第30話 血肉の手付金
【巻ノ一・残頁卅:『大魏風俗考・祭祀喪葬』残巻】
「漢末の大乱より銅山枯渇し、民間にて漸く紙を切りて銭と為し、これを焚きて鬼神を祭る風習興る。生者は偽を以て真を乱し、死者はこれを受けても用無し。故に陰司は誆騙の徒を最も恨む。」――『司天監・民俗档』
【司天監内部メモ】
「画大餅と押金」――現代の企業において、サプライヤーと交渉する際によく用いられる手段は、未来の百倍の収益という画大餅で釣ることである。だが魏晋の地下の教父はこんな手には乗らない。数百年もの間偽札を受け取り続けてきた黒道のボスの前で空手形を切る時は、自身の真皮実肉を用いて頭金を支払う覚悟をしておくのが最善である。
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紅泥の小火炉の中で赤児の骨がパンッと炸裂の巨音を発し、腥臭い数点の惨白な骨灰が、黴の生えた木の床板の上に弾け落ちた。
提灯叟のあの真っ暗な二つの眼窩が、真っ直ぐに謝必安に向けられた。眼窩の幽緑色の燐火が、「国師の極品内丹を買い取る」という狂言に伴って驟然と暴長し、まるで墳墓で劇烈に燃え盛る二団の鬼火のようになった。
秦淮河の底を数百年統治してきたこの地下の覇主は、暴怒することはなかった。彼の干からびた胸腔からは、逆に破れ鞴を引きずるような低く沈んだ笑い声が絞り出された。その笑い声は大堂の壁に貼られた粗雑な冥紙を摩擦し、周囲に僵立する三人の紙紮人たちにもササッという詭異な共鳴音を発させた。
「大魏建国以来、老朽のこの骨秤の上で、あろうことか国師の命を元手なしの商いの具にしようとした生きた人間は、お主が初めてじゃ」
提灯叟は緩慢に笑い声を収めた。彼の枯れ木のように痩せ細った左手が、人類の腕の骨を研磨した十六星の骨秤を握りしめ、骨の関節が力のせいで病的な死白さを泛び上がらせていた。秤の棹の末端に掛けられたあの猿の頭の分銅が、半空で人を不安にさせる微弱な揺晃を発した。
「空口白話、鏡花水月よ」提灯叟の声は再びあの身の毛のよだつような温和さを取り戻した。「国師の内丹が確かに無価之宝であることは間違いなかろう。だがこの美味い話を、区々たる九品の拾遺に過ぎぬお主が、一体何をもって老朽の卓に運べると保証できるのじゃ?」
謝必安は退縮しなかった。
彼のあの灰布の長着の下に隠された右腕は、今まさに錯金琉璃の残留した恐怖の反発に耐えていた。皮下の血管の血液は煮えたぎり、まるで磁器の窯の中で烈火による反復した炙り焼きを受けているかのようだ。彼は奥歯を死に物狂いで噛み締めて、ようやく身体の生理的な震えを辛うじて圧し伏せることができた。
大魏の年間、連年の戦乱により銅銭が極端に不足し、民間では紙を切って銭とし、焚焼して祭祀を行う風習が流行し始めた。いかなる価値も持たない紙切れで九泉の下の亡魂を誤魔化すこと、これこそが生者から死者に対する最大の傲慢であった。謝必安は心の中で無比に熟知していた。この鬼市で数百年もの間偽札を受け取り続けてきた地下の教父が最も恨んでいるのは、生きた人間が描く空口白話なのだということを。
空手套白狼を狙うなら、将棋盤全体をひっくり返すほどの狂気を展現しなければならない。
「俺の背後にいるこの鏡妖司の千戸の手にある刀、俺のこの陣眼を呑み込める二尊の鎮獄双猊、さらには光脚不怕穿鞋俺のこの腐った命に懸けてだ。そして悪かったな、俺の姓が『謝』であることにも懸けさせてもらおう」
謝必安は完好な左手で、骨秤の頭蓋骨のトレイの上に置かれたあの木質の腰牌を前方へ半寸押しやった。木札と骨の盤が摩擦し、カチッという脆響を発した。
「前輩は国師の大陣が鬼市を糞溜めとして扱っていることをご存知のようだが、それなら明白なはずだ。一旦琉璃の大典が起動し、十万の生霊の極陰の煞気が流れ込んでくれば、この秦淮河の底の陰陽の界線は瞬時に崩壊する。その時になれば、陰兵を拡充するどころか、あんたのこの紙紮の朝堂は、恐らく柱一本すら残らねえだろうぜ」
謝必安はあの跳動する二団の燐火を直視し、語気には破釜沈舟の狠戻さが透けていた。
「国師はあんたの命を陣の穴埋めにしようとしているが、俺は国師の命をあんたへの孝敬にしてやろうって言ってんだ。この商い、前輩は乗るか、それとも三日後に皆一緒にこの建康城ごと灰に焼き尽くされるのを待つか?」
大堂内の空気は彷彿と瞬時に凝固したかのようだった。
沈無が佩刀を握る左手の手の甲に、青筋が隆起した。玄色の武官服の下の筋肉が極度の緊繃によって細微な引きつる音を発した。提灯叟の手にある骨秤にいかなる振り下ろされる気配でもあれば、彼のあの刃こぼれした秋水の直刀は、依然としていささかの躊躇もなく老者の咽喉を劈き開くであろう。
良久。
提灯叟のあの二団の幽緑色の燐火が緩慢に平息していった。
「見事な減らず口じゃ。司天監がお主を九品の文官の地位に押し込めているのは、誠に屈才というものじゃ。謝家があろうことかお主を放ちて胡麻粒のような小官に就かせるとは、ふむ……」
老者の枯れ細った左手が軽く一震いすると、あの干からびた猿の頭の分銅が骨秤の上で二寸ほど滑り動いた。
「老朽はお主らに一本の活路を譲ってやってもよい、あまつさえ橋を渡るための陰符を貸し与え、忘憂閣の外郭の守衛を避けて、直接後院の枯れ井戸から底層の陣眼へと進入させてやってもよい」提灯叟の声は鉄のように氷のように冷たく、半点の相談の余地も帯びていなかった。「だが老朽の骨秤は、押金のない商いは量らぬ。既然お主が己の命をそれほどまでに値打ちがないと嘯くのであれば、何らかの真の品を出して、この分銅を圧し下げるがよい」
提灯叟はあの木質の腰牌を托した頭蓋骨の秤盤を、真っ直ぐに謝必安の眼の鼻の先へと突き出した。
「一滴の心頭血。これをこの秤盤の上に滴らせ。大典が成せば、お主は内丹を持ってきて血と交換せよ。大典が敗れれば……お主のこの皮袋は、自ら秦淮河の底へと歩み来り、老朽のこの楼閣の第九の生樁となるのじゃ」
沈無の眼差しが驟然と寒気を帯びた。彼は謝必安の左肩をガシッと押さえ込み、声は低沈に嗄れていた。「謝拾遺、ならん。これは鬼市の索命の血契だ、血を滴らせれば、貴様の魂魄は奴の手に握られることになるぞ」
「構わねえ。どうせ俺のこの命は、とうに蘇女将に一万四千両借金してるんだ、もう一回抵当に入れたってどうってことねえさ。借金まみれで気にもならねえよ」
謝必安の蒼白な顔に無奈の苦笑が絞り出された。彼は沈無の手を撥ね退け、いささかの躊躇もなく、直接腰間の干からびた酒瓢箪のコルク栓を抜き取った。彼は歯でコルク栓の縁にある滑り止めの粗雑な麻縄を死に物狂いで噛み、猛然と力を込めて引き千切った。
シッという沈悶な音に伴い、麻縄が彼の左手の人差し指を切り裂いた。
殷紅の鮮血が湧き出す。謝必安は血の流れる指先を、あの惨白な頭蓋骨の秤盤の上方へと懸空させた。
一滴の暗紅色の血の雫が、微熱を帯びた体温と共に、精準に木質の腰牌と骨盤の境界へと叩き落ち、ピチャッという粘稠な微音を発した。
血の雫が落ちた瞬間、元々は紋絲も動かなかった十六星の骨秤が、彷彿と突如として千鈞の重荷を背負わされたかのようになった。あの膨大な欲望を代表する干からびた猿の頭の分銅が、ギギッという骨格の摩擦音に伴い、あろうことかこの一滴の鮮血によって強引に高く跳ね上げられたのである。
秤が平らになった。
『オヤジ! 水漏れしてるぞ!』
先ほど紙紮の腕を呑み込んだ銜蝉が、あの新鮮な血生臭さを嗅ぎつけるや否や、即座に脳内で大仰な叫び声を発した。この金色の太った猫はいかなる形象も顧みずに前へ飛びかかり、二つの前爪で謝必安の血の流れる人差し指を抱え込み、桜色の舌に生えた逆棘を用いて、傷口に残留した血痕を遠慮容赦なく舐め取った。
『もったいねえ! この血、劣悪なアルコールの酸っぱい悪臭がプンプンするが、どうにか純陽の品じゃねえか。死人の骨の上に垂らすなんて完全な暴殄天物だぜ! 本喵が仕方なく綺麗に掃除してやるよ!』銜蝉は舐めながら理直気壮たる意念を送信してきた。
謝必安は痛みに冷気を吸い込み、不器用に手を振り払い、この火事場泥棒のデブ猫を軽く揮い退けた。
一方半空では、銀猫の阿奴が四つの爪で虚無の霊気の波紋を踏みしめていた。
彼女のあの美しいオッドアイの瞳孔の中に一抹の深沈たる厭悪が閃いた。この高冷な氷雪の女王は、いかなる骯髒な血の気と屍臭が近づくことすら決して容認しない。彼女は優雅に右の前爪を掲げ、虚空から一縷の極めて純浄な地下の冷泉の水気を牽引してき、肉球を一塵不染に洗い清めた。
その後、阿奴は凌空に飄落し、精準に謝必安の左肩を踏みしめた。彼女は遠慮容赦なくあの洗い清めたばかりの前爪を伸ばし、謝必安の灰布の長着の襟元で、慢条斯理に、それでいて極めて力を込めて、前後に二度擦り拭い、まるで何らかの見えない晦気を清掃しているかのようだった。
「老朽、お主の押金は確かに受け取ったぞ」
提灯叟は骨秤を収めた。彼は右手のあの血光を放つ人皮の提灯を、傍らに僅存する紙紮の童女へと手渡した。続いて、彼は破れ果てた蓑衣の中から、ねじ曲がった朱砂の呪文がびっしりと描かれた一枚の黄色の冥紙を探し出し、無造作に宙へ揚った。
冥紙は半空で火の気もなく自然発火し、一団の幽緑色の灰燼と化した。灰燼は散ることなく凝集し、爪の先ほどの大きさの、全身が碧緑色の虚幻の飛蛾へと化作した。
「この引魂蛾に付いて行くがよい。こやつがお主らを忘憂閣の後院の枯れ井戸まで導いてくれよう」提灯叟は再びあの眼球のない眼窩を閉じた。「三日後、老朽は此処で茶を煮て、国師の内丹を静候としようぞ」
謝必安はこれ以上無駄口を叩かなかった。
彼は身を翻し、いささか僵硬した足取りで、あの暗闇の中で翩翩と起舞する幽緑の飛蛾に付き従い、紙紮の楼閣の出口へと向かって歩き出した。沈無は刀の柄を握り、緊随し、あの警戒する双眼は始終、それらの蠢蠢欲動する紙紮人たちを死の如くロックオンしていた。
二人と二匹の猫が紙紮の楼閣を踏み出し、再びあの酸臭のする黒い淤泥の中に足を踏み入れたばかりの時。
あの、ずっと烈酒と意志力によって強引に圧し伏せられていた生理的反発が、ついに決壊した洪水の如く全面的に爆発した。
謝必安の右腕から、魂を切り裂かんばかりの劇痛が伝わってきた。血管の中に流れているのは彷彿ともはや血液ではなく、砕けたガラスの破片が混じった沸騰する岩漿であるかのようだった。彼は両脚の力が抜け、全体が制御不能に前方へと二歩よろめき、膝が氷のように冷たい淤泥の中に重く叩きつけられた。
彼は両手で死に物狂いに地面を支え、喉の奥から苦痛の乾嘔の音を発した。
直後、劣悪な焼刀子の鼻を刺すアルコール、胃酸、そして極度の苦痛によって分泌された胆汁が混合し、オエッという粗く重い嘔吐に伴って、身の下のこの悪臭を放つ黒い泥沼の中へとことごとく傾瀉されたのであった。




