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世説新鬼 —神のゴミを拾う男—  作者: 仔猫(コネコ)
第一巻:秦淮夜雨・長生期尽く
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第22話 暗渠



【巻ノ一・残頁弐拾弐:建康(けんこう)城地下水文勘探手記・佚名】


「秦淮の水脈、表と裏は殊途なり。陽面は画舫が雲を連ね、脂粉が江を覆う。陰面は沈痾と積腐にして、全城の至陰至邪の気を集む。


凡そ此の暗渠に墜ちし者は、決して水底の泥を凝視すべからず。泥の深き処の無数の双眼が、落ち来たる活人を貪欲に窺うが故なり」


(傍らに水染みで滲んだ朱砂の批註がある。『落ちても絶対に口を開けるな。あの水は太医院の黄連湯よりも命に関わる』)



謝必安(シャ・ビアン)の身体は絶対の暗黒の中で、微塵の尊厳もない急速な滑落を経験していた。


この司天監(してんかん)初代監正が秘密裏に建造を監督し、極陰の廃棄物と法器の残骸を排出するためだけに作られた地下の暗渠は、幽冥へ直通する絶壁のように急峻だ。


管壁は切り出された青石板を繋ぎ合わせて作られているが。日の目を見ない地底の奥深くで、数百年にわたり陰湿な水蒸気と腐敗物に容赦なく浸され続け、石板の表面にはすでに一寸もの厚さの、極めて滑りやすい黒緑色の毒苔がびっしりと生い茂っていた。


謝必安(シャ・ビアン)の元々埃と血汚れにまみれた青色の官服が、この粘りつく毒苔の上で狂ったように摩擦し、チリチリという布の裂ける音を立てる。


彼は、盲鰻の腸管に粗暴にねじ込まれ、粘液だらけの消化管に沿ってひたすら下へと滑り落ちていく、無力な肉塊のようだ。


視覚が完全に失効する恐怖の盲区だ。


視野に一筋の光もない。固体として凝結しそうなほど濃厚な純粋な暗黒だけが、眼底を死に物狂いで圧迫してくる。


視覚の剥奪は、他の感覚を強制的に極限まで増幅させた。


空気に極度に複雑で吐き気を催す匂いが充満している。長年発酵した屍蝋の匂い、錆びて腐った青銅の匂い。そして非業の死を遂げた無数のドブネズミが混ざり合った悪臭だ。


この匂いが実体を持つ陰冷な気流と化し、急促な呼吸に沿って野蛮に鼻腔へ潜り込み、極度の二日酔いで脆くなった胃壁を激しく叩きつける。


「ゲホッ……ゲホッ……」


謝必安(シャ・ビアン)は急速に滑り落ちながら、劇しい咳を堪えきれなかった。無事な左手で暗渠の壁を掻きむしり、制御不能な落下速度を緩めようとする。だが滑りやすい毒苔には全く手がかりがない。爪が青石板を虚しく引っ掻き、生臭い粘液を掻き集めるだけだ。


さらに致命的なのは。粗末な麻布で首に死に物狂いで吊るされた、深い冷却期にある右腕だ。


この極度に陰寒な地下配管の中で。右腕の骨髄の奥深くに残留する「窯の温度」が外界の刺激を感じ取り、即座に激しい拒絶反応を引き起こした。


硬直した右腕の皮下から、再びジューッという微細な沸騰音が伝わってくる。西域の葡萄酒で強引に抑え込んだ恐怖の熱力が、激怒した獣のように再び経脈の中で暴れ回り、魂を引き裂くような恐怖の劇痛を次々と波のように送り込んでくる。


『ニャオオ――! 親父! 助けてくれ! 俺様の毛がこの餿水(残飯水)で漬け込まれちまう! この管の中でネズミが何匹死んでるんだよ、臭すぎて昨夜の紫河車の花彫酒まで吐きそうだぜ!』


謝必安(シャ・ビアン)が劇痛に責め苛まれ昏厥しそうな脳の奥底で。銜蝉(シェンチャン)の、貫通力が極めて高く、極致の崩壊と泣き声を帯びた鋭い意識の弾幕が、節操なく狂ったように画面を埋め尽くしていた。


阿奴(アヌ)の専用の騎獣と化したこの金色の肉塊は、今謝必安(シャ・ビアン)の背後にぴったりと張り付いて滑り落ちている。


体型が丸々と太りすぎているため、銜蝉(シェンチャン)の管壁での摩擦面積は常人をはるかに上回り、滑落の速度は謝必安(シャ・ビアン)よりも数分速かった。四本の短い脚を空中で絶望的にバタバタと動かし、ウワァァという凄惨な惨叫を上げている。


『黙れ! 口を固く閉じろ! もし管の中で吐きやがったら、後で肥溜めに突っ込んで洗ってやるからな!』謝必安(シャ・ビアン)は右腕の劇痛を強引に堪え、脳内で歯を食いしばって罵り返す。


銜蝉(シェンチャン)の崩壊とは対照的に。その背中に端座する銀猫の阿奴(アヌ)は、人を身震いさせるほどの高雅さと残酷さを示していた。


この完全に無重力で劇しく揺れる滑落の中で、阿奴(アヌ)のシルクの光沢を流転させる銀色の躯体は泰山のように安定している。


彼女の四本の細いピンク色の爪から、メスのように鋭い逆棘が猛然と弾け出した。この劇しく震える金色の肥肉から汚い泥水の中へ転げ落ちないよう、阿奴(アヌ)は躊躇なくその四本の利爪を、銜蝉(シェンチャン)の背中の分厚い脂肪層へ容赦なく突き刺した。ブスッという鈍い肉に食い込む音がした。


『アォォ――! この狂ったアマ! 刺し殺す気か! これじゃ殺人だぜ!』銜蝉(シェンチャン)は痛みに脳内で涙を散らし、落下速度が劇痛でさらに加速した。


『やかましい愚物め、その臭い口を閉じなさい。これ以上暴れるなら、直接背骨を断ち切るわよ』


阿奴(アヌ)の氷のように冷たく、高慢で微塵の温度も持たない意識が。極めて珍しく、二匹と一人の共有精神チャンネルで冷ややかに響いた。瞬時に銜蝉(シェンチャン)を恐怖で縮み上がらせ、惨叫すら強引に呑み込ませた。


そしてこの二匹の猫の十数歩後ろで。同じく極限の墜落に陥っているのは、鏡妖司(きょうようし)千戸(せんこ)沈無(シェン・ウー)だ。


謝必安(シャ・ビアン)の無力さとは異なり、この百戦錬磨の特務の頭目は、重傷を負っていても依然として自らの運命を掌握しようと試みている。


血染めの環首直刀を背後の鞘に死に物狂いで固定し、鞘の真鍮の護封全体を使って、傍らの滑りやすい青石の管壁へ容赦なく押し当てた。


金属と硬い青石が高速で摩擦し、ガガガという耳を劈く鋭鳴を爆発させる。暗闇の中、真鍮の護封と石板が摩擦して飛び散る微弱な火花の連なりすら微かに見える。


沈無(シェン・ウー)はこの自傷に近い物理ブレーキで落下の衝撃を緩めようとしたが。彼の身体の骨が見えるほど深い弩の擦過傷や刀傷が、この劇しい筋肉の緊張により再び裂けた。温かい鮮血が玄色の武術着に沿って湧き出し、瞬時に暗渠の寒気に温度を奪われる。


(シャ)拾遺(しゅうい)! このクソッタレの管は一体どこまで続くんだ!」沈無(シェン・ウー)は暗闇で歯を食いしばって怒号した。声が閉鎖された配管の中で幾重にも反響し、鼓膜を痺れさせる。


「聞くな! 深呼吸しろ――息を止めろ!」


謝必安(シャ・ビアン)の言葉が落ちた瞬間。


本来の狭く圧迫感のある管壁の摩擦感が瞬時に消え去った。


極度の無重力感が無形の巨手と化し、全員の心臓を猛然と鷲掴みにする。暗渠の出口に着いたのだ。


彼らは配管の末端から、虚空へ向かって激しく放り出された。


次の息。



ドッパァァン――という巨大な落水音が、この広大無辺な地下空間に炸裂した。


謝必安(シャ・ビアン)の身体が、骨を刺すように冷たく、数百年発酵した黒胡麻のペーストのように粘りつく水域へ重く激突した。


ここは、建康(けんこう)城全体の陽面のすべての罪悪、汚垢、法器の残骸、そして無尽の怨念が集まる「秦淮河の影」――鬼市(きいち)の周辺の沈殿した死水だ。


刺すような寒意が瞬時に青色の官服を貫通し、氷のように冷たい水流が容赦なく謝必安(シャ・ビアン)の口鼻へ流れ込む。水には腐った水草の屑、正体不明の生物の滑りつく脂肪、そして極致に達した鉄サビと屍臭が混ざっていた。


「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ――オェェッ!」


謝必安(シャ・ビアン)は水中で狂ったようにもがく。右腕から伝わる引き裂かれるような劇痛を強引に堪え、無事な左手と両足だけで死に物狂いで上方へ水を蹴る。


ついにバシャッという水しぶきの音とともに、頭がその粘りつく水面を突破した。


大口で貪欲に空気を呼吸する。たとえこの空気にも吐き気を催す腐敗の気息が充満していようとも。


劇しく咳き込みながら、口に流れ込んだ数口の生臭い黒水と胃酸を苦痛とともに吐き出した。


『ニャオオ! 助けて! 俺様は泳げねえ! この水臭すぎるぜ!』


遠く離れていない水面で、銜蝉(シェンチャン)の胸を裂くような泣き叫びが爆発した。本来は金の毬のようにフワフワだった長毛猫が、今や黒水に完全に浸透し、まるでスープに落ちた金色の巨大ネズミだ。水面で狂ったように四本の短い脚をもがき、バシャバシャと乱れた水しぶきを上げている。


一方の阿奴(アヌ)は。落水の最後の瞬間に、大妖レベルの恐怖の反応力を示した。


彼女は自分の毛一本にすら汚水を触れさせなかった。銜蝉(シェンチャン)が水面に激突する前の一息で、阿奴(アヌ)銜蝉(シェンチャン)の頭を跳躍台として踏みつけ、後ろ足で再び発力し、空中の風音を軽やかに踏んだ。


そして、水面に浮かぶ巨大で腐朽した棺の木板の上へ正確に跳躍したのだ。


カビの匂いを放つその腐れ木板の上に優雅に端座し。右前足の存在しない埃を舌で悠然と舐め取りながら、そのオッドアイの瞳で、黒水の中で狼狽してもがく謝必安(シャ・ビアン)銜蝉(シェンチャン)を、極度に冷漠かつ嫌悪感たっぷりに見下ろしている。


謝必安(シャ・ビアン)から五歩と離れていない水面が、再びザバーッという音とともに爆発した。


沈無(シェン・ウー)が片手で刀を握り、強引に水底から水を蹴って浮上してきた。この鉄漢の顔色は今や白紙のように青白い。暗渠の汚水が顎の線に沿って、彼の身体の裂けた傷口へ狂ったように流れ込んでいる。汚水感染がもたらす劇痛は、凌遅処死(生殺し)の刑にも劣らないはずだ。だが彼は歯を食いしばり、声一つ上げなかった。


「泳げ……あっちの浅瀬へ泳ぐんだ」


謝必安(シャ・ビアン)は顔の粘りつく黒水を拭い、充血した目を周囲の薄暗い光線に強引に適応させる。


無比に巨大な地下鍾乳洞の空間だ。


頭頂は数十丈の高さがあり、無数の鋭い鍾乳石が逆さにぶら下がる丸天井だ。彼らは今、死寂の地下湖の縁にいる。


湖面には無数のゴミが浮かんでいる。残破した紙人形、腐乱した名もなき水死体、砕けた粗陶の壺。そして微弱な、病的な凄惨な緑の幽光を放つ燐火だ。


それらの緑の燐火が水面を幽々と漂い、この暗黒に一筋の微弱で人を不安にさせる照明を提供している。


謝必安(シャ・ビアン)は左手で水を掻き、劇痛でほぼ麻痺した右半身を引きずりながら、極めて困難に、遠く離れていない黒い淤泥と砕石で堆積した浅瀬へ向かって泳ぐ。


沈無(シェン・ウー)が背後に続く。彼は水面で狂ったように犬掻きをしている銜蝉(シェンチャン)の運命の後頭部の皮をついでにむんずと掴み、濡れそぼった雑巾でも提げるように、この肝を潰した太猫を岸辺まで引きずっていった。


謝必安(シャ・ビアン)の黒靴がついに滑りやすい青苔と腐臭のする淤泥に覆われた浅瀬を踏んだ時、彼は最後の力をほぼ使い果たしていた。


腐ったリンゴと鉄サビの匂いを放つ泥地に尻餅をついてへたり込み、大口で喘ぎ続ける。


沈無(シェン・ウー)もよろめきながら浅瀬に上がり、手の中で黒水を滴らせ続け、完全に抵抗を放棄した銜蝉(シェンチャン)を無造作に泥の中に投げ捨てた。


刀を杖にして地面を突き、片膝をついて劇しく咳き込み始める。咳をするたびに、黒水の混ざった血の糸が数本飛び散った。


阿奴(アヌ)はあの腐朽した棺の板に乗り、水流に沿ってゆっくりと岸辺へ漂い着いた。優雅な猫足で、淤泥のない砕石を慎重に選んで踏み、最後には比較的乾燥した巨大な青石の上に跳び乗り、引き続き高みからこの三人の狼狽しきった濡れ鼠を見下ろしていた。


(シャ)拾遺(しゅうい)……」沈無(シェン・ウー)が呼吸を整え、血走った両目を上げる。緑の燐火に照らされて無比に獰猛に見える周囲の鍾乳石の柱を見回す。「ここが、お前の言っていた……陣脈の極陰枢紐の所在地か?」


「正確に言えば、俺たちは今、この巨大な陣法の底層の汚水溜めに落ちただけだ」


謝必安(シャ・ビアン)は左手でまつ毛にぶら下がる生臭い水滴を拭い、視線をあの死寂の地下湖を越え、さらに奥へ。凄惨な緑の瘴気と強烈な腐ったリンゴの匂いに包まれた巨大な建築群の影へ向けた。


「ここは鬼市(きいち)の最底層の外郭。つまり秦淮河の水脈の最も陰冷で、最も汚らしい沈殿区だ。国師が敷いたあの『天を窃み柱を換う』風水の大陣が、城南のあの十二の権貴の五百の命を圧力テストとして吸収した後、溢れ出た余剰の(さつ)気はすべて、水脈に沿ってここへ流れ込む」


謝必安(シャ・ビアン)はゆっくりと立ち上がる。右腕の骨の中から再びジューッという高温の抗議音が伝わってくるが、青白い顔には恐ろしいほどの冷静さが透けている。


「皇帝と国師を天高く吹き飛ばすあの『枢紐』を見つけるには、俺たちはこの廃墟を抜け、ひたすら上へ向かって歩かなければならない。この鬼市(きいち)で最も陰気が重く、最も欲望が濃烈な核心の陣の目へ」


沈無(シェン・ウー)は顎の血水を拭い、ゆっくりと身体を真っ直ぐに起こした。その環首直刀の刃には、まだ鉄浮屠の鮮血が残留している。


「核心の陣の目はどこだ?」


謝必安(シャ・ビアン)が左手を上げる。遠くの瘴気の奥、微弱な赤い紗の提灯の光が微かに透ける高くそびえる楼閣の輪郭を指差す。その輪郭は暗闇に陣取り、血の池のような大口を開けて活人を飲み込もうと待ち構える妖艶な巨獣のようだ。


「あそこだ」謝必安(シャ・ビアン)の声は一筋の温度もなく冷たい。「俺たちがついさっき、一万四千両の銀を支払って重度な保護管理権を買い取った場所……忘憂閣(ぼうゆうかく)だ」


この言葉を耳にして。沈無(シェン・ウー)の普段は安定している手が微かに震えた。


落雷に打たれたようにその場で硬直する。両目が謝必安(シャ・ビアン)を死に物狂いでロックした。その目に普段の冷静さはなく、ただ無声の詰問だけがあった。






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