第13話 間違った手を上げた僧
【巻ノ一・残頁拾参:刑部・指名手配書(取り下げ済み)】
「妖僧・普渡。酒を命より愛し、徒党を組んで博打を打ち、幾度も皇宮の門前で所構わず……寝る。
罪名:大不敬。
備考:捕縛失敗。当該犯人は昨日すでに円寂した。死因は……酒の飲み過ぎによる笑い死に?」――『刑部・陳年旧記録』
【司天監内部メモ】
「舎利子」――世間では功徳の結晶と見なされるが、口の悪い雑項科の人間はこれを「硬い骨」と呼ぶ。だが彼らも認めている。本物の舎利は、お経よりも早く邪を鎮めると。
†
建康城外の乱葬崗は、今夜は格別に賑やかだった。
もちろん、この賑やかさとは生きている人間が多いという意味ではなく、風が強いということだ。
風の音が枯れ木の林の中を乱れ飛び、「ヒュオォォ」と奇怪な叫び声を上げている。それは鬼の泣き声というよりは、歯の抜けた老婆たちが集団で罵り合っているかのように聞こえた。
謝必安は紙銭と腐った木材が散乱する山道を、足元を取られながら歩いていた。口には狗尾草をくわえ、手には道端の酒場でツケで買ってきたばかりの粗悪な焼刀子を提げている。
「なぁ、謝拾遺」
沈無が後ろからついてくる。手に持つ火打ち石の火が、風に吹かれて明滅を繰り返していた。
「我々は本当に高僧を探しに来たのか?」
沈無は、野犬に掘り返された墓穴や、地面をごろごろと転がる無縁仏の骸骨を眺め、心の中の疑念を頂点に達させていた。
「こんな場所……幽霊でさえ住みたがらないだろう?」
「まともな和尚は当然こんな場所には住まないさ。あいつらは大雄宝殿に住んで、線香の供養を楽しむからな」
謝必安は、土饅頭のような一つの孤墳の前で立ち止まり、酒樽を地面にドンと置いた。鈍い音が響く。
その時、彼のゆったりとした狐の毛皮の襟元から、フワフワの銀色の小さな頭が覗いた。彼についてきた異猫「阿奴」だ。
この泥まみれで、砕けた骨と腐臭に満ちた乱葬崗は、明らかにこの銀猫の許容ラインを大きく踏み越えていた。
阿奴の透き通った砕いたダイヤモンドのような瞳に、極めて人間臭い嫌悪の色が閃いた。彼女は優雅に前足を伸ばすと、近づこうとしていた緑色の鬼火を「パァン」と一撃で粉砕した。まるで吐き気を催すハエでも叩き落とすように。
その後、彼女は自分の肉球を一秒たりとも外の空気に触れさせたくないかのように、ごく自然に謝必安の清潔な襟元でゴシゴシと二回こすりつけ、そこには存在すらしない「陰気な泥」を拭き取った。
すべてを終えると、阿奴は気高く顎を上げ、ゴミを見るような目で周囲の孤魂野鬼を冷ややかに一瞥し、自らの高貴な肉球を決して地上の汚物に触れさせまいと、再びその身体を矜持高く謝必安の懐へと縮めた。
「だが、俺たちが探しているのは、『まともじゃない』奴なんだよ」
謝必安は阿奴を意に介さず、その墓を指差して沈無との会話を続けた。
墓石はない。ただ一枚の腐った木の板が土に突き刺さっているだけだ。そこには歪んだ字が刻まれており、その筆跡はまるで数匹のミミズが喧嘩しているかのような狂草だった。
『酒あらば門を叩け、酒なき者は失せろ。勝てば仏となり、負ければ鬼となれ。』
沈無の口角が引きつった。この高僧の墓のセンス、地下カジノの入り口と見事に互角ではないか。
「この大師の法号は『普渡』」
謝必安は墓の土盛りにドカッと座り込み、その腐った木の板を叩いた。
「当年、国師が都に入った時、街中の和尚が土下座して出迎えたが、彼だけは城門の前に立って、国師の馬車に向かって……特大の屁をこいてやったんだ」
「それから?」沈無が問うた。
「それから彼は一躍有名人になったのさ」謝必安は肩をすくめた。
「国師に三千里も追いまわされ、最後にこの乱葬崗に逃げ込んで、自分で自分のことを笑い殺したんだ」
そう言いながら、謝必安は酒樽の封泥を叩き割った。鼻を刺すような酒の香りが瞬時に広がった。
「大師! 開局だ! 供物を届けに来たぞ!」
謝必安は墓に向かって大声で叫び、懐から三つの象牙の賽子を取り出すと、欠けた椀の中に投げ込んだ。
カラカラカラという甲高い音がして、賽子が椀の中で猛スピードで回転する。
沈無が「狂っているのか」と言いかけた瞬間、足元の地面が「ドォン」という音と共に猛烈に震動した。
続いて、枯れ枝のように痩せこけ、青灰色を呈した手が、突然墓の土盛りの中から突き出し、あの焼刀子の樽をガシッと掴み取った。
「酒! 良い酒だ! 水で薄めた馬のションベンだが、孟婆湯よりはマシだ!」
割れ鐘のようなしわがれ声が、地下から幽々たる響きを伴って伝わってきた。
直後、土がめくれ上がり、ボロボロの袈裟を着て、頭に数本の雑草を乗せた骸骨が、まるでモグラのように墓の中から這い出してきた。
それ――あるいは彼――は、完全には腐乱していなかった。
顔にはまだ数両の干し肉がぶら下がり、眼窩の中では二つの緑色の鬼火が明滅している。手にはまだボロボロの蒲扇をしっかりと握りしめていた。
「おや? お前か、小僧?」
狂和尚・普渡は首を傾げ、その鬼火の目で謝必安を上下に値踏みした。
「この前ワシに巻き上げられた下着、まだ買い戻してないだろうに。今日また死にに来たのか?」
沈無は無意識に謝必安の下半身を見た。
「ゴホン」
謝必安は顔色一つ変えなかった。
「大師、昔の話はいい。今日は新しい友達と、デカい商売を持ってきたんだ」
「友達?」
普渡は首を回し、沈無を見た。
沈無は全身を寒気が舐め回すのを感じたが、無理に拱手した。
「後輩たる鏡妖司の沈無、お見知り置きを……大師」
「鏡妖司?」
普渡の数本しか歯がない口が、嘲笑の弧を描いて裂けた。
「朝廷の犬か。何だ、国師のクソジジイがついにくたばったか? ワシに超度を頼みに来たのか? もしそうなら、和尚は金など取らん。自腹を切ってでも奴の墓石の上で夜明けまで踏み鳴らしてやるわ」
彼が「国師」という二文字を口にした時、遠く皇城の方角の雲が突然蠢いた。まるで見えざる巨手に強く握り潰されたかのように。
「国師は死んでない」
謝必安は首を振った。
「だが奴は、もう少しで皇帝をキョンシーに練り上げちまう。俺たちは……皇帝を燃やすつもりだ」
「皇帝を燃やす?」
普渡は一瞬呆気にとられた。
直後、彼は天地を震わせるような狂笑を爆発させた。
「ハハハハハ! 皇帝を燃やす! いいぞ! 骨がある! この和尚よりも肝が据わっとるわ!」
彼はあまりにも激しく笑いすぎたため、「ガコン」と音を立てて顎の骨が外れ落ちてしまった。彼は慣れた手つきでそれを拾い上げ、まるで積み木のようにカチャッとはめ直した。
「言ってみろ、和尚に何をしてほしい?」
普渡は酒を煽った。酒は顎の骨の隙間から漏れ出し、破れた袈裟に滴り落ちたが、彼は全く気にしなかった。
「一つ、借りる」
謝必安は一本の指を立てた。
「舎利子を一つ。最も硬く、最も臭く、最も邪気を抑え込めるヤツだ」
普渡の笑い声がピタリと止んだ。
彼はあの幽玄な緑色の目で謝必安を死の如く見据えた。周囲の温度が瞬時に氷点下まで下がり、乱葬崗の風が止み、虫の声さえも消え失せた。
「小僧」
普渡の声は氷のように冷たくなった。
「自分が何を言っているのか分かっているのか? ワシは生臭坊主だが、この骨は仏祖様から頂いたものだ。ワシの骨をバラす気か?」
「バラすんじゃない」
謝必安は退くどころか、さらに数分身を乗り出した。その目には悪徳商人特有の狡猾さが透けていた。
「俺が欲しいのは、あんたの……『執念』だ」
「当年、あんたは国師を三日三晩指差して罵り続け、最後は息が続かずにこの乱葬崗で憤死した。あの時の『気』は、まだ残ってるだろう?」
謝必安は普渡の右手を指差した。
「ここにな」
普渡は沈黙した。
彼は俯き、自分の右手を見つめた。
その手の他の指はすべて腐り果てて白骨化しているが、唯、中指だけが違っていた。
その中指の骨は不気味な金赤色を呈し、透き通り、折れても決して曲がらないような暴戻の気配を放っていた。
それは彼が死の直前、皇宮の方角に向かって立てた、最後の一本の中指だった。
沈無はその指の骨を見て、急に笑えなくなった。
あれは粗俗などではない。あれは一人の人間が、命を懸けて遺した一つの「呪い」なのだ。
これは慈悲の舎利ではない。これは憤怒の舎利だ。
「これに目をつけたか?」
普渡はその中指を掲げ、面白そうな口調で言った。
「こいつは和尚の宝でな。これがあるからこそ、ワシはこの乱葬崗で王を気取れるし、黒白無常でさえワシの魂を引っ張りに来られないんだ」
「言い値で買うぞ」
謝必安はあの火精と、鮫人の涙の小瓶を取り出した。
「俺たちの『琉璃大典』には、大トリが欠けてるんだ。もしあんたのこの中指を放り込めば、それは国師に対する最大の侮辱になるぜ」
「考えてもみろよ」謝必安は言葉巧みに誘い込んだ。
「国師が血眼になって練り上げた皇帝が、最後はあんたの立てた中指で鎮圧されるんだ。この話が世間に広まったら……」
「ヒヒ……ヒヒヒヒ……」
普渡の目の中の鬼火が激しく踊り始めた。彼は明らかに、このブラックユーモアに満ちた提案に心を動かされていた。
「商談成立だ!」
普渡は大喝し、猛然と右手を突き出すと、もう片方の手でその金赤色の中指を掴み、力任せにへし折った。
バキッ!!
心を震わせるような乾いた音が響いた。
普渡の眼窩の鬼火が猛烈に暗くなった。まるで誰かが彼の魂の一角を無理やり引き裂いたかのように。
彼は、一生をかけて修練した自らの「中指舎利子」をへし折ったのだ。
「持って行け!」
彼はまだ体温(冷たいが)の残る指の骨を謝必安に向かって投げた。
「国師のクソジジイに伝えておけ! これが和尚から奴に奢る最後のディナーだとな! この指は、ありとあらゆる『不服』を特効で叩き直すぞ!」
謝必安は誠心誠意その指の骨を受け取った。手に持つと極めて重く、驚くほど熱かった。肌を焼くのは火の光ではない。それはほぼ実体化した、すべてを焼き尽くすほどの「憤怒」だった。
嫌悪感を抱きながら謝必安の懐で狸寝入りをしていた阿奴が、突然「シュッ」と半身を乗り出した。
その高慢で気だるげなオッドアイの瞳孔が、瞬時に二本の危険な細い線へと収縮した。
この極度に偏食で、「大妖の内丹」しか口にしない銀猫にとって、高僧の生涯の修為と暴戻の気が凝縮されたこの「中指舎利子」は、この世に二つとない極上の珍味に他ならなかった。
彼女は一切の焦燥の声を上げず、残像しか見えないほどの優雅な速度で猛然と前足を伸ばし、「パシッ」と正確に、謝必安が指の骨を握る手首を押さえ込んだ。
鋭い銀色の爪がわずかに弾け出し、拒絶を許さない傲慢さで、この「最上級の内丹」を我が物にしようと試みた。
「こいつは火気が強すぎる。お前のそのお上品な胃腸じゃ消化しきれねえよ」
謝必安は仕方なくため息をつき、指を曲げて「トン」と軽く阿奴の額を弾いた。
阿奴は痛みに耐え、極めて不本意そうに爪を引っ込め、喉の奥から極端に見下すような「フン」という鼻声を漏らした。
彼女は、人間のケチな本質を見透かしたような目で謝必安を冷ややかに一瞥すると、気高く顔を背け、爪に残った一糸の暴戻の気を優雅に舐め取った。そして再び襟の奥深くへと縮み込み、フワフワの後頭部だけを謝必安に向けた。
まるで「くれないなら結構。どうせここの空気はデブの銜蝉しか喜ばないくらい臭いんだから」とでも宣言するかのように。
「大師のご成全に感謝する」
謝必安は仕方なく阿奴を撫で、それから掌がその怒りで火傷しそうになるのを感じながら、指の骨を慎重にしまった。
「失せろ! 和尚の酒の邪魔をするな!」
普渡は手を振り、あの焼刀子の樽を抱え込むと、一目散に墓の土盛りの中へ潜り込んでいった。
「覚えとけよ! 燃やす時は火を強くしろ! 和尚の顔に泥を塗るんじゃねえぞ!」
地下から声が響き、ゴクゴクと酒を飲む音が続いた。
謝必安と沈無は墓の前に立ち、顔を見合わせた。
「これぞ真の高僧だな」謝必安は感嘆した。
彼は胸元を軽く叩いた。そこには世を驚かせる四つの材料が収まっている。
・火精(人を喰う龍窯より)
・龍脈の廃渣(赤字の国庫より)
・鮫人の涙(虐殺された希望より)
・中指舎利子(狂和尚の憤怒より)
「火、土、水、金……揃ったな」
謝必安は長く息を吐き出したが、その直後、彼の顔色が突如として蒼白になった。
「キィィィーーン」という鋭い耳鳴りが強烈に襲いかかってきた。まるで数百匹のハエが同時に脳髄へ潜り込んできたかのようだ。
彼の身体がふらつき、あの琉璃の右手が突然光沢を失い、死灰のような色に変わった。同時に、あの金色の線が狂ったように手首を伝って駆け上がり、瞬時に前腕全体を覆い尽くした。
「謝拾遺!」
眼の早い沈無がガシッと彼を支えた。「どうした!?」
「前借りしすぎた……」
謝必安は苦笑し、全身の力が抜けて沈無にもたれかかった。まるで一灘の泥のようだ。
「一日の間に三ヶ所も駆け回り、琉璃の手を三回も使い、おまけにこんなにたくさんの『汚いモノ』を持ち歩いた……この皮袋が限界らしい」
彼はあの死灰色の右手を掲げた。そこからは、風化した石のように、絶え間なく破片がボロボロとこぼれ落ちていた。
「修理しねえと……」
謝必安の声は次第に小さくなり、瞼は鉛の塊をぶら下げたように重くなった。「修理しなきゃ……ダメだ……」
「どこで修理する!? 司天監に戻って御医を呼ぶか?」沈無が焦って言った。
「御医? あのヤブ医者どもは気休めの薬しか出せねえよ」
謝必安は白目を剥き、最後の力を振り絞って、建康城で最も繁華で、最も灯りの明るい通りを指差した。
「行くんだ……忘憂閣へ」
「蘇小小を……探せ……」
その言葉を言い終えると、謝必安はガクリと首を垂れ、完全に気を失った。
沈無はその場に呆然と立ち尽くし、腕の中で昏睡し、いまだに手から破片をこぼしているこの男を見下ろした。そして遠くにある、脂粉の匂いが立ち込める紅灯区を見やった。
「またあの女か?」
沈無は歯を食いしばった。前回あそこで見た荒唐無稽な光景を思い出したようだ。
「青楼を医館にし、花魁を医者にするとは……謝必安、貴様の命は遅かれ早かれ、女のベッドの上で終わるぞ」
沈無は悪態をつきながらも、謝必安を肩に担ぎ上げた。口では罵りながらも、その足取りは止まらなかった。
「狂人め。どいつもこいつも狂人だ」
彼は謝必安を背負い、大股で山を下っていった。月光が二人の影を長く引き伸ばし、それはまるで逃げ惑う二つの孤魂野鬼が、紅塵の中で最も汚らわしく、そして最も優しい金食い虫の巣窟へと向かって疾走しているかのようだった。




