第52話 承天門
【巻ノ一・残頁伍拾弐:『大魏朝野僉載・刑戮』】
「儲君徳を失い、党を結びて叛逆す。天子震怒し、詔を下してその位を奪う。その皮は城闕に懸けられ、血肉は宮闈にて飼わる。世家の大族之を見て、震恐せざるはなく、紛々として尾を断ち自保す。」――『吏部・刑獄档案』
【司天監内部メモ(雑項科司吏謝必安筆)】
世家の庶子が裏で命を借りる血の契約にサインし、進退窮まる絶境に陥った時、祠堂にいる大旦那様たちの第一反応は、決して家財を散らしコネを使って身内を庇うことではない。逆に、彼らは夜通しで祠堂を開け、族譜を引き直し、彼を宗族から除名するのだ。
【考功司王主事朱墨批(鮮血のごとき墨跡、紙の裏まで突き抜け、筆跡は震えている)】
「無恥の極み! 法紀はいずこにありや! 族譜は祖宗の綱常なり、貴様のような逆賊が商賈の品のごとく売り買いするなど断じて許さん! お前の謝家がこのごとき天を突く大禍を起こしておきながら、数枚の黄色い紙で除名して関係を断ち切れると申すか。ならば朝廷の推恩令と株連の法は、小児が鼻水を拭く紙屑と同然ではないか! この勘定は断じて消させん!」
†
建康城、皇城の中心軸。
平康坊から宮門へと通じる御街。水たまりはすでに靴の甲を越えていた。
謝必安が泥水に満ちた鹿皮の官靴で一歩踏み出すたび、鈍い音が響く。右腕を覆う寒食散の氷の霜。黒焦げの血肉が秋の雨に洗われ、白い縁がめくれ返っている。痛みが鋼の針の束のように神経を打ち据え、十歩歩くごとに身体が震えた。
袁老いぼれが傘を差し、先頭を歩く。手にした青白い紙提灯が、狂風の中で暗い光の暈を揺らしているが、暴雨に打たれても消えることはない。
沈無は左手で傘を差し、右手で鉄の鎖が巻かれた百辟喪門刀を引きずりながら、黙って謝必安の傍を歩いていた。刀の切っ先が滑りやすい石板に真っ直ぐな水紋を描き、すぐに溢れる水に呑まれる。
阿奴は謝必安の肩に気高く蹲り、オッドアイの瞳を闇夜に光らせていた。全身から溢れる霊気が壁となり、斜めに打ち付ける雨の幕を強引に弾き返している。そしてあの肥え太った金猫の銜蝉は、腹を裏返した鉄鍋のように膨らませ、謝必安の懐の中で気持ちよさそうに仰向けになっていた。時折顔を出しては大口を開け、鈍いゲップを漏らし、喉の奥から黄色の粘液がついた粗悪な算盤の珠を数個吐き出した。
「沈客卿」謝必安は凍えて青ざめた鼻をすすった。声は嗄れている。「後で宮中に入って、上の大物が強引に清算しようとしてきたら、猫を連れて側門から撤退しろよ。俺の身分は腐っても朝廷の品階を持つ小役人だ。三司会審の手続きを踏むには時間がかかる。だが官職を持たない客卿のお前は、その場で撲殺されても泣き寝入りだぞ」
沈無は振り返らなかった。重い靴底が水に浮く枯れ木を踏み砕き、泥水へ沈める。「分かっている。だが俺にも俺の掟がある。契約が終わっていない以上、この商売は最後まで付き合う。大魏の裁きは活人を縛れても、俺の刀は砕けない」
話している間に、一行は最後の鳥居をくぐり抜けた。
大魏権力の中枢の入り口、承天門。雨の幕の中にそびえ立っている。
数丈の高さがある巨大な城楼。両側は冷間鍛造の生鉄で鋳造された宮壁に囲まれ、息の詰まるような圧迫感を放っている。本来なら金吾衛が守備しているはずの城門の入り口は、今は身長八尺の暗赤色の甲冑を着た硬直した人影で埋め尽くされていた。
地宮の奥深くで目覚めた血屍衛だ。
屍骸の関節から暗赤色の粘りつく膠質が滲み出ている。真夏に三日間天日干しした生の豚肉のような匂いだ。生臭く、古い鉄サビの甘さを帯びていた。
しかし、最も人目を引いたのは、この鉄塔のような血屍衛ではなかった。
承天門の中央、あの扁額の下に吊るされた青白い物体だ。
それが風雨の中で揺れている。雨に洗われ、パタッ、パタッと鈍い衝突音を立てた。
謝必安は目を細め、雨の幕を透かしてそれを見た。
それは一枚の完全な人間の皮だった。
頭部の皮膚が乱暴に下へ向かって剥がされ、両目の眼窩は空洞。風に吹かれ、二枚の空っぽのまぶたが空中で力なくめくれ返っている。皮袋の胸や腹のあたりには、金糸で刺繍された破れたウワバミの模様が残っていた。大魏の当朝の皇太子の衣服だ。半時辰前まで、彼はこの帝国の名目上の皇太子だった。今は城楼に吊るされて干された生肉だ。
「チッ、国師大人のやり口は、相変わらず容赦ないな」謝必安は足元の泥水を見下ろし、口角に自嘲の笑みを浮かべた。
「このクソジジイ、今回は王家の宗祧を丸ごと計算に入れおって!」
無能な狂怒を帯びた叫び声が、城門の左側の影から突如として爆発した。
謝必安が声の方向を見ると、豪奢な装飾が施された紫檀の大型馬車が宮壁の根元に斜めに停まっていた。御者の姿はなく、周囲には死体が散乱している。少し離れた別の馬車は粉々に叩き壊され、泥水の中から残存する金メッキの銅飾りが辛うじて判別できるだけだ。馬車を引いていた芦毛の大きな馬は泥水の中で倒れ、腹を膨張させていた。
大魏録尚書事、謝家太公の謝淵が、大雨の中に惨めな姿で立っていた。名高い緋色の一品官服は雨水に濡れそぼり、枯れ細った胴体にべったりと張り付いている。右手は正体不明の獣の骨で彫られた香炉を握りしめていた。香炉の中の青い炭火はとうに消え、黒い汚泥だけが残っている。
彼の向かいで、大魏司徒の王衍が彼の襟首を掴んでいた。王衍の白髪交じりの顔には狂気が満ち、三角の目からは今にも血が滴り落ちそうだ。
王家の直系は、今夜の皇太子の謀反に加担した。そして今、皇太子の皮が頭上に吊るされている。
「王のクソジジイ、手を離せ!」
謝太公が袖を振り払うと、枯れた手の甲に青筋が浮いた。世家の門閥特有の冷酷な目で、目の前の政敵を睨みつけた。「皇太子の無謀が自滅を招いたのだ! 貴様の王家があの皮袋の道連れになりたいと言うなら、老夫が今ここで本望を叶えてやるわ!」
朝野の権力を握る三朝の老臣二人が、今は市井のならず者のように、くるぶしまである泥水の中で掴み合い、吠え合っている。大魏百年の名門世族が、今この時、一片の体面すら保てていない。
その時、謝必安らが袁老いぼれの背後に続いて、ゆっくりと二人の視界に入った。
謝太公の動きが止まった。
濁った眼球が動き、紙のように青白い顔に媚びた作り笑いを浮かべる謝必安を捉えた。続いて視線が下がり、肩でゆっくりと腹の毛を繕う銀猫に落ちる。眉が微かに跳ね上がった。
「逆孫……」
謝太公の老いた唇が激しく震えた。彼は抜け目ない。司天監監正が自らこの追放された逆孫を連行して宮中に入るのを見て、半時辰前に平康坊の上空で消え去った赤い光柱を思い出し、脳内の糸が瞬時に最も恐ろしい真相を繋ぎ合わせた。
忘憂閣を破壊したのはこの逆孫だ! 今夜の皇太子惨死も、間違いなくこいつが無関係ではない!
謝家百年の清貴な名声、数千人の首が、今夜すべてこの雑項科の謝家の孽障によって、断頭台の刃の下に縛り付けられたのだ。
「太公、ご無沙汰しております」
謝必安は老人の五歩手前の泥水の中に立ち止まった。身を屈めて礼をすることもなく、ただ微かに頷き、御街で顔見知り程度の商人に偶然出会ったかのような口調で言った。
「老夫は……老夫は今日、承天門の前で、天地の神明、大魏の百官の面前で宣告する! 貴様のような孽障を族籍から革除し、完全に断絶するとな!」
謝太公が前に踏み出し、水たまりを踏み砕いた。枯れた指が震えながら謝必安の鼻先を指さし、雨の夜を切り裂くような鋭い声で叫んだ。
「今日より、謝氏の族譜から謝必安の名を削る! この者の生死、この者の因果は、我が烏衣巷謝氏とは半文銭の関わりもなし! 奴は司天監の鬼であり、地府の屍だ! 我が謝家の子孫では断じてない!」
大雨が降り注ぎ、謝太公のシワだらけの老顔を打つ。
傍らの王司徒がそれを聞いて、怨毒の冷笑を漏らした。「謝淵、貴様というクソジジイは逃げ足だけは速いな。尻尾切りで生き延びるつもりか? 遅いわ! 国師の雷霆の怒りが、数枚の黄色い紙で防げると思っているのか? 我が王家が逃れられぬなら、貴様の謝家も逃れられんぞ!」
謝必安はこの見事な門閥の愛憎劇を冷ややかに見ていた。
今この時、彼の心の底には疲労困憊の冷笑しかなかった。さすがは謝家の舵取り、動きが早い。天を突く大禍が降るや、老いぼれがまず考えたのは人を救うことではなく、夜通しでの縁切りだ。世家の政治的な切り捨ては、常にこれほど正確で、効率的で、情け容赦がない。
だが、予想された怒りや落胆は彼の顔に微塵も現れなかった。謝必安は顔の皮を震わせ、大魏の街角にいる最も下劣で厄介なならず者のツラをその場で晒した。
「謝太保、そのいわゆる宗法とやらをそれほどキッチリ計算なさるなら、下官も少々恩讐の棚卸しをさせていただかねばなりませんね」
謝必安は一歩踏み出し、右手を真っ直ぐに謝太公の前に突き出した。
「後輩は十四歳で司天監に入り、最初は最も下賎な死体運びと清掃をやらされ、雑項科の最も薄い給料を貰ってきました。ここ数年、後輩は自力で生活し、家の金には一文も手をつけていません。謝家の養育の恩とやらですか? ご覧の通り、後輩はこの焼け焦げそうな腕とこの安い命を使って、今夜忘憂閣で建康城のために天を突く災厄を身代わりとなって防ぎました――この恩は、これで綺麗さっぱり帳消しでしょう?」
謝必安の眼底は凍りついた死水のように冷たく、口調にはならず者に近い打算と決絶さが帯びていた。
「今日、貴方様が家法を執行し、後輩を族譜から除名し、縁を切ると美辞麗句を並べる。しかし大魏の宗法には、家長が子弟を追放する際、姦通や忤逆の決定的な証拠がない限り、恩を断ち義を絶つための『手切れ金』を残さねばならないとあります。さもなくば、後輩がこれから太極殿へ入り、怒り心頭の国師に詰問された際、うっかり口を滑らせて言ってはならないことを漏らしてしまったら……あの平康坊の天を突く大禍は、本当に烏衣巷謝氏一族の連帯責任になってしまいますよ」
「き、貴様というならず者め! 老夫を脅す気か!」
謝太公は息を詰まらせ、眼球が割れんばかりに見開き、一筋の血が雨水と混じって目尻から流れ落ちた。これほど厚顔無恥な人間を見たことがない。死を目前にして、まだ親の懐から銀をむしり取ろうとしているのだ。
「払ってやれ」
傘を差し、傍観していた袁老いぼれが口を開いた。
監正の数十の老人斑の目が傘の影で幽々と動き、青白い紙提灯が謝太公の顔を照らした。「謝太保、我が雑項科の役人は命懸けで大陣の死に金を平らげた。お前さんが奴と恩義を断ち切るというなら、この手切れ金が少ないと、老夫のこの提灯が、今夜は謝の屋敷の門前に数日間掛けられることになるぞ」
司天監の最高長官からの実質的な圧力だ。
謝太公は死の気配を放つ紙提灯を見つめ、計算高さに満ちた謝必安の目を見た。この逆孫が今夜宮中で死ねばいいが、もし生きていれば、その性格からして間違いなく謝家を万劫不復の奈落の底へ引き摺り込むだろうと悟った。
「老夫は……老夫は今日、道端の野犬に恵んでやったと思うことにする!」
謝太公は震える手で、濡れた懐から分厚い、金糸で縁取られた江南塩鉄引の束を取り出した。大魏六道の塩鉄商売の官製の証明書。鬼市では、この数枚の紙が十万貫に等しい。
彼はその官憑の束を謝必安の足元に叩きつけた。
「失せろ! この金を持って、老夫の目の前から消えて死んでこい!」
謝淵は胸を押さえ、従者に支えられながら、暴雨の中の馬車の残骸へよろめきながら戻っていった。謝必安を一目でも多く見れば、自分の目が汚れるとでもいうように。
謝必安は無表情で身を屈め、急ぐことなく濡れた塩鉄引を一枚ずつ拾い上げた。一枚拾うごとに、謝家のカビの生えた族譜から、自らの手でページを引き裂いているようだ。指先から骨を刺す激痛が伝わってくるが、真剣に枚数を数え終え、すべてを漆皮の革袋にねじ込んだ。
「金と品は清算された。生死に恨みなし」
謝必安は身を起こし、革袋の留め具を掛け直した。顔を上げ、承天門の上で風雨に揺れる皇太子の皮袋を見た。目の作り笑いは消え、決絶した冷酷さが取って代わった。
「袁監正、沈客卿、行くぞ」
泥水を踏みしめ、腐臭を放つ血屍衛を越え、真っ先に太極殿へ通じる深い宮門へと足を踏み入れた。




