第51話 帳尻合わせ
【巻ノ一・残頁伍拾壱:『大魏律・百官』】
「凡そ六部九卿、諸司百官、各々その職を司り、越権して勘問するを得ず。若し大妖巨蠹に遇い、役所を跨いで会審するを要す者は、必ず先ず関防を互通すべし。私に他司の武官を調用する者は、結党営私と視做し、罪を論じて誅に処す。」――『吏部・官制档案』
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大雨が降りしきる。
平康坊の泥沼の中、百張の辟邪の重弩が弦を限界まで引き絞られ、冷ややかな光を放っている。
謝必安は身を屈めていた。左手の手の甲の水疱が破れ、血水が指先を伝って滴り落ちる。十歩先で黒紙の油傘を差す上司――司天監監正の袁老いぼれを見た。顔の筋肉が引き攣り、泣き笑いのような弧を無理に描く。
「監正大人……この忘憂閣の地脈は元々年久しくして修繕を怠っておりました。下官は役所の代わりに『穢れを払い厄を抜く』行いをしたまで。ちょうど司天監の……その、不良債権の帳消しの旧例にも符合いたします」
「不良債権だと?」
袁老いぼれは欠けた黄色い歯を剥き出しにした。その声は錆びた鉄片がこすれ合うように嗄れている。一歩前に踏み出すと、布靴の縁から濁った波紋が広がった。
「昨日は雑項科の役所を叩き壊し、今日は彫梁画棟の忘憂閣を破壊したな。謝拾遺、随分と腕を上げたものじゃ! その口は死人をも生き返らせるようじゃな。だが考功司の王主事が先ほどこう言っておったぞ。この天文学的な損失は、お前の皮を剥ぎ骨を外し、灰にしても、帳簿の穴は埋まらんと!」
袁老いぼれが近づくにつれ、顔の皮にある数十の灰白色の老人斑の目が、傘の下の陰で狂ったように回転した。瞳のない眼球には隠そうともしない貪欲さが透け、謝必安の背中にあるパンパンに膨らんだ漆皮の革袋に釘付けになっている。
謝必安はこの手の視線を熟知していた。これは命を狙う目ではない。金を狙う目だ。
官僚体系において、上官が「穴」の大きさを語りたがる時は、その勘定にまだ交渉の余地があることを意味する。怖いのは、一言も発さずに直接引き金を引く融通の利かない連中だ。
「監正の明鑑を」謝必安は二度咳き込み、血混じりの唾を吐き出した。「下官のやり方は粗鄙ですが、掟は弁えております。今回の清掃で、幸運にも監正のためにいくつかの『遺漏』の品を見つけ出しました」
彼は腕が引き裂かれるような痛みを堪え、ゆっくりと従順に漆皮の革袋を下ろし、泥まみれの青石の板の上に置いた。
「ニャオ!」
空中で旋回していた阿奴が不満の甲高い鳴き声を上げた。重度の潔癖症を持つこの銀色の女王は、労働後の「ご褒美のおやつ」がこのような汚い環境に置かれるのを酷く嫌う。だが今の状況の重圧を理解し、不機嫌に謝必安の肩に舞い降りるしかなかった。そのオッドアイの瞳で袁老いぼれを冷ややかに見据える。
謝必安は手を伸ばし、革袋の留め具を外した。
無論、計り知れない価値を持つ太歳の核を取り出すほど愚かではない。あれは彼が命懸けで手に入れた奥の手だ。
左手を革袋の隙間に入れ、しばらく手探りをして、二つの物を取り出した。
一つは、高熱で異化された護衛の体内から抉り出した、青白い光沢を放つ劣悪な内丹が二つ。もう一つは、数斤の重さがある、いびつな形をした黄金の塊だ。あれは遣手婆の花ママが粉砕された後、銜蝉がこっそり吐き出したへそくりで、まだ溶けきっていない蜀錦の糸と焦げた血肉がこびりついている。
謝必安は血の汚れがついた資産を両手で捧げ持ち、恭しく前へ差し出した。
「忘憂閣には妖祟が横行しておりました。下官は死を賭して妖を斬り、妖の骸の腹中から幸運にも『血俑の内丹』と思しきものを数個見出しました。監正のご加護により、ついでに黄金も少々。下官は僭越ながら、これらをすべて司天監の金庫に納め、今月の金庫の修繕費、同僚への見舞金、そして……破損した法器の香典銀として充てていただきたく存じます」
大雨の中、短い静寂が訪れた。
沈無は百辟刀を握る手に冷や汗を握った。二つの劣悪な内丹と一塊の砕けた金で、大魏護国法陣を破壊した罪を買おうというのか? これではまるで監正を道端の乞食扱いだ。
しかし、袁老いぼれは怒らなかった。
彼はゆっくりとあの青白い紙提灯を持ち上げ、謝必安の手の中の財物を照らした。顔にある数十の灰白色の目は、内丹と黄金を見た途端、一斉に細められ、不気味な愉悦の光を放った。
「血俑の内丹か……出来は悪いが、鬼市へ持って行けば上等な棺桶の木材と交換できるじゃろう」
袁老いぼれは枯れ枝のような右手を伸ばし、謝必安の手の物を無造作に掴み取り、洗い晒されたゆったりとした袖袍の中に適当にねじ込んだ。その一連の動作は流れるようにスムーズで、一人が収め一人が差し出すその様子は、明らかに今回が初めての「融通」ではないことを示していた。
「お前さんにもまだ少しは孝心があり、役所の憂いを分かち合おうという気があるようじゃな」袁老いぼれの顔の目はゆっくりと閉じられ、普通の褐色の斑塊に戻った。「この役所を壊した死に金は、老夫が代わって考功司に圧力をかけてやろう。だが忘憂閣の尻拭いは……あれは国師の産業じゃ。老夫は司天監内でお前が死なんようにしてやることしかできんぞ」
謝必安は長く息を吐き、張り詰めていた神経を少し緩めた。内部監査さえ通れば、残りの外部の債務は、大魏の神権と官僚の間の役所の壁を利用してたらい回しにできる。
彼が身を屈めて荷物を拾い上げようとしたその時。
タッタッタッ!
慌ただしく、すべてを投げ打つような馬の蹄の音が、突如として平康坊の外れから雨の幕を切り裂いて響いた。蹄の音が近づくにつれ、溶かしきれないほど濃厚な血の匂いが漂ってきた。
百名の司天監の校尉が本能的に重弩の向きを変え、音の方向を狙った。
全身真っ黒で口から白泡を吹く大宛の良馬が、狂ったように街角の廃墟を駆け抜けてきた。馬の両目はなぜか盲目になっており、血の涙を流している。残酷な術法で強引に生命力を前借りさせられたのは明らかだった。
馬の背には、青色の道袍を着た人影が伏せていた。国師李泌の傍にいる伝令の道童だ。
だが今、この道童の姿は不気味極まりなかった。顔の半分に暗赤色の奇妙な陣の紋様が浮かび上がり、皮膚の下で無数の虫が蠢いているようだ。両目は虚ろだが、瞳の奥には病的な金赤色の火光が燃えている。
明らかに生きた人間ではない。
「ヒヒーン!」
盲目の黒馬は司天監の陣列から十歩離れた場所で力尽きて倒れ、凄惨な悲鳴を上げた。
道童の身体は硬直した木の板のように泥水の中に落ち、骨が折れる澄んだ音がした。だが彼は痛みを感じる様子もなく両手で地面を支え、ねじ曲がった姿勢で這い上がった。その伝令の童子は一巻の黒い絹の法帖を取り出した。そこには国師の九畳篆文の法印が押されている。それを猛然と広げた。
「太極殿法旨!」
道童が口を開いた。吐き出されたのは少年の澄んだ声ではなく、破れたふいごを引きずるような、粘りつく摩擦音が混ざった濁った低い唸り声だった。その声は、紛れもなく国師李泌のものだ。彼は数里の雨の幕を隔て、神識をこの壊れた抜け殻に憑依させたのだ。
「司天監の雑用係、謝必安。狂悖無道にして、護国法陣を毀損せり! 本座は天子の詔を奉じ、即刻この賊を捕縛す! 三歩ごとに一叩頭し、太極殿に転がり込んで審問を受けよ! 本座自らの手でその骨を鑢で削り灰にしてくれる! 阻む者は、同罪に処す!」
血の滴る法敕が狂風の中でバサバサと音を立てた。
この死刑宣告の法旨を伴い、道童の七つの穴から黒い血水が湧き出し始めた。体内の太歳の肉の糸が生機を使い果たし、泥沼の中に真っ直ぐに跪き、息絶えた。
大雨の中、空気は氷点まで下がった。
謝必安は地面に跪く死体を見て、喉仏を困難に上下させた。あの生煮えの煞料を詰め込まれたクソジジイが、毒の発作を強引に耐え抜き、全土指名手配令を下してきたのだ。
銜蝉は険しい顔で、その不気味な道童の抜け殻を眺め、謝必安を見た。「親父、様子がおかしいぜ……この言い草だと、国師は本気で動くつもりだ。俺たち、早く逃げた方がいいんじゃないか?」
謝必安は銜蝉を無視し、傍らに立つ袁老いぼれに顔を向けた。通行料を払ったばかりだというのに、仇が法敕を持って門を塞ぎに来たのだ。
しかし、全員の予想に反して。袁老いぼれは退かず、捕縛の命令も下さなかった。
大魏の官界に何十年も浸かってきたこの老泥鰌は、法旨を読み終えた道童の死体を見て、突然背筋が凍るような冷笑を漏らした。彼はゆっくりと手を上げ、黒紙の油傘を後ろへ傾けた。
「太極殿の法旨? 随分と威勢がいいのう」
袁老いぼれは手にした青白い紙提灯を前へ突き出した。声は嗄れて強硬で、万人の墓穴から這い出してきたような冷たい煞気を帯びていた。
「国師は老いぼれてボケたか、大魏の掟を忘れたようじゃな。司天監の犬は、たとえ天を突き破ろうとも、老夫のこの手で皮を剥ぎ筋を抜くしかないのじゃ。太極殿が清算にしゃしゃり出る幕ではない。謝拾遺、荷物を持て。老夫と皇宮へ勘定の照合に行くぞ」
謝必安が頷こうとした時、廃墟の奥の影から、微かな水音が響いた。
魚鱗の軟甲を着て、青銅の夜叉の面を被った三名の武官が、音もなく暗闇から現れた。彼らは謝必安を見ることもなく、真っ直ぐに沈無の前に歩み寄り、片膝をついた。
「沈千戸」先頭の夜叉の武官の声は冷たかった。「鏡妖司鎮撫使大人の命令です。平康坊に異変あり、城門の火事が池の魚に及ぶ恐れがあります。即刻帰隊し、司天監と太極殿の泥沼に巻き込まれないようにとのこと。命令に背く者は、反逆逃亡として処断されます」
それは沈無の直属の上司からの強制召還命令だった。
袁老いぼれは目を細め、これらの招かれざる客を冷ややかに値踏みし、口角に嘲笑を浮かべた。「どうやら、鏡妖司はこの泥水から早く身を引きたがっているようじゃな」
沈無は雨の中に立っていた。生鉄で鋳造されたようなその顔には何の表情もない。彼はうつむき、手の中の鉄の鎖が巻かれた百辟喪門刀を一瞥した。刃にはまだ太歳の血俑の暗赤色の膠質が残っている。
続いて、彼は顔を上げ、三名の夜叉の武官越しに、謝必安に視線を落とした。
「俺はこいつの茶を飲み、こいつの銀を受け取った」沈無の声は低く、鈍器がこすれるような抵抗感を透かせていた。「商売は終わっていない、目標は死んでいない。今刀を収めれば、掟が壊れる」
先頭の夜叉の武官が猛然と立ち上がり、腰の環首直刀に手を当てた。「沈千戸! 命令に背くおつもりか?」
内輪揉めが爆発しようとした時、謝必安が突然ため息をついた。彼が懐を探り、血のついた金でも木でもない令牌を取り出すと、手首を返し、正確に沈無へ向かって投げた。
パシッ。
沈無は手を上げてしっかりと受け止めた。それは司天監雑項科の腰牌だった。
「沈千戸、同僚を困らせるな」謝必安の口調には典型的な仲買人の計算高さが透けていた。「今この時から、お前は俺たち司天監雑項科が正式に採用した『臨時客卿』だ。給料は日払い、まかない付き。本官の代わりに前で刀の盾になり、硬い骨を砕くのが仕事だ」
謝必安は振り返り、顔色を曇らせている袁老いぼれを見て、堂々とした笑みを浮かべた。
「監正、こちらは我々雑項科が新たに契約を結んだ臨時客卿です。大魏の律例に従い、雇用期間中、彼の生死の関防は我々司天監が一切の責任を負います。彼はもう、我々の人間です」
袁老いぼれはその腰牌を見て、次に鉄塔のように屈強な沈無の体躯を見て、眼底に鋭い光を閃かせた。これからの太極殿への道行が激戦になることは承知している。人手が一人増えれば、それだけ心強い。
「雑項科が雇った苦力なら、ついて来るがよい」
袁老いぼれは鼻を鳴らし、振り返って泥水を踏みしめ、皇城の方向へ大股で歩き出した。
沈無はその雑項科の腰牌を懐へ無造作にねじ込んだ。青ざめる三名の鏡妖司の武官を無視し、百辟刀を引きずりながら、肩の金色の猫と共に、銀猫と謝必安の足取りに続いた。
「沈客卿、俺たち司天監の相乗りの船に乗ったと思えばいい」
謝必安は沈無の肩を叩き、ニヤリと笑った。「行くぞ、一緒に太極殿へ付き合え。あの紫袍のジジイを見つけて、今夜命懸けで稼いだ公金の銀を、利子をつけてきっちり精算してやろうぜ!」




