第19話 大荒残巻の中の血肉の陣眼
【巻ノ一・残頁拾玖:『大荒異聞録』残巻第三十七頁・批註】
「天を盗み柱を換える者、万民の血肉を薪柴となし、地脈の極陰の気を引きて、代わって天罰を受けしむ。これ乃ち逆天の凶陣なり。陣を布く者は必ず万劫不復に遭い、死後の魂魄は九幽に貶とされ、永遠に業火の煎熬を受くべし。
傍らに劣悪な朱砂で書き殴られた、極めて狂妄な筆致の批註あり:『戯れ言を。薪柴が十分に積まれ、十分に燃え盛っていれば、天道のあの腐った帳簿も俺様の頭上には回って来ねえよ。』」
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謝必安は、書案の真正面で極致の氷寒と腐った林檎の匂いを放っているあの護城河の盲盒にすぐには触れなかった。
極度の宿酔と右腕の高温過負荷の二重の折磨を受けた彼の身体は、今やバラバラになりそうなボロい木車のさながらであり、早急に高オクタン価の「燃料」を補充しなければ、平穏な座位を保つことすら不可能な状態だった。
大魏朝廷の六部九卿の官僚たちは、密かにここを「建康城第一の瘟神の殿堂」と呼んでいる。
謝必安は重い足取りを引きずり、山のように積まれ、濃烈な黴の臭いを放つ廃棄された公文書を迂回した。一歩歩くごとに右側の肩甲骨の筋肉が引っ張られ、数千万本の錆びた鋼の針が同時に骨髄に突き刺さるような、絶え間ない劇痛を引き起こす。
彼はゆっくりと部屋の最も陰暗で湿った隅へと歩み寄った。陰影に完全に飲み込まれたその片隅には、埃を被った黒泥の酒甕が五つ、整然と積まれていた。
これは司天監の袁監正が、以前彼を丸め込んで城南の「食屍古井」を処理させた際、約束した「外勤手当」である。戸部の、一定温度の暖房の効いた部屋に座り、毎日象牙の算盤を弾くことしか知らないケチな役人どもは、「実物無し」の一言で容赦なく彼の今月の俸禄を握り潰したが、西域から進貢され、本来なら皇室専用であるはずのこの五甕の極品の葡萄酒だけは、そっくりそのまま雑項科の地下室へと届けられていた。白馬寺の大仏を解決した特別報酬については、謝必安はとうに踏み倒されることに慣れきっていた。幸いにも酒の備蓄があるためそれほど焦ってはいない。どうせ稼いだところで、青楼のツケには永遠に追いつかないのだから。
この腐朽した大魏の官界において、銀子は貪墨(横領)される可能性があっても、「皇室の息吹」を帯びた御賜の品にだけは、下っ端の官僚たちも流石に軽々しく手を出す勇気がないのだ。
謝必安は完好な左手でその中の一甕を持ち上げた。この黒泥の酒甕は手に持つと極めて重く、表面にはまだ地下酒蔵特有の氷のように冷たい湿気を帯びていた。彼は片手で甕の底を支え、親指に猛然と力を込めると、「ポン」という鈍い音と共に、上に封をされていた、すでにいささか干からびてひび割れた黄泥の蓋を弾き開けた。
熟れきった漿果が腐乱・発酵したかのような濃郁で醇厚な酒香が、尿のアンモニア臭が充満する班房の中に瞬時に強勢に拡散した。この酒香の中には、西域の荒漠特有の粗野な泥土の気息すら微かに混じっている。
彼は頭を仰ぎ、甕の口を直接干からびて皮の剥けた唇に当て、喉の奥から「ゴクン、ゴクン」という貪欲な嚥下音を鳴らした。
猩紅色の酒液が彼の口角を伝って滑り落ち、灰塵と血の染みにまみれた青色の官服の上に滴り落ちる。それはまさに死気沈沈たる布地の上で妖艶に咲き誇る血の梅のさながらであった。西域の葡萄酒特有の酸渋さと極めて高いアルコール度数が、氷のように冷たく鋭利な火線と化して、彼の食道を粗暴に貫き、宿酔で痙攣する胃袋へと容赦なく叩き込まれた。
アルコールが血に溶け込み、骨血の奥深くに隠された「酒狂」の体質が瞬時に強引に喚醒される。
謝必安は目を閉じ、濃烈な果実香を帯びた酒気を長く吐き出した。ほぼ同じ瞬間に、粗布で首から死に物狂いで吊り下げられた、生鉄の棒に匹敵するほど硬直した彼の右腕の皮下から、突如として「ジジッ」という微細な沸騰音が伝わってきた。
今まさに経脈の奥深くに隠された高温が狂ったように反撃を始めている。骨髄の隙間に残留していた「窯温」と玉心毒気が、アルコールという極致の「冷却液」による狂気じみた中和の下で、劇烈な衝突を爆発させた。謝必安は痛みに低い呻き声を漏らし、惨白な額には瞬時に細密な冷や汗がびっしりと浮かんだ。だが、今にも彼自身を内側から徹底的に黒焦げにしかねない恐怖の熱力は、どうにかアルコールによって死に物狂いで圧し伏せられたのだった。
『オヤジ……俺に隠れて独り占めかよ? その真っ赤な水、すっげえいい匂いがするぜ……一口舐めさせろよ、ほんの一口でいいからよぉ……』
甲高く、濃重な鼻音を帯びたねっとりとした声が、機を見計らったように謝必安の脳の奥底で響いた。
先ほどまで廃棄された公文書の山の中で腹が痛いと泣き喚いていたこの食いしん坊の太った猫は、今や酒香に引かれ、音もなく謝必安の足元に擦り寄ってきていた。銜蝉は昨夜城北で玉心の毒気を狂ったように過剰摂取したため、今も真ん丸な腹が高々と隆起しており、まるで今にも爆発しそうな金色の革毬のようだった。
この甘えん坊は遠慮する素振りも見せず、その毛むくじゃらの金色の巨大な頭を謝必安の灰塵まみれの黒靴にぴったりと擦り付け、狂ったように何度も擦り寄せながら、あまつさえ厚顔無恥にもその場に寝転がり、パンパンに膨れた腹をさらけ出した。彼の喉の奥からは「ゴロゴロ」という巨大な震動音が発せられ、一対の琥珀色の猫の目には、諂いとあの紅色の液体に対する極度の渇望がこれでもかと書き込まれていた。
『あっちへ行け。こいつは俺の命を繋ぐ薬だ。飲みたきゃ、護城河へ行って氷の欠片でも舐めてこい』
謝必安は容赦なく脳内で冷ややかに言い返した。彼は爪先でこの邪魔な金色の肥肉を軽く撥ね退けたが、それでも極めて正直にしゃがみ込み、左手でそのパンパンに膨れた腹を二回揉んでやった。
その後はもうこのデブ猫を相手にするのを億劫がり、彼は葡萄酒の甕を提げて、平穏な足取りで書案の真正面へと戻り、塗りの剥げた太師椅に重く腰を下ろした。
太師椅の四本の木脚が青磚の床で摩擦し、「ギシッ」と負荷に耐えかねた呻きを上げる。
アルコールで下地ができたことで、謝必安の眼差しはもはや散漫ではなくなった。彼は酒甕を卓の角にドンと置き、左手をゆっくりと書案の真正面にあるあの暗漆塗りの木箱へと伸ばした。
それは人の頭ほどの大きさの四角い木箱で、表面には劣悪な黒漆が塗られ、今その漆面には薄っすらと暗紅色の血糸を帯びた氷霜の層が結びついていた。
いささかの躊躇もなく、謝必安の左手の指が猛然と木箱の錆びた銅の錠前を弾き開けた。「ガチャン」という清澄なからくりの跳ねる音が鳴り、木箱の蓋が徹底的に捲り上げられた。
極端に濃烈な腐った林檎の甘い生臭さが、鼻を刺す鉄錆の匂いを精準にブレンドさせ、まるで百年間閉じ込められていた怨毒の凶獣が咆哮しながら木箱の中から衝き出してきたかのように、瞬時に班房のあらゆる片隅を充満させた。
『オエッ――!』
銜蝉が脳内で極めて真に迫った乾嘔を発した。先ほどまで甘えていた肥満した巨体が感電したかのように弾丸スタートを切り、転がるようにして最深部の書類棚の下へと潜り込み、狂ったように震える金毛の尻尾だけを露出させて、脳内で崩壊したように大叫びした。『オヤジ! お前一体どんなクソ溜めを開けやがったんだ! 本喵の目が燻されて潰れちまう!』
ずっと高所に蟠踞し、泰山が眼の前で崩れようとも顔色一つ変えない高冷な銀猫の阿奴でさえも、この時ばかりは猛然と立ち上がった。彼女のオッドアイの瞳孔は瞬時に二本の危険な細い線へと収縮し、全身の銀毛を根元から爆発するように逆立て、木箱の方向へ向かって「シャーッ」と極端に嫌悪する警告音を発した。
謝必安は二匹の猫の過剰反応には構わなかった。彼の視野は、木箱の中の代物によって完全に釘付けにされていた。
木箱の底に横たわり、血を帯びた氷霜の層に覆われているのは、およそ赤子の拳ほどの大きさの、構造が極めて複雑で畸形な法器だった。
だが謝必安の目には、この代物は粗悪の極みに達した「閥門部品」に近しいものに見えた。
それは半分が灰白色の粗雑な陶磁器で、表面には不規則な窯割れの紋様がびっしりと走っており、もう半分は鮮活な、あまつさえ極めて緩慢に蠕動し続けている暗紅色の血肉だった。陶磁器の部分は精密な歯車の形状に磨き上げられ、血肉の部分は何らかの大型生物の心臓弁膜のようだった。
両者は無数の極細の、黒ずんだ血管によって強引に縫い合わされていた。それらの血管は単なる縫い糸ではなく、依然として微弱な頻度の拍動を保っており、さながら一群の貪婪な水蛭のごとく陶磁器の縁に死に物狂いで食らいつき、血肉の養分を生命を持たない陶磁器の中へと送り込もうと試みていた。
さらに謝必安を悚然とさせたのは、この血肉の法器の真ん中に、混濁しきって不純物と気泡に満ちた琉璃の破片が嵌め込まれていたことだ。その破片の中には、極めて微弱でありながら極致に至るまで純粋な「玉心毒気」が幾筋か封じ込められていた。気泡に満ちたその質地は、施術者の手腕が極度に粗雑であり、完全に材料の許容限界を無視した状況下で暴力的に成形されたことを証明していた。
「こいつはさしずめリバースエンジニアリングで生み出された粗悪な模造品だな……」
謝必安は心の中で冷ややかに現代の言葉を吐き出した。これは彼の「錯金琉璃」の手技を模倣し、強引にエネルギーを貯蔵あるいは転送しようと試みた製品である。作りは極度に粗悪で、嘔吐を催すような邪教の祭祀感すら帯びていた。
彼は微かに目を細め、左手で卓上の錆びついたペーパーナイフを取り上げ、肉と骨の歯車を軽く弾いてみた。刃先が陶磁器と衝突し、「キン」という鈍い音を発する。刃先で押し潰されるに伴い、その血肉の弁膜からは一滴の粘稠な黒血すら滲み出した。
謝必安はペーパーナイフを下ろし、懐に手を差し入れ、表紙が破れ果てて角が擦り切れて毛羽立った古書を引っ張り出した――『大荒異聞録』だ。
これは彼が秦淮河の底の鬼市の露店からくすねてきたボロ本である。銜蝉は子供騙しの神怪小説を拾ってきたと彼を笑ったが、謝必安だけは密かに、この代物がこの見鬼な時代における唯一の「指針」になるかもしれないと感じていた。何しろこの本は、師匠がかつて特に注意を払うよう交代っていたものなのだ。
彼は秋の枯れ葉のさながらに脆い黄ばんだ紙頁を片手で捲り開いた。「ササッ」という紙擦れの音に続き、彼の視線は幾列もの難解で晦渋な行書と狂草の中を素早く掃き清めるように走った。
この本には無数の荒誕不経な妖異の陣法と失伝した邪術が記載されており、字の行間からは濃烈な防腐香料の匂いが透けていた。
ついに、彼の指は残巻の第三十七頁で止まった。
その頁にびっしりとした文字の解説はなく、ただ劣悪な朱砂で輪郭を描かれ、すでに黒ずんだ変色を起こしている詭異な挿絵が一つあるだけだった。図には開腹され内臓を抉り出された巨大な青銅の容器が描かれ、容器の胸腔内には心肝脾肺の代わりに、木箱の中の代物と全く同じ血肉の法器がびっしりと詰め込まれていた。
そして挿絵の傍らには、極めて草書で、あまつさえ幾分の狂気を帯びた筆致で、たった四つの血文字が書き記されていた。
「窃天換柱」
謝必安はその四文字を見つめ、再び首を垂れて木箱の中の、粗雑な陶磁器と生きた人間の血肉で強引に縫合された残次品を一瞥した。彼は猛然と頭を仰ぎ、甕に残っていた西域の葡萄酒を大口で喉に流し込んだ。
氷のように冷たい酒液が胃の中に叩き込まれたが、彼の眼底で徐々に燃え上がりつつある狂気と悚然を圧し下げることはできなかった。
無数の穢れを処理してきた古参の「拾遺」として、彼は誰よりも「等価交換」の鉄律を熟知している。
「皇帝のジジイはもう完全に腐りきってる、だから三日後の冬至の大典で、俺の『錯金琉璃』を使って自身を不朽の金身に焼き上げろと強要してきたんだが……」
謝必安は地下班房の堅く閉ざされた古い木扉を死の如く見据え、口角に濃烈な酒気を帯びた残酷な冷笑を浮かべた。彼の声は、砂利が鉄鍋の底で無情に摩擦するさながらに嗄れ果てていた。
「だが、奴のあの腐朽した凡人の皮袋じゃ、琉璃化の瞬間に生じる極端な反発と膨大な煞気に到底耐えきれねえ。国師のあの老いぼれペテン師は、誰よりもそのことを分かっているはずだ」
現代人である謝必安の認識においては、これは膨大かつ極度な危険を伴う地下排熱システムである。だがこの時代の現実においては、これは残酷の極みに達した風水殺陣であった。
「聞こえよく言えば祈福の祭壇。あの老いぼれペテン師は、恐らく建康城地下の水脈を利用して、全城を覆う『窃天換柱』の風水大陣を敷きやがったんだ! 大典という名目を隠れ蓑にして、建康城全体の数十万の生きた人間すべてを、皇帝の身代わりに反発を背負う『身代わりの陣眼』と『血肉の消耗品』にしようって魂胆だ!」
謝必安は左手を伸ばし、ペーパーナイフに向かって酒霧を一口吹き付けると、そのまま刃先をあの肉と骨の法器の真ん中へと容赦なく突き立てた。刃先が血肉を刺し貫き、「プチュッ」という鈍い音を発する。内部のあの一縷の玉心毒気は瞬時に潰散し、一筋の黒煙と化して空気中へと消え去った。
謝必安はペーパーナイフを「カチャン」と卓に投げ捨て、太師椅の背もたれに寄りかかり、胸郭を劇烈に上下させた。
城北の貧民窟が突如として煞気を爆発させたのも頷ける。
護城河の暗渠から、皇室の玉心毒気に染まった血祭りの法器が引き揚げられたのも頷ける。
「皇帝の長生」を最終目的とし、満城の百姓を燃料とするこの巨大な邪陣は、すでに建康城の地下で全面的に稼働しているのだ。あまつさえ陣法が吸納する煞気の負荷が高すぎたために、不可逆の崩壊の兆候すら現れ始めている。
そしてこの彼、謝必安こそが、三日後に、この巨大な肉挽き機のメインスイッチを自らの手で起動しなければならない死刑執行人なのである。
まさにその時、雑項科の外のあの幽暗で長く狭い通路から、突如として急促かつ極度に重々しい足音が伝わってきた。
ドンッ――!




