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世説新鬼 —神のゴミを拾う男—  作者: 仔猫(コネコ)
第二巻:乱法と残骨
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第71話 護食《飯を守れ》



【巻ノ二・残頁漆拾壱:『司天監(してんかん)・妖祟档』残巻】


「妖獣の横行は、多く本能に憑る。若し食を奪うに遇わば、必ず血光を見ん」


司天監(してんかん)内部メモ】


職場の生存法則第一条。絶対に昼休みに同僚の弁当を奪ってはならない。


この道理は天下どこでも通じる。荒野の畜生や、我が家のあの太った猫でさえ例外ではない。



荒野の寒風が枯れ林を吹き抜け、篝火が激しく明滅を繰り返している。


木匙を握る謝必安(シャ・ビアン)の手が宙で止まり、鼻先が微かに動いた。前方に広がる底なしの暗闇を死に物狂いで睨みつけ、眉を深くひそめる。


「お前ら……何か匂わないか?」彼は声を潜め、微かな緊張を滲ませて言った。


沈無(シェン・ウー)はそれを聞くや、刀の柄を握る指に力を込めた。首をわずかに傾け、小鼻を動かして風の中の気配を慎重に探り、やがて答える。「食物の肉の香りがするだけだ。異状はない」


火のそばに腹這いになっていた銜蝉(シェンチャン)も、つられてピンク色の鼻をヒクヒクと動かした。この太った猫は嫌そうに尻尾を振り、まん丸の目で鉄鍋をじっと見つめながら不満げに鳴いた。


『ミャオォォ! 親父、もっと真面目にやってくれよ。一日中疑心暗鬼になってて、俺様の肉スープが焦げたらどう責任取ってくれんだよ!』


一人と一匹の答えを聞き、謝必安(シャ・ビアン)は半信半疑だった。無意識に背後の馬車を振り返るが、車簾は固く閉ざされ、何の動きもない。彼は自嘲するように首を振り、こわばっていた肩の力を少し抜いた。


どうやら最近、妖骨に振り回されすぎて神経過敏になっているらしい。


彼は再び、目の前でグツグツと煮えたぎる羊のスープに視線を戻した。乳白色の汁の上にはネギと紅油が浮かび、辛味の効いた香りが鼻を突く。


木匙を持ち、陶罐の中をゆっくりと掻き混ぜる。木と粗い陶器の壁がこすれ、沙沙という鈍い摩擦音が響いた。謝必安(シャ・ビアン)はその熱いスープをじっと見つめ、一瞬ためらった。今朝、紫竹幽苑で胡餅を食べた時の、あの泥を噛むような吐き気がまだ生々しく残っている。


彼は深く息を吸い込み、思い切って木匙を唇へ寄せ、恐る恐る一口だけ啜った。


煮えたぎるような旨味と茱萸の強烈な辛味が、瞬時に舌の上で弾け、喉から胃の奥までを温かく満たしていく。


味は正常だ。


泥の味も、鉄錆の味もしない。人間としての味覚は、まだ無事だった。


謝必安(シャ・ビアン)は長いため息をつき、宙に浮いていた心がようやく落ち着いた。木匙を置き、平底鍋の肉をヘラで裏返す。


鉄鍋からは野ニラと肉の脂が焼け焦げる強烈な香りが立ち昇り、陶罐の羊スープは絶え間なく沸き立っている。この二つの人間らしい温かな香りが、暗闇の中で最も致命的な囮となってしまった。


その時だ。


沙沙……バキッ!


枯れ葉が重い巨体に踏み砕かれる摩擦音が、四方八方から迫ってきた。


「気をつけろ! 何か来る」沈無(シェン・ウー)が鋭く叫び、足を引いて腰を落とす。百辟喪門刀がすでに胸の前に構えられていた。火の光を受け、刃が冷酷な霜白色の輝きを放つ。


言葉が終わるか終わらないかのうちに。


ドォォォンという轟音と共に、水牛ほどの巨体を持つ媪妖(おうよう)が三頭、枯れ草の茂みを突き破って現れた。灰白色の眼球が野営地を真っ直ぐに睨みつけている。豚とも羊ともつかない異形の頭からは外側に反り返った牙が伸び、ドロドロの涎を滴らせていた。奴らは後ろ脚で力強く地面を蹴り、強烈な獣の臭いを纏いながら巨体で襲いかかってきた。


そのうちの一頭は極めて正確に跳躍し、真っ直ぐにあの煮えたぎる陶罐へと向かっていった。


「ミャオォォ!」


夜の帳を切り裂くような、甲高い猫の叫び声が響いた。


『どこの命知らずのクソ野郎だ! 俺様の飯を横取りしようたぁ、死に急いでるのか、それとも生きるのに飽きたのか!』


つい先ほどまで火のそばでヨダレを垂らしていた銜蝉(シェンチャン)が、全身の金色の毛を総毛立たせ、巨大なトゲトゲの毬のように膨れ上がった。


食いしん坊の逆鱗に触れたのだ。普段は二歩余計に歩くことすら面倒がるこの太った猫が、今まさに台無しにされようとしている晩飯を前にして、かつてないほどの凶暴性を爆発させた。


退くどころか前へ飛び出し、牙を剥き出しにして身を低く沈める。篝火の前に必死で立ち塞がり、喉の奥から威嚇の低音を響かせ、飛びかかってきた巨獣に向かって恐れを知らずに鋭い爪を振り下ろし、媪妖(おうよう)の怪異な顔面を思い切り引っぱたいた!


パーンッ!


肉が裂けるような鈍い音が響く。水牛ほどの巨体を持つ怪物が、なんとこの不釣り合いな猫の爪に弾き飛ばされ、枯れ葉まみれの地面を立て続けに何回転も転がった。


しかし、妖獣の皮と肉は分厚い。怪物は黒い血を滴らせる頭をブルブルと振り、低い嘶きを上げてよろけながらも身を起こした。それと同時に、少し離れた背後の背丈の高い草むらからガサガサと摩擦音が響き、さらに一回り筋骨隆々な別の媪妖(おうよう)が枯れ枝を踏み砕き、涎を垂らしながら這い出してきた。


新手の媪妖(おうよう)は鼻を鳴らして匂いを嗅ぐと、その白い眼球を篝火のそばに立つ金色の猫へと定めた。


一対二の挟み撃ち。それを前にして、銜蝉(シェンチャン)の低い唸り声は瞬時にくぐもった雷鳴のように沈んだ。今回ばかりは、彼も本気だった。


太った猫は姿勢を低く保ち、警戒するように尻を微かに揺らし、雪のように白い鋭い犬歯を剥き出しにする。続いて、骨格が外れるようなピキピキという微かな音と共に、その丸々とした胴体が急速に引き伸ばされた。肩と背中の筋肉が隆起し、瞬く間に山猫ほどの大きさの金色の猛獣へと姿を変えた。


何の躊躇いもなく、銜蝉(シェンチャン)は四つの爪で地面を猛然と蹴り上げ、無数の枯れ葉と黒い土を撒き散らしながら、血の滴るような大口を開けて二頭の怪物へと飛びかかった!


「老(シェン)、左だ!」


謝必安(シャ・ビアン)が怒鳴り、左手で『驚蟄(きょうちつ)』を掴み取って、もう一頭の怪物へと向かっていく。「『驚蟄(きょうちつ)』、伸びろ!」


「死にたいようだな」沈無(シェン・ウー)は氷のように冷たい顔で二文字を吐き捨てた。手にした長刀が一筋の白絹と化し、先頭にいる媪妖(おうよう)の首筋を正確に切り裂いた。


しかし、それは間違いなく沈無(シェン・ウー)がこれまで振るった中で最も手応えの悪い一刀だった。


刃が灰白色の粗い表皮に食い込むと、砕石の混じった粘り気の強い泥沼に切り込んだかのような感触が伝わってきた。分厚い死皮とその下に重なる脂肪が刃をガッチリと食い止め、波のような抵抗を返してくる。


一刀両断にするつもりだった沈無(シェン・ウー)は、内心で驚愕した。「こいつら……一体何を食ってやがる?」


刃が止まって斜めに滑り、その力が怪物の首にあった巨大な膿疱を切り裂いた。


「ブチャッ!」


黄緑色の粘液が泉のように噴き出し、枯れ葉や青石に落ちた瞬間、ジジジと腐食する音を立てて鼻を突く毒の煙を立ち昇らせた。沈無(シェン・ウー)は眉をひそめ、致命的な体液を避けるために刀を引き抜いて後退せざるを得なかった。


首の半分を斬り裂かれた怪物が倒れるどころか、噴き出す黒血を浴びながら狂ったように咆哮するのを見て、沈無(シェン・ウー)の目の奥に冷酷な光が閃いた。彼は両手で刀の柄を再び強く握り直し、肩を沈め、肘を落として構えを正す。


次の瞬間。彼は足の裏で猛然と地を蹴り、落ち葉を踏み砕いて、顔に吹きつける生臭い風に向かって再び懐へと飛び込んだ。百辟喪門刀が、先ほどの傷口をなぞるように再び振り下ろされる。この一刀、速さは求めない。ただひたすらに、深さのみを求めて。


もう一方の謝必安(シャ・ビアン)の状況も同じく危険だった。


彼は『錯金(さっきん)琉璃』を催動せず、棍を右手に持ち替え、雷撃棍を強く握りしめた。


媪妖(おうよう)の巨体が空からのしかかり、生臭い涎が彼の顔に滴り落ちそうになる。謝必安(シャ・ビアン)はまともに受け止めることを避け、瞬時に身をかわして素早く後退し、距離を取った。


怪物は空を切り、鈍い音を立てて地面に重く落ちる。奴はその勢いのまま頭をねじり、大きな口を開けて謝必安(シャ・ビアン)の腰を目がけて容赦なく噛みついてきた。


「死ね!」謝必安(シャ・ビアン)が大喝し、手にした『驚蟄(きょうちつ)』を横薙ぎに振り抜き、怪物の太い脇腹に全力で叩き込んだ。


この一撃は、まるで分厚い腐った革を叩いたかのようだった。怪物を退かせるどころか、その反発力で彼の手の虎口が痺れる。棍の先端が幾つかの膿疱を削り破り、粘り気のある黄色い液体が四方に飛び散って、鼻を突く腐臭を放った。


痛みに吼えた媪妖(おうよう)の灰白色の眼球が凶気を帯びる。黒い鉤爪の生えた巨大な前足が、空気を引き裂く音を伴って再び横からなぎ払ってきた。


今度は、謝必安(シャ・ビアン)に退路はなかった。彼はわずかに身をかわし、両足で泥地に二つの深い窪みを作るほど踏み込んだ。右腕の妖骨の力が轟然と解き放たれ、腰と脚の力を一つにし、黒い残像を描いて棍を振りかぶり、怪物の頭蓋へ正確無比な一撃を叩き込む。


「ホームラン! ブッ飛べ!」


千年の雷木の硬度が、妖骨の蛮力と重なり合う。


「ドォォン――バキッ!」


棍が頭蓋骨を粉砕する感触は、鉄のハンマーで重厚な銅鼎を叩き割ったかのようだった。


空振りも、手ブレもない。鈍い骨折音が響き、媪妖(おうよう)の頭の半分がその場で陥没し、変形した。脳漿がドロドロの黒い血と混ざり合い、扇状になって荒れ草の中に大量に撒き散らされた。


これこそ生死を分かつ致命の痛撃のはずだった。だが、あの妖獣の生命力は常軌を逸するほどしぶとかった。頭を半分潰されてなお、完全に死に絶えることはなかった。灰白色の眼球を異様に飛び出させ、喉から風の漏れるような凄まじい怪叫を爆発させる。悪臭を放つ鋭い爪が、突風を巻き起こしながら謝必安(シャ・ビアン)の胸を容赦なく抉りにきた!


「クソが!」謝必安(シャ・ビアン)は顔色を変え、泥まみれになって転がる不細工な回避で間一髪避けきった。胸元の襟が爪の先で引き裂かれそうになり、すんでのところで擦り抜けた。「師父にもらった服が汚れるところだったぜ」


彼は狼狽しながらも跳ね起き、二言もなく身体を捻って『驚蟄(きょうちつ)』を長棍のように構え、媪妖(おうよう)の分厚い脂肪の塊のような胴体へ深く突き刺し、歯を食いしばって罵った。


「しぶとい野郎だ! 叩き潰せねえなら、黒焦げにしてやる!」


瞬間。無数の青白い電流が『驚蟄(きょうちつ)』から轟音と共に解き放たれ、無数の青い蛇となって媪妖(おうよう)の巨体に絡みついた。


媪妖(おうよう)はその場で昇天しかけるほど激しく感電した。骨格の隅々まで電流に蹂躙され、巨大な抜け殻のような体が雷の光の中で痙攣し、荒野に響き渡る絶叫を上げる。半分潰れた頭のてっぺんからは、雷の火で焼かれて白い煙まで立ち昇った。


数回の呼吸の後。怪物の巨体が謝必安(シャ・ビアン)の足元に重く崩れ落ちた。全身に青い放電の残滓を這わせながら二度ほど激しく痙攣し、ただの肉の塊と化した。


青白い電流が棍の表面をピチピチと微弱に走る中、謝必安(シャ・ビアン)は棍を突き刺した姿勢のまま、胸を激しく上下させて荒い息を吐いていた。


「お前ら畜生どものせいで、危うく極上のスープが台無しになるところだったぜ……」


謝必安(シャ・ビアン)は激しく唾を吐き捨て、息を切らしながら足元の死肉に向かって冷笑した。


「俺の肉スープが食いたいだと? 来世まで待つんだな!」


だが、その言葉を吐き出した直後。空気に広がる濃烈な血の匂いに、何かが混ざっていることに気づいた。


謝必安(シャ・ビアン)の表情が突如として強張り、足元の死骸を凝視した。彼の右腕の奥底から……奇妙な痺れが伝わってきたのだ。


その痺れは経脈を伝って這い上がり、彼の理性を飲み込もうとするほどの凄まじい飢餓感へと姿を変えた。


喉仏が苦しげに上下し、口の中からは意思に反して大量の唾液が溢れ出す。彼の狂った感覚の中では、血生臭さを放つこの爛れた肉の塊が、致命的な甘い香りを漂わせているように感じられたのだ。


一度芽生えたその思考は、骨に寄生する蛆虫のように離れない。


謝必安(シャ・ビアン)の両足は制御を失って微かに曲がり、身体はひとりでにあの血肉の塊へと覆い被さろうとしていた。彼はすでに自分が口を開き、異臭を放つ生肉を噛みちぎろうとしているのを感じていた。


「ダメだ……やめろ……」


謝必安(シャ・ビアン)は自らの舌を噛み破り、その痛みで一糸の正気を繋ぎ止め、左手で暴走する右腕を死に物狂いで押さえつけた。


彼は無理やり『驚蟄(きょうちつ)』の力を呼び覚ました。青白い雷光が瞬時に反発し、パチパチと音を立てて血肉の中へと潜り込む。激しい鈍痛と感電の痺れが交錯し、この野獣の直感から彼を力ずくで引き剥がそうとする。


彼が己の欲望と苦痛の綱引きを繰り広げていた、その時。


「シュッ――」


銀白色の残影が夜空の流星のように、黒い馬車の屋根から軽やかに舞い降りた。


阿奴(アヌ)だ。彼女はいつの間にか音もなく車頂に登り、最初から最後まで潜伏する豹のように、野営地の一挙一動を冷ややかな目で監視していたのだ。


阿奴(アヌ)は虚空を踏みしめ、四つの純白の猫足を媪妖(おうよう)の砕けた頭の上で優雅に静止させると、面倒くさそうに爪先で軽く一点を引っ掻いた。


一筋の浄化の霊気が肉片の奥へ入り込み、黄色い粘液にまみれた暗赤色の内丹を強引に引きずり出した。極寒の気が瞬時に内丹の表面の汚れを凍らせて剥ぎ取り、水晶のように透明な珠へと変える。彼女は小さな口を開き、それをそのまま飲み込んだ。


すべてを終えると、阿奴(アヌ)はひどく嫌そうにピンクの鼻をしかめた。


彼女は震える謝必安(シャ・ビアン)の肩にふわりと降り立った。グチャグチャの肉の塊に向かってヨダレを垂らしているこの男に対し、阿奴(アヌ)の目に同情の欠片もなかった。


彼女は遠慮なく、謝必安(シャ・ビアン)のまだ比較的綺麗な襟首を乱暴に引き寄せると、少しも汚れてなどいない小さな前足を、これ見よがしにゆっくりと拭き始めた。


拭き終えると、彼女はそのまま極寒の気を帯びた肉球を振り上げ、謝必安(シャ・ビアン)の頬に狙いを定めた。


「パーンッ!」


小気味よく響く平手打ちが、謝必安(シャ・ビアン)の顔面に容赦なくクリーンヒットした。


氷のような鋭い痛みが瞬時に脳天を貫く。謝必安(シャ・ビアン)は感電したように激しく身震いし、瞳の奥に渦巻いていた濁った貪欲さと狂気が、潮が引くように急速に消え去った。


彼は崩れ落ちるように地面に座り込み、冷や汗にまみれた自分の両手と目の前の妖魔の死骸を交互に見つめ、恐怖の余韻の中で深い安堵の息を吐いた。


我に返ると、謝必安(シャ・ビアン)は感謝を込めて阿奴(アヌ)の体に頭をすり寄せた。「サンキュー、阿奴(アヌ)! お前のビンタが絶妙なタイミングだったぜ。もう少しで、とんでもない腹痛を起こすところだった」


しかし阿奴(アヌ)は露骨に顔を背け、小さな鼻に皺を寄せた。冷ややかな目で彼を一瞥し、高慢に鼻を鳴らすと、跳躍して再び馬車の屋根へと舞い戻った。こんな騒ぎが起きた以上、しばらくは眠れそうになかった。


彼女の背中を見送りながら、謝必安(シャ・ビアン)は未だにジンジンと痛む頬を撫でた。今回の件で、全身の服は冷や汗でぐっしょりと濡れ、心中は複雑な思いでいっぱいだった。


少し離れた場所では、銜蝉(シェンチャン)が無傷の鉄釜を背後でがっちりと守り、沈無(シェン・ウー)に前足を斬り落とされて暗闇へ泣き叫びながら逃げ去った生き残りの妖物に向かって、勝利の咆哮を上げていた。


この太った猫は得意げに太い尻尾を振り回し、金色の縦長の瞳に褒められたいという欲求をギラギラと光らせていた。


『親父、俺様が一頭叩き殺して、もう一頭を半殺しにしてやったぜ! なんと草むらの中にもう一頭隠れてやがったんだ! 今日は俺様、ものすごく貢献しただろ? だから、鍋の肉をもう二切れ余分に食ってもいいよな?』


謝必安(シャ・ビアン)は地面に座り込んだまま、呆れたように口の端を歪めた。「わかったよ。あの腐りかけの肉の中から内丹が見つかったら、全部お前のモンだ。阿奴(アヌ)はもう一個食ったから、残りは全部お前にやる」


『やったぜ!』銜蝉(シェンチャン)は嬉しさのあまりその場でクルクルと回り、脂で光る爪を貪欲に舐めながらご機嫌で喉を鳴らした。『この何もない荒れ野の生活も案外悪くねえな。その辺にタダ飯がゴロゴロ転がってやがる』


沈無(シェン・ウー)が百辟喪門刀についた黄緑色の粘液を振り払い、数度慎重に確認してから、惨状の広がる地面を踏み越えて近づいてきた。


「無事か?」彼は座り込む謝必安(シャ・ビアン)を見下ろし、冷徹な顔の奥に微かな探るような色を浮かべていた。


「死にはしねえ。ただ、このクソ骨に振り回されて少し脱力しただけだ」謝必安(シャ・ビアン)は苦笑しながら左手を差し出した。「引っ張り上げてくれ」


沈無(シェン・ウー)はタコだらけの大きな手を伸ばし、謝必安(シャ・ビアン)の左手をガッチリと掴むと、血生臭い妖屍のそばから彼を力強く引き上げた。


立ち上がった後、沈無(シェン・ウー)の視線が周囲の妖物の死骸を一周し、眉間に疑念が浮かんだ。「おかしい。以前、お前の姐弟子から、この畜生たちはお前の袋の中にある宝の気配を嗅ぎつけて来ると聞いていた。だが先ほどの襲撃、奴らの第一目標はただの食事と俺たち自身だったぞ?」


「あの二つの珠のことか?」謝必安(シャ・ビアン)は着物の裾の埃を払い、揺れる篝火越しに、漆黒の馬車へと視線を投げた。


車頂では、あの銀白色の毛玉が静かに鎮座している。阿奴(アヌ)の目には極寒の霊気が満ち、微かだが背筋が凍るような殺意を漂わせながら、周囲の蠢く闇を冷ややかに見下ろしている。


視線を戻すと、彼は沈無(シェン・ウー)に向かって言った。「あの珠の匂いなら、出発する前に姐弟子が独自の陣法で完全に封じ込めた。どんな不思議な術を使ったのかは知らないが、もしその封印がなかったら、城を出た瞬間に俺たちの後ろには得体の知れないバケモノの大群がゾロゾロとついてきてたはずだ」


謝必安(シャ・ビアン)は大きく息を吐き、珍しく自信に満ちた口調で言った。「それに、今は阿奴(アヌ)が直接見張っている。彼女がそこに寝そべっている限り、中にある宝の気配がこの馬車の外へ漏れ出すことなんて、一欠片たりともあり得ないのさ」


言い終えると、彼はたまらず車頂の方をこっそり盗み見た。すると図ったように阿奴(アヌ)がこちらを振り向き、二人の視線が真っ向からぶつかった。氷のような視線を浴び、謝必安(シャ・ビアン)はバツが悪そうに顔を背け、何事もなかったかのように果てしなく広がる闇夜を眺めた。だが内心では密かに安堵していた。


幸いにも、今夜はこのじゃじゃ馬娘が起きていてくれたと。






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