これは貴客のお越し! 東海一号のお部屋へご案内いたします!」
謝必安は立ち去ろうとする給仕を呼び止めた。「待て。長旅で衣服が汚れているゆえ、洗濯と着替えが必要だ。清潔で肌触りの良い細布の肌着を二組見繕ってくれ。この官服は腕利きの洗濯女に預け、丁寧に洗って皺を伸ばすよう伝えろ。破いたりしたら承知せんぞ」
給仕は腰を低くして手際よく説明した。「旦那様、ご安心を。手前の店の洗濯と皺伸ばしは大市口でも指折りでございます。新調の肌着でしたら、粗麻なら一組三百文、細麻なら五百文、蜀の地から運ばれた雪のように白い細絹でしたら一組八百文でございますが、いかがなさいますか……」
「細絹で頼む、銀子は弾む」謝必安は手を振った。今の彼は懐に金銀を蓄えており、司天監雑項科に入ったばかりの頃の、相部屋の雑魚寝すら泊まれなかった貧乏小僧とはわけが違う。「ついでに角の櫛、澡豆、石鹸も最高の物を取り揃えて部屋へ運べ。後でまとめて勘定する」
給仕はいそいそと謝必安を三階へと案内し、最奥にある広々とした豪奢な彫刻付きの客室へと通した。扉を閉める間際、給仕は下卑た笑みを浮かべてすり寄り、声を潜めて言った。「旦那様、長旅でお疲れのご様子。よろしければ、手前どもの馴染みの清らかな芸妓を呼び、足を揉ませて凝りをほぐさせましょうか? 前方の忘憂閣から引き抜いた極上の生娘ばかりで、身体の柔らかさなどまるで水のようでして……」
謝必安は口角を引き攣らせ、給仕を部屋の外へと押し出した。「いらんいらん、結構だ! 俺は真っ当な修行者だぞ、忘憂閣の三文字を聞くだけで頭痛がするわ! 今日は湯浴みして寝るだけだ、妖魔めいた女で俺の道心を乱すんじゃない、さっさと湯を沸かしてこい!」
敷居の外へと押し出された給仕は、怪訝そうに謝必安を上から下まで眺め回し、心の中で訝しんだ。若く見目麗しい男が二匹の猫を抱きかかえ、女色を前にして疫病神を見るような顔をするとはどういうことだ? 給仕は勝手に合点がいったように同情のため息をつき、首を振りながら階段を降りていった。「やれやれ……可哀想に、若くして下半身を使い物にならなくしちまったんだな……」
間もなく、屈強な人足四名が巨大な朱塗りの香杉の湯桶を汗だくで運び込んできた。続いて厨房の女中三名が重い銅の大薬缶を抱えて次々と現れ、グラグラと沸き立つ熱湯を桶に注ぎ込むと、瞬く間に部屋中が白い湯気で満たされた。小部屋の丸テーブルには、湯気を立てる皮パリの焼きガチョウ、豚すね肉の煮込み、氷で締めた膾魚、熱燗にした年代物の黄酒二壺が所狭しと並べられた。
下男たちが退室し、閂が下ろされた。
謝必安は身につけていた自立しそうなほど固まった汚れた衣を瞬く間に脱ぎ捨てた。手を伸ばして湯加減を確かめると、あまりの熱さに「アツッ」と声を上げ、長椅子の上の白猫へと顔を向けた。「阿奴、すまねえが湯加減を調整してくれ」
阿奴は前足をわずかに持ち上げ、虚空に向かってチョンと触れた。一筋のかすかな寒霜が音もなく湯の中に沈み、煮えたぎる熱湯をちょうど良い湯加減へと落ち着かせた。謝必安は極楽心地で木桶へと跨ぎ入り、身体の芯まで熱い湯に沈めた瞬間、張り詰めていた筋骨がすべて解きほぐされていくような心地よさに、魂の底から長い吐息を漏らした。
立ち込める湯気の中、熱湯が右腕を包み込んだ時、骨の奥底にかすかな見知らぬ熱が残っていることに気づいた。時折、潜む蛇のように、皮膚の下でピクリと引き攣るような脈動を見せる。謝必安が腕の内側を返して確かめると、皮膚の下に浮かぶ奇怪な金色の文様は以前より薄くなっていたが、その広がりはより複雑で不気味なものへと変貌していた。しばらく睨みつけてみたが、何一つ見当もつかず、首を振って考えるのをやめた。
しばらく湯に浸かった後、彼は顔を拭い、木桶の縁から顔を出して部屋の中の二匹の猫を手招きした。「お前ら、こっちへ来い! 大荒の泥にまみれやがって、身体の臭い猫の匂いで塩漬け卵が作れるレベルだぞ。今日は徹底的に洗い流してやる! デブ、聞こえたか? その焼きガチョウに少しでも口をつけたら、明日の飯は半分だからな!」
この時、銜蝉はすでに丸椅子に飛び乗り、丸テーブルの縁に前足をかけてヨダレを垂らし、大口を開けて丸々と太ったガチョウの腿肉に齧り付こうとしていたところだった。
謝必安の怒声を聞くや否や、銜蝉は全身の贅肉を波打たせて慌てて頭を引っ込め、乾いた笑いを浮かべた。『親父ぃ! 違うって! 滅相もない! 俺様は皆のために、このぼったくり宿が料理に毒を盛ってねえか味見して確認しようとしただけだ……』
謝必安は冷笑を浮かべて彼を見つめた。分が悪いと悟った銜蝉は、重い足取りでトボトボと歩み寄ってきた。湯桶の縁で贅肉をブルンと震わせ、条件を交渉しようと口を開きかけた瞬間、謝必安に項の皮を掴まれ、ドボンと湯の中に放り込まれた!
『ニャオォォーッ! 熱い熱い熱い! 親父、我が子を謀殺する気かァ!』銜蝉は四肢を水中でバタつかせ、派手な水しぶきを上げた。
「これ以上暴れてみろ」謝必安は顔の湯水を拭い、歯を食いしばって低く脅した。「テーブルに一滴でも湯が飛んだら、今夜はお預けだ!」
言葉が落ちるや否や、銜蝉は一瞬で大人しくなった。湯の中で石のように固まり、まるで老僧が座禅を組んだかのように虚空を見つめ、魂をどこかへ飛ばしてしまった。
謝必安は満足げにその太った頭をポンと叩いた。「それでいい」
熟練の洗車工のように手際よく、生薬の香る澡豆を掴み取ると、濡れそぼった金毛を頭から尻尾の先まで一気に揉み洗いし始めた。口元で小言を漏らすことも忘れない。「見ろよ、毛が絡まってダマになってるじゃねえか……」
しばらくして、綺麗に洗い上げられた銜蝉は木桶の縁に前足をかけ、頭の上に斜めに湿った白手ぬぐいを乗せ、ピンク色の舌を出して恍惚の表情を浮かべていた。『ふぅ……阿奴、この湯加減、骨の髄までとろけそうに気持ちいいぞ。お前も入って洗えよ』
謝必安は長椅子の上の白猫へと視線を向けた。「次はお前だ。自分で飛び込むか、俺が引っ張り込むか?」
阿奴は座布団の上に端座し、全身の銀毛を一気に逆立てた。あの臭いデブ猫が浸かったばかりの、すでに金毛が数本浮いている湯桶を激しく嫌悪し、その全身から眩い銀光を放ち、その場で三回連続で無垢浄化の術法を展開した。自らを塵一つなく清め上げ、尖った顎をツンと持ち上げて高慢な拒絶の姿勢を示した。
「そんな小細工が通用すると思うなよ」謝必安は目を剥き、容赦なく言い放った。「術法で消せるのは妖気だけだ、泥や垢は落ちねえ! 自分で来い、さもなきゃ三ヶ月間琉璃妖丹はお預け、毎朝の朝露も全部ナシだ!」
経済制裁という絶対の暴力の前に、気高き女王は深く息を吸い、数秒間その場で膠着した。最後には憤怒を胸に、極めて不本意な足取りで虚空を浮遊しながら、のろのろと湯桶の上まで移動してきた。
謝必安は手を伸ばして彼女を湯の中へと抱き下ろした。湯に入れる際、彼の所作は極めて慎重で、左前足にあるまだ完治していない瘡蓋の傷口を優しく避けていた。茉莉花の冷たい香りが漂う高級な花露の澡豆に持ち替え、柔らかく素早くその身体を洗い清めていく。
「怒るな、すぐ終わるから」謝必安は優しい声で宥めつつ、手を休めなかった。「洗い終わったら、特製の蜂蜜水を飲ませてやるからな、いい子だ」
だが最後のすすぎが終わるや否や、阿奴は感電したかのように水面から跳ね上がり、衝立の頂上へと飛び退いた。身体についた水滴を猛烈な勢いで振り払うと、それらの飛沫は離れた瞬間にキラキラとした氷の粒となって散っていった。さらに自分へ向けて立て続けに五回も浄化の霊光を浴びせ、喉の奥から低く不満げな喉鳴らしを漏らした。この尊厳を奪われた入浴に心底怒り心頭の様子だった。
二匹の毛深き主たちを宥め終えた謝必安は、ふと『驚蟄』のことを思い出し、脱ぎ捨てた衣服の山の中に転がる雷撃木へと視線を向けた。ついでにあいつも洗ってやるべきかと考えていた矢先、衣服の山の中から突如としてパチパチと音を立てて鮮やかな紫色の電弧が弾け飛び、脱ぎたての汚れた着物から黒い煙が立ち上った。
思いがけない激しい抗議に驚かされた謝必安は呆れて白目を剥き、余計な世話を焼くのをやめにした。
邪魔立てもなくなり、彼は深く湯の中に身を沈め、後頭部を木桶の縁に預け、全身の力を完全に抜いて、湯が冷え切るまでこのまま微睡むことにした。部屋中を包み込む温かな湯気と立ち込める霧が、この数日間に積もり積もった疲労と血生臭さを、すべてこの空間の温もりの中に溶かし去っていった。
同じ頃、太廟の大殿において。
虚空を切り裂いて飛来したあの金色の遺詔は、文武百官と宗室の長老たちが跪いて見守る中、太祖を祀る金匱の石室へと厳かに収められた。機関の扉が寸分の狂いもなく閉じ、廟を守る大陣が轟然と起動した。
武陵王・司馬衍は祭壇の前に仁王立ちになり、三軍を戒厳して太廟を厳重に防衛せよとの軍令を厳かに発布した。百官は万歳を叫び、大魏の国運の隆盛を讃え称えた。
大典が終わりを迎えると、袁監正は老いた顔を黒く染め、一族の規律を正すべく急ぎ司天監へと引き揚げていった。姚指揮使は腰の佩刀を握り締め、腹に煮え滾る怒りを抱えたまま鏡妖司へと戻り、王司徒は顔面を蒼白にして親兵に守られながら事態の真相を究明すべく屋敷へと急いだ。
ただ一人、謝太保だけが太廟の白玉の階段の前に佇み、左右を見渡していたが、本来ならば共に立ち会うはずだったあの謝必安の姿はどこにも見当たらなかった。
城門を守る禁衛に問い質して初めて、謝太保は謝必安が城門前ですでに跡形もなく逃げ出していたことを知った。
謝太保は白髭を怒りで震わせ、手にした紫檀の鳩杖を力任せに石畳へ叩きつけた。「あの無法者の畜生めが……馬車を出せ! 屋敷へ戻るぞ! 人をやって奴を探し出し、明日の昼下がりに顔を出せと伝えろ! 来ないというなら、二度と敷居を跨がせぬとな!」
長干里、四海居、東海一号の部屋。
トントントン。
客室の彫刻扉が、軽やかに三度叩かれた。
扉の外から、男の骨の髄までとろけさせるような、甘く艶やかな女の忍び笑いが響いた。
「客室サービスをお届けに上がりました……」
桶に浸かっていた謝必安のまぶたが激しく痙攣した。彼は声を張り上げて返した。「お姉さん、部屋を間違えてるぜ。俺は身持ちの固い品行方正な男だ、そんな出張サービスなんて頼んじゃいねえよ」
扉の外の女は低く笑い、含みのある声で返した。「お部屋の若旦那、お名前は謝とおっしゃるのでは?」
謝必安は表情一つ変えずに嘘を吐いた。「人違いだ。俺は生まれも育ちも潘で通してる潘と申す者だ」
外の気配が一瞬沈黙した後、呆れとからかいの混じった女の声が再び響いた。「若旦那、冗談はおやめくださいな。陳郡謝家の必安公子であること、この私が見間違うはずもございませんでしょう?」
謝必安は首を熱い湯の中へ深く沈め、真顔ででたらめを並べ立てた。「お姉さん、本当に人違いだって。俺の祖籍は長安、名は安、人は潘安と呼び、またの名を潘関西。この部屋にいるのは風呂に入ってるただの肉屋の親父だ。さっさと他所へ行きな、別の客の商売の邪魔になっちまうだろ」
扉の外は数秒間、完全な死の静寂に包まれた。
直後、先ほどまでの妖艶で甘い声音が一瞬にして氷のように冷え切り、歯ぎしりをするような恨めしい舌打ちが漏れ聞こえた。
「この恩知らずの、命知らずの疫病神め……」
聞き覚えのあるその声を聞いた瞬間、謝必安は息を呑み、白目を剥いて心の中で絶叫した。 『終わった……なんて不吉な口だ、本当に引き寄せちまいやがった』
逃げ出そうにももはや手遅れだった。彼は意を決してドボンと音を立てて全身を湯の底へと沈め、溺死した水死体のふりを決め込んだ。
カチャリ。
内側から掛けていたはずの閂が、見えない巧みな勁力によって音もなく跳ね上げられた。続いて、曼陀羅の冷香を纏った真紅の外套が、ゆったりとした足取りで湯気立ち込める部屋の中へと踏み込んできた。
衝立の頂上で銀猫が全身の毛を逆立てて跳躍し、湯桶の脇で金猫が慌てふためいて飛び跳ね、部屋の中は一瞬にして大混乱の修羅場と化した。
†
【司天監内部メモ】
拾遺心得第十八条:常に唱えるべし。計画は変更に追いつかず、変更は上司の一言に追いつかない。したがって「休暇」なるものは、古より大魏の律令の中にのみ存在する幻である。




