第72話 無辺落木蕭蕭下《落ち葉は果てなく降る》
【巻ノ二・残頁柒拾弐:『大荒異聞録・奇陣誌』残巻】
「木は本より心無くとも、土に双足を生ず。生人の陣に入るに遇わば、則ち根を移し位を換え、巡り巡って休まず。死に至るまで方に休まん」
【司天監内部メモ】
もし荒野で道に迷っても、絶対に御者やナビゲーションの目を疑って罵り始めてはいけない。なぜなら時として、お前が道を間違えたのではなく、その道自身に足が生えていて、お前と壮大な椅子取りゲームをしているだけかもしれないからだ。
†
ひとしきりの混戦が終わり、幾つもの媪妖の死骸が放つ血生臭さがひどく鼻を突いた。謝必安と沈無は短く話し合い、この場には長居しないことを決めた。
銜蝉は機敏なもので、運よく二頭の媪妖の死骸の中から小指の爪ほどの内丹を二つ掘り出し、その場ですぐに丸呑みにした。馬車に乗る直前にも、大きな腿肉を力任せに噛みちぎり、口にくわえて持ち込んだ。
謝必安と二匹の猫が車に乗り込んだのを確認すると、沈無は骨の槌を叩き、蜃驪を駆り立てる。行灯に火を灯した馬車は、暗闇の枯れ林の中を無理やり二、三里ほど突き進んだ。あの不快な血の匂いが寒風で完全に吹き飛ばされ、もう異常がないことを確認してから、二人は風を避けられる窪地を見つけて再び馬車を停めた。
篝火が再び焚かれ、難を逃れた羊肉のスープと野ニラの肉炒めがようやく胃の腑に収まった。温かい夕食が腹に入ると、謝必安は右腕で暴れていた妖骨の食欲が、電撃と阿奴の平手打ちを経て、ようやくどうにか宥められたことに気がついた。少なくともこの夕食は、人間らしい味のまま楽しむことができた。
もう一方では、銜蝉がちゃっかりと便乗して腹を満たしていた。今は大の字になって車内のクッションに寝そべり、小さな腹をボールのように丸く膨らませている。口の中では「もうダメだ、ダメだ……俺様は爪一本動かせねえぞ……」などとブツブツ言いながら、言葉とは裏腹に尻尾をパタパタと二回振っていた。
謝必安と沈無は簡単に夜番の順番を決めた。頭上では、ぼんやりとした冷たい月が枯れ枝の間に高く懸かり、霜のように白い光の輪を空一面に振り撒いている。
一夜は無事に過ぎた。ただ、風が枯れ木を通り抜ける嗚咽のような音だけが響いていた。
早朝。薄い霧が灰色の帳のように、音もなく荒野全体を包み込んでいる。
謝必安は車の後部に吊るされた水甕の冷水で適当に顔を洗い、沈無と一緒に硬い乾パンを二口かじった。その後、御者台の前の青銅の香炉を点検すると、昨日燃やした建康城の方位陣が描かれた黄符は、なんとほんの端が焦げているだけで、縁に黒い炭の跡を残したまま、ほとんどそのままの形で残っていた。
「どうやらこのお札、かなり燃費がいいみたいだな。節約して使えば建康まで余裕で持ちそうだ」謝必安は骨の槌を沈無に手渡し、自分は車内へと潜り込んだ。「お前は運転が安定してるからな、任せたぞ」
沈無は槌を受け取り、無言で御者台へと跳び乗った。顔を上げ、眼前に広がる枯れ林をじっくりと見渡す。
荒野の晩秋には、文人の筆から生まれるような清雅さなど微塵もない。霜に打たれた林の葉は鮮やかな朱色ではなく、むしろ長年洗われていない鉄錆のような色をしている。枯れ果てた太い枝が互いに絡み合い、まるで無数の骨ばった枯れ指が、灰色のどんよりとした空を掻きむしっているようだ。
地面には黒く変色した腐葉土が何層にも重なり、朝風が吹き込むたびにザワザワと不気味な摩擦音を立て、同時に泥臭い土の匂いを顔に叩きつけてくる。
林全体が死の静寂に満ちていた。
沈無は視線を戻し、冷たく硬い表情には何の感情も浮かべなかった。彼は同じように火打ち石で黄符に火を点ける。生臭い黒煙がゆらゆらと立ち昇ると、蜃驪の白目がギョロリと裏返り、巨大な鼻孔が煙の行方を貪欲に嗅ぎ取った。沈無が骨の槌を逆鱗に強く打ち下ろすと、くぐもった嘶きが響き、車輪が落ち葉を踏み砕いて再び走り出した。
道中には一切の人影がない。
小道の両側は荒れ果てた草むらで、見渡す限り、判で押したような灰褐色の枯れ木ばかりが続いている。枯れ黄色い枝先にわずかに葉を残している木もあれば、ハラハラと葉を落としている木もある。森全体が死気に沈み、虫の音も鳥のさえずりも聞こえず、まるで果てがないかのようだ。
馬車は険しい路面で激しく揺れながら、進んでは止まりを繰り返す。あっという間に二、三の時辰が過ぎ去った。
この無味乾燥な景色に耐えかねた謝必安は、半刻ほど前に車窓の縁に寄りかかり、退屈しのぎに短剣を抜き、路傍にあった奇妙な形をした毒キノコ付きの枯れ木の幹に、深く十字の印を刻みつけていた。
「ドン」
御者台から突然、短く叩く音が響いた。蜃驪が急ブレーキをかけ、巨大な慣性で車体が大きく揺れる。
「なんで停まったんだ?」謝必安が車簾をめくる。
沈無は百辟喪門刀を握りしめ、周囲を見回していた。その冷酷な顔に、珍しく驚きと疑念の色が浮かんでいる。彼は振り返らず、ただ刀の切っ先で数歩前方の枯れ木を指し示し、低い声で言った。
「この木、つい先ほども見た」
「そんな馬鹿な」謝必安は眉をひそめ、即座に反論する。「引路符の煙はずっと前に向かって流れてたし、この馬鹿も一度も曲がってない。俺たちは真っ直ぐ進んでたはずだぞ」
そう言いながら馬車から飛び降り、沈無の指し示す方向へ歩いていった。
黒い毒キノコが生えた枯れ木に近づいた途端、謝必安の足がピタリと止まった。
樹皮の表面に深さ一寸ほどの、切り口に新しい木屑が残る十字の印が刻まれている。それは、彼の自信をあからさまに嘲笑っているかのようだった。
謝必安は息を呑んだ。これこそ、彼が半刻前に自らの手で刻み込んだあの印だ。
二人は顔を見合わせ、すぐさま視線を、傍らで枯れ草を咀嚼している蜃驪へと向けた。
「老沈……」謝必安は全身が青黒い鱗に覆われた妖獣を指差し、口角を引き攣らせた。「お前、叩く鱗を間違えてないよな? もしお前のミスじゃないとしたら……こいつが俺たちを連れて同じ場所をぐるぐる回ってたってことか?」
沈無は眉間を寄せ、重い声で答える。「俺はずっとど真ん中を叩き続けていた。一分一厘の狂いもない。それに、お前は以前、奴が自分で匂いを嗅いで道を見つけると言っていたではないか?」
謝必安は沈無を見て、それから蜃驪を睨みつけ、しばらく考えがまとまらなかった。
彼は眉をひそめ、心の中で怪訝に思う。「まさか、誰か他の奴が俺と全く同じ印をつけたのか? いや、どう考えても……姐弟子のこの蜃驪が道を間違えるなんてあり得ない」
車簾がめくれ、銜蝉が我が物顔で飛び出し、二三歩で蜃驪の巨大な頭の上へとよじ登った。この太った猫は見下ろすように妖馬の鱗をパンパンと叩き、金色の縦長の瞳に侮蔑を浮かべる。
『親父、まだ言い訳してんのか? 俺様に言わせりゃ、この黒炭野郎はただの方向音痴のバカだ!』
蜃驪はその煽り言葉を理解したのか、白目を激しく上へ裏返した。巨大な鼻孔から荒い鼻息と共に火の粉と黒煙を勢いよく噴き出し、銜蝉はそれにむせて立て続けにくしゃみをし、危うく馬の頭から転げ落ちそうになった。妖馬は極めて傲慢に顔を背け、あとはもう目を閉じて休む構えを見せ、誰の相手もする気をなくした。
謝必安と沈無がこのへそを曲げた妖獣を前にして手をこまねいていた時。
銀白色の残影が車頂へと舞い降りた。阿奴だ。彼女は高い場所からこの果てしない枯れ林を見下ろし、オッドアイの両眼でその全貌を仔細に観察している。
彼女は下で繰り広げられる一人と二匹と一頭の茶番劇など意に介さず、少し背中を丸め、前方の小道の両側にある太い枯れ木に狙いを定めると、小さな口を開いて極めて低い嘶きを発した。
肉眼で見えるほどの強力な氷霜の気が、白い竜のように巻き起こり、一瞬にして二本の枯れ木に絡みついた。ほんの瞬きする間に、ピキピキと細かな結晶化の音が連続して響き渡る。二本の木は根元から枝先に至るまで完全に凍りつき、透き通った冷気を放つ二つの氷の彫刻へと変わった。
この灰褐色の荒れた森の中で、その二本の氷の木は太陽よりも眩しく輝き、絶対に見間違えようのない強烈な目印となった。
阿奴は優雅に前足を舐めると、そのまま車頂に寝そべった。
「阿奴、見事だ」謝必安の目が輝く。「老沈、車を出せ! 俺はどうしても信じられねえ。これだけ目立つ印をつけて、また元の場所に戻ってこれるわけがねえ。ただ前へ突き進め」
沈無が車に飛び乗り、槌を振り下ろす。馬車は再び発進し、二本の氷の木を通り過ぎ、薄暗い林の小道へと突入していった。
しかし、およそ半刻が経過した後。
「ドン」
馬車は再び強制的に停車した。前を見つめる沈無の常に冷静な瞳が、珍しく信じられないというように見開かれている。彼は即座に振り返り、声を張り上げた。「謝必安、早く外へ出ろ!」
ただならぬ気配を感じた謝必安は車簾をめくる。そして、目の前に広がる光景を見て、背中の産毛が総毛立つ思いがした。
前方十歩の距離に、刺すような冷気を放つ二本の巨大な氷の木が、静かに道の両側にそびえ立っているではないか。
彼らは、なんとまたしても同じ場所に戻ってきてしまったのだ。
「マジで狐につままれた気分だぜ……」謝必安は独りごちる。「一体どんな陣法なんだ? 本当に鬼打牆(おばけの迷路)にでもハマっちまったのか?」
これですでに二度目だ。魔が差したかのように原点に戻されてしまった。事ここに至って、ただ道に迷っているだけだなどと無邪気に信じる者はいない。明らかだ。この森が、彼らに死の粘着をしている。
その時、これまで神々しい威容を保っていた蜃驪が突然不安げに後ろ足で砂を蹴り、恐怖と焦燥の入り混じった低い鳴き声を上げた。立て続けの迷宮現象に、この霊性の高い妖馬でさえ、ここから抜け出すことは不可能だと本能で悟ったのだ。周囲から押し寄せる見えない重圧が津波のように迫り、妖馬の巨体をガタガタと震えさせ、その身を覆う青黒い鱗までが恐怖の戦慄によってカチャカチャと乾いた音を立ててぶつかり合っている。
その瞬間、謝必安の懐で肌身離さず持っていた『大荒異聞録』が突然焼けつくように熱を帯びた。
彼は慌てて書物を取り出し、ページを開く。本来空白だった部分で、古い墨の跡が生き物のようにねじれて蠢き、ゆっくりと目を刺すような大きな三文字へと収束していった。
「林有足(林に足有り)」
「林に……足がある?」謝必安はその三文字を見つめ、脳内に無数の疑問符が浮かんだ。
謝必安は眉を寄せ、低い声でブツブツと呟いた。「まさかこの森自体に足が生えてるってのか? いや、おかしいだろ……木が歩き回るわけが……」
不意に、彼の脳裏に閃きが走り、かつての師父の言葉が蘇った。『木は本より心無くとも、土に双足を生ず』
「ああっ! そういうことか!」
彼は勢いよく顔を上げ、もはや木の幹ではなく、馬車の周囲の地面を穴の空くほど見つめた。一面に落ち葉が敷き詰められた黄土のはずだった。だが今、目を凝らして耳を澄ませば、その落ち葉の層の下から、極めて微かな「ゴロゴロ」という音が響いているではないか。地中深くに、まるで大蛇のような巨大な生き物が、ゆっくりと蠢いているかのように。
「わかったぞ!」謝必安が叫んだ。「蜃驪が道を間違えたわけでも、幻覚の迷路でもない! この木だ! この森全体が生きてるんだ!」
沈無の瞳孔が急激に収縮する。「根を移し、位置を変えていると?」
「そうだ! 奴らの根っこが足代わりになって、地中の泥の中を滑るように移動してるんだ!」謝必安は周囲の枯れ木を指差し、その罠を見破った獰猛な笑みを浮かべた。「ここは巨大な生きた迷宮だ。引路符の方向も間違ってないし、蜃驪も真っ直ぐ走ってた。だが、この森自体がずっと俺たちの周りを移動し続けて、俺たちをこの場所に閉じ込めたんだ!」
見ている間にも、周囲の地面の隆起が激しさを増す。数本の枯れ木が肉眼で追える速度で、馬車の方へとゆっくりと押し寄せてくる。彼らをこの生きた木の牢獄の中で圧死させようとしているのだ。
「阿奴!」
謝必安は天を仰ぎ、車頂の銀白色の毛玉に向かって声を張り上げた。
「泥で汚れるとか気にしてる場合じゃない! 後で俺が直々にブラッシングしてやるから! お前が今動かなけりゃ、俺たちは今夜ここで死んで、この腐った木どもの肥料にされちまう! この地下の泥ごと、奴らの根っこを全部凍らせて殺せ!」
車頂に立つ阿奴は、眼下でうごめく腐葉の匂いを放つ泥沼を冷ややかに見下ろしていた。その表情には嫌悪の色が浮かんでいたが、すぐに彼女はしなやかな背中を丸め、全身の銀の毛を鋼の針のように逆立て、荒野を震わせる鋭い猫の絶叫を放った。
「ミャオォォォ――!」
瞬間。阿奴を中心として、広範囲に及ぶ氷雪の嵐が空中に形成され、山を崩し海をひっくり返すような勢いで四方八方の地面へと叩きつけられた。
純白の寒気が地面に触れた途端、柔らかくうごめいていた泥濘がピキピキと凍結音を上げる。霜の気が疫病のような速度で蔓延し、周囲数十丈の地面を、地中深くで悪さをしようと這い回っていた太い根っこごと、一切の破壊を受け付けない堅牢な永久凍土へと変えてしまった。
位置を変えようと動いていた周囲の枯れ木は、その場にガッチリと固定された。重圧に耐えかねた幹がメキメキとねじれる悲鳴を上げる。どれほど藻掻こうとも、もはや一歩たりとも動くことはできない。しかし、氷の下ではまだ幾つかの根がしぶとく蠢こうとしていた。
「今だ!」謝必安が御者台に飛び乗り、一把に『驚蟄』を引き抜き、目をカッと見開く。「老沈! 道なんか気にしなくていい、ただ前へ突っ走れ! ぶち破れ! 右は俺がやる、左はお前に任せた!」
沈無は力強く頷き、その瞳に冷たい殺意の光を宿す。手にした人骨の小槌を高く振り上げ、蜃驪の首の後ろの逆鱗のど真ん中へ、思い切り打ち下ろした。打つなり槌を引き戻し、腰を落として半身に構える。抜身の刀を横に構え、自らが道を切り開く刃となる準備を整えた。
「ドォォォン――!!」
痛みに狂った蜃驪が、天を衝く嘶きを上げる。この巨大な妖馬は四つの蹄を全力で蹴り出し、重い車輪がガリガリと凍土を削りながら突き進む。馬は首を低く下げ、前方を塞ぐ氷漬けの枯れ木群など歯牙にもかけない。まるで鋼鉄で鋳造された漆黒の戦車のように、すべてを薙ぎ倒す勢いで前へと狂奔し突撃した。
「バキィッ! 轟ォォン――」
真っ直ぐ立ち塞がっていた枯れ木が、妖馬の鱗に覆われた巨体に生身のままへし折られ、瞬く間に木屑が四散する。折れた太い枝が幾つか御者台に向かって飛んでくるが、沈無は一瞥すらせず、百辟喪門刀を容赦なく振り回す。刃が雪のように白い刀花の壁となり、飛来する障害物をすべて木っ端微塵の粉へと切り刻んだ。
それと同時に、謝必安は『驚蟄』を掲げ、自分自身に言い聞かせるように低く喝破した。
「頼むぜ相棒、力を貸してくれ! 思い切り放電しろ! この腐れ木どもはお前の兄弟姉妹なんかじゃない。俺のために道をこじ開けろ!」
言葉が終わるか終わらないかのうちに、『驚蟄』が全体を震わせた。まるで謝必安の意思を完全に理解したかのようだ。刹那、目を刺すような青白い雷霆が棍の本体から噴出し、空気を切り裂くパチパチという爆音を伴いながら、獰猛に前方へと放たれた。
雷光が氷漬けの枯れ木に接触した瞬間、それは消えるどころか、むしろ透き通った氷の表面で屈折し、無数の微細な電蛇となって四方八方へと連鎖的に広がっていった。
極寒と雷火が正面から衝突する。冷と熱の急激な交差により、凍結していた妖木の幹が次々と「パンッ、パンッ」と音を立てて破裂していく。宙を舞うのは無数の氷の破片と黒焦げの炭ばかりだ。雷火はその勢いに乗ってさらに遠くの枯れ木へと燃え広がり、風に煽られて業火となる。ほんのわずかな間に、煮えたぎる炎が死に絶えた森の中に一本の荒々しい突破口を焼き裂いた。
謝必安は眼前に切り開かれた道を見て、最高に満ち足りた気分になった。高らかに笑い声を上げ、手の中の神兵をポンと叩く。「よくやった! さすがは千年の雷木だ。最高にそそり立ってて、最高に猛々しいぜ!」
その言葉を吐いた直後、彼の手のひらにズシリとした重みが伝わった。『驚蟄』の表面に雷の光が波打ち、その質感が一段と硬く、堅牢に変化したような気がした。
どれほど進んだだろうか。最後の一本の枯れ木が蜃驪に粉々に打ち砕かれた瞬間、暗かった視界がパッと開けた。
黒塗りの馬車はついに森の天蓋を突き抜け、枯れ果てた黄草がどこまでも続く、広大な荒野の中へと飛び出した。
謝必安は激しく揺れる車体に掴まりながら、背後に遠ざかるあの不気味極まりない森を振り返り、肺に溜まっていた濁った息を長く吐き出した。
「この荒れ野には、ロクでもないバケモンが山ほどいやがる」彼は額の冷や汗を拭った。「俺は急に、建康城の暮らしが恋しくなってきたぜ」




