第107話 六根清浄《ろっこんしょうじょう》
【巻ノ二・残頁壹百零柒:『大魏刑獄志・妖道籍』残巻】
「凡そ九嶷の外道、魂を抽き骨を鎖すを能とし、血肉を以て異器を飼煉す。法成るの日、鬼哭神号し、地脈これが為に焦腐す」
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駆け出す直前、謝必安は現場で足手まといにならぬよう肥満猫を蘇小小に預けようとしたが、彼女は首を横に振った。「私には身を守る手立てがあるわ、連れていきなさいな。どうせ皮も肉も分厚いのだから、いざという時は、二、三発くらいなら盾代わりになるでしょう」
懐の銜蝉が大口を開けて抗議する。『俺様はそこまで役立たずじゃねえぞ!』
蘇小小は謝必安を見つめ、何か言いかけたが、最後は小さく鼻を鳴らした。「薄情者……気をつけなさいよ」
謝必安は頷いてそれ以上は語らず、猫を懐へねじ込むと、二師兄と共に山門へ向かって走り出した。
別院の潜り戸はすでに半ば叩き折られ、周囲は目も当てられぬ惨状と化していた。 敷き詰められた赤絨毯は黒褐色の血を吸い、泥のようにぬかるんでいた。普段は深窓に暮らす貴婦人や侍女たちが顔面を蒼白にし、回廊の石段の影にへたり込んでいた。棲霞寺の武僧十数名が伏魔印を結んで女眷を囲み、爪痕と血に塗れた僧衣を揺らしながら必死に経文を唱えているが、その足取りは目に見えてふらついている。
地には腕をもがれた僧侶や護衛が倒れ、中には胸を叩き潰されて息絶えた者もいた。生き残った近衛兵数名が膝をつき、両手で耳を固く塞いでいるものの、耳孔からどす黒い血が細く伝い落ち、苦悶に顔を歪めている。刀の鞘を杖にして辛うじて立っている者は、わずか三、四名に過ぎなかった。
施粥を待っていた数百の避難民はとうに散り散りとなり、逃げ遅れて引き裂かれた十数体の骸が転がり、割れた陶器の椀が散乱している。香炉の陰には親とはぐれた幼子が四、五人で固まり、声も出せずに震えていた。
中庭の血臭は凄まじく、赤目の穢血黒犬七、八頭が、倒れた軍馬二頭の肉を骨ごと貪り食っている。 そして枯れ果てた松の天辺に、骨のように痩せこけた灰袍の影が、音もなく宙に浮かんでいた。
九嶷山の妖道。 その両手に捧げ持たれているのは、錆びた青銅の八角鏡――『量天照魂銅鑑』。
鏡面は燐火の如く禍々しい緑光を放ち、中央には歪んだ白い猫の頭蓋骨が嵌め込まれていた。口や眼窩から灰色の陰風が絶え間なく噴き出し、耳をつんざくような凄惨な猫の悲鳴が響き渡る。
青の毛織物の馬車の中では、阿奴が混乱に乗じて後山へ逃れようとしていた。だが顔を覗かせた瞬間、周囲の無力な女子供が目に入った。自分が逃げれば、妖道は燻り出すために容赦なく彼女らを皆殺しにするだろう。それに寺の奥へ逃げ込めば、謝必安と鉢合わせして面目が立たない。 その一瞬の躊躇が仇となった。照魂鑑の緑光が、馬車を正確に捉えたのだ。
頭上から降り注ぐ煞気に当てられ、阿奴の銀の毛並みは皮膚に貼りつき、毛先から微かな血の玉が滲み出していた。四肢が麻痺して立つことすら叶わず、喉から細い呻きが漏れる。車内の女たちも老僕が真言で守護しているとはいえ、耳を裂く魔音に胸を掻きむしり、激しくえずいていた。 魔音は錐の如く脳を穿つ。老僕の口元からも、一筋の血が滴り落ちた。
師兄弟の二人が中庭へ踏み込んだ瞬間、大男の両手首に巻かれた漆黒の数珠が、意思を持つかのように激しく唸りを上げた。鶏卵ほどの鉄珠が高速でぶつかり合い、澄んだ金属音を響かせて凄惨な猫の叫びをその場で打ち消していく。
一方の謝必安は左手に『驚蟄』を提げ、右腕の妖骨は静まり返っていたが、袖の奥底で微かな光の粒が瞬いていた。本人すら気づかぬ変化である。吹き荒れる魔音の嵐の中にあっても、彼は眉一つ動かさなかった。耳元を鬱陶しい蚊が飛んでいる程度にしか感じておらず、痛痒すら覚えていない。
大男が横目で弟弟子を一瞥し、内心で小さく頷いた。何年も見ぬうちに、この小僧の肝は随分と据わったらしい。
謝必安は惨状を見渡し、舌を打った。「都の目と鼻の先にある皇室ゆかりの寺でこれだけ派手にやらかしやがって。これは都に大嵐が吹くぞ、首を括る羽目になる奴が何人出るか見ものだな」
大男は散乱する肉片と泣き叫ぶ童の姿に目を怒らせ、両手を合わせ、太い声で念仏を唱えた。 「罪過、罪過! 師弟、お前は昔言ったな。殺生は生を護るため、業を斬るは人を斬るに非ずと。俺はその言葉を肝に銘じてきた。だが目の前のこの外道どもがやってる真似は、因果を断つなんてもんじゃねえ……これを見せつけられちゃあ、慈悲の仏陀とて三丈の炎を吹き上げるわい!」
「師兄、どう仕掛ける?」 「お前とその役立たずのデブ猫は女子供を守れ」二師兄は肩を揺らし、骨を雷のように鳴らした。「人の皮を被ったこの手の汚物は、俺一人で片がつく」
謝必安は懐で震える肉団子を叩いた。「聞いたな、デブ。戦力にならんのなら、あの香炉の陰で縮こまってる餓鬼どもを連れて隠れろ。それくらいはできるだろ。女眷は俺が引き受ける」
銜蝉は無数の蟻に皮膚を食い破られるような激痛に耐え、歯を剥き出しにして念話を飛ばした。『親父……死ぬなよ! それと、阿奴を連れ戻してくれ! 俺様は餓鬼どもを連れて逃げるぜ!』
金色の毛玉が転がり落ち、泥を這うように香炉の陰へと突進していった。
松の天辺にいた灰袍の妖道が乱入者に気づき、眉を吊り上げた。あの禍々しい巨漢を認めるや、忌々しげに唾を吐く。「生臭坊主め! どこまでも邪魔を立ておって!」
大男は澄ました顔で手を合わせた。「南無加特林仏、救苦救難。野良道士、とっとと降りてきて引導を渡されろ」
妖道は大男を相手にせず、香炉へ走る金猫に目を留めて嗤った。「もう一匹も自ら飛び込んできたか、天の恵みよ!」
手首を捻り、鏡を向けようとしたその瞬間。 謝必安が青石の石畳を滑るように踏み込み、『驚蟄』を水平に構えて馬車と群衆の間に割って入った。 打ち合うよりも先に、腰から外した木札を頭上高く掲げ、大音声で公用の口上を張り上げる。
「司天監、妖邪を捕縛する! 白昼堂々、邪器を弄して貴人の車駕を襲うとは何処の無頼か! 大魏の律令に照らし、強盗殺人の罪に処す! 武器を捨てて投降すれば、容赦なく斬り捨てる! 頑迷に抵抗するならば、命だけは留め置く――」 半拍、言葉を止めた。 「……逆だ。とにかく動くな!」
出鱈目な官僚言葉を叩きつけ、相手の虚を突いた隙に、謝必安は護衛たちへ一喝した。 「当職は司天監左少監、雑項科掌印令、永安県男・謝必安である! 護衛の諸君は下がれ、ここは司天監が引き継ぐ! 直ちに貴人を安全な場所へ!」
言い終わらぬうちに、一頭の黒犬が唸りを上げて喉笛へ跳びかかり、背後から黒衣の男が刀を振り下ろしてきた。 謝必安は慌てず、『驚蟄』を斜め下から跳ね上げた。雷撃木のしなりを利かせ、黒犬の脇腹を真横から打ち抜く。ボキリと骨の砕ける鈍い音が響き、犬は十丈彼方へ吹き飛んで痙攣した。
頭上から迫る刃に対し、身を低く沈めて空を斬らせる。相手が態勢を立て直すより早く、前へ踏み込み、右の拳を大砲の如く敵の胸板へ叩き込んだ。 男が血を吐いて崩れ落ちる間髪を容れず、官靴の踵で喉仏を無慈悲に踏み砕く。流れるような一連の動きで息の根を止めた。
靴底の血を払い、長袍の裾を叩いて悪態をつく。「五体満足のくせに司天監で俺の後輩にもならず、暗殺者なんぞに身を落としやがって。ロクな死に方をしねえぞ、ケッ!」
その冷徹な殺気を見た黒衣の残党どもは、青ざめてたじろいだ。獰猛だった黒犬までもが背を丸めて唸るばかりで、誰一人として間合いを詰められない。 絶望の淵にあった王府の兵たちは、この若き高官の苛烈な手腕に息を呑み、息を吹き返したように女眷を抱えて別院の奥へと後退を始めた。
「司天監の青二才が、我が大業を阻むか!」 松の上の妖道が逆上し、袖を振るうや、十二本の黒骨の飛剣が邪霊の哭き声を上げて謝必安の眉間へと殺到した。
「南無――加特林仏!」
咆哮が大気を引き裂いた。 二師兄が九尺の巨躯で大地を踏み抜いた。足元から飛びかかる黒犬どもを意に介さず、牙を剥く一頭の口蓋へ掌をねじ込み、その頭を握り潰す。返す手で次の一頭へ平手を叩き込み、そのまま犬群の中へ踏み込んだ。 ドパァン、ドパァンと破裂音が立て続けに響き、残る犬どもの頭部が赤い霧へと弾け飛ぶ。背後の黒衣の男たちも掌風の余波に薙ぎ払われ、骨を折られて転がり回った。
「次は畜生道なんぞに堕ちるなよ、目ぇかっ開いて人間に生まれ変われ!」
吐き捨てながら見上げれば、頭上から黒い剣雨が降り注いでいた。二師兄の全身の毛穴から、凝縮された菩提の業火が噴き出した。着ていた黒衣が筋肉の膨張に耐えかねて弾け飛び、古銅色の荒々しい肉体が剥き出しになる。蒸気のような白煙が全身を包み込んだ。
弟弟子へ向かう剣雨を睨み、腰を落として拳を構える。手首の数珠が焼けた鉄の如く真っ赤に発光し、猛烈な速度で回転を始めた。珠の連なりから、幾千筋もの火光が怒涛の勢いで射出される。残像が宙を真紅に染め上げた。
「六根清浄! オラァッ! ドォン! ドォン! ドォン!」
連打される音爆が重なり合い、山を揺るがす轟音の中に、幾百もの僧侶が声を揃えて読経するような地鳴りが混ざり合っていた。降り注ぐ無数の骨剣は二人の周囲三丈に近づくことすら叶わず、赤熱した火弾に迎撃されて空中で粉々に砕かれた。
だが妖道も並の修者ではない。飛剣を砕かれながらも嘲笑を漏らした。「狂僧め、その程度で本座を討てると思うたか!」 舌先を噛み切り、鮮血を照魂鑑の裏面へ吹きかける。
緑光が爆発的に膨れ上がり、庭に転がっていた犬の死骸と人間の血が宙へ吸い上げられ、四筋の巨大な血の濁流へと姿を変えた。四方から大男の四肢と咽喉へ襲いかかる。同時に袖から七尺の烏金槍を繰り出し、頭頂部めがけて突き出した。
「いいぞ!」 二師兄が地を踏み抜くと、青石の敷石が粉々に砕け散った。退くどころか前へ踏み出し、腕を振るって槍先を掌で直接受け止めた。
ジリジリと肉の焦げる凄まじい熱気が立ち上る。妖道が槍を引き抜こうとするが、大男の手は万力のように槍を締めつけ、びくともしない。二師兄は大口を開けて笑った。「この槍、俺の竹杖より頑丈そうだ。貰っていくぞ!」
形勢不利と見た妖道は血の濁流を操り、大男の胴体を縛り上げた。二師兄が舌打ちして手を緩めた隙に槍を奪い返し、頭上の鏡から極太の緑の光柱を胸板へと叩き落とす。
「ハッ! 太古の神具の味とやらを見せてもらおうか!」 二師兄は唸りを上げ、胸から赤金の光を吹き出した。退かずに光柱を正面から肉体で受け止める。凄まじい衝撃に、流石の巨漢も一歩後退を余儀なくされた。
「大慈大悲ガトリング、衆生平等!」 体勢を崩しながらも両掌を突き出し、山をも崩さんばかりの火光を撃ち放った。
その刹那、宙に浮く照魂鑑が異様な唸りを上げ、黒い斑紋をまとった巨大な異形の猫へと姿を変えた。大口を開け、迫り来る仏火を丸ごと呑み込んだのだ。だが直後、灼熱の炎に耐えかねたのか、猫は激しく身悶えしながら、苦しげに咳き込み、火の粉を吐き散らした。 逆流した火弾が流れ星のように飛び散り、妖道の護身の障壁を直撃する。
パリンと音を立てて障壁が砕け散り、妖道の衣服が吹き飛んで、その痩せた体が後方へと吹き飛ばされた。
妖道の顔に、初めて恐怖が浮かんだ。生身の肉体で太古の呪具を受け止める化け物がいるなど、夢にも思わなかったのだ。倒木の陰へ転がり落ちる勢いを利用し、懐から遁走の霊符を取り出して樹海へ消えようとする。
「待ちなよ。妹にちょっかいを出そうとした落とし前、まだ払ってもらってねえぞ」
背後から、氷のように乾いた声が落ちてきた。
その隙を逃さず、謝必安はすでに影のように妖道の背後へ回り込んでいた。『驚蟄』の短棒が音もなく伸び、低く唸る雷光と共に妖道の手首を打ち据えた。
バキリと骨が折れ、霊符が力なく舞い散る。叫び声を上げる妖道へ踏み込み、右手を突き出した。
「『方丈を怒らせておいて、逃げられると思うな』――ってな!――錯金琉璃、封印!」
妖道の足首を鷲掴みにした。 触れた瞬間、金泥を流し込んだような琉璃の結晶が足首から急速に這い上がり、腰、胸へと侵食していく。心脈へ届く寸前で、謝必安は指を止めた。生かして吐かせるためだ。
骨肉が硬質な琉璃の結晶へと変わる音が響き、妖道は絶叫と共に硬直し、地面へ転がった。
「師弟、退け!」 二師兄の怒号と同時に、頭上から刃の風が吹き下ろした。謝必安は即座に後方へ跳んだ。 巨猫が主の危機を救うべく、鋭い爪を剥き出しにして上空から飛びかかってきたのだ。短棒を構えて警戒する謝必安を無視し、巨猫は倒れた妖道を大口で咥え込むと、梢を数度蹴って、一瞬にして後山の深い樹海へと消え去っていった。
謝必安は息を吐き、巨猫の消えた樹海を睨んだ。「妹に目をつけ、無関係な子供まで巻き込みやがって……逃げ足だけは一級品だな」
大股で追いついてきた二師兄が、弟弟子を見下ろした。「無事か?」
オエッ。 謝必安の顔から血の気が引き、胸を押さえて激しく胃液を吐き出した。右手が止まらぬ痙攣を起こし、皮膚の下から骨を削られるような鈍痛が突き上げてくる。
大男が心配そうに平手を振り上げた。「気血が逆流してるな。俺が背中を一発叩いて巡りを良くしてやる!」
「やめろ! 師兄、死ぬ……! 俺の身体はお前の掌に耐えられるようにできてねえ!」 青ざめた顔で必死に拒絶する。
二師兄は頭を掻いた。「お前は平素の鍛錬が足りんのだ。師父に言って、山登りでもさせてもらうか。険しい山を幾つか越えりゃ、身体の芯から太くなる」
「結構! 師兄の顔を見たら急に全快した!」謝必安は脂汗を流しながら無理やり飛び跳ねてみせた。「ほら、ピンピンしてるだろ!」
「本当か?」大男は眉をひそめた。「俺はお前の未来の嫁御のために言ってるんだぞ。そんな虚弱じゃ夜が持たん」
「あれは嫁じゃねえ! 仕事仲間だ、仕事仲間! 何度言わせりゃ気が済むんだ!」 怒鳴り返しながら、話を強引に逸らした。「それより明日、俺の新居の引き渡しだ。師兄も顔を出せよ。美味い飯と酒なら嫌というほど食わせてやる」
二師兄は満足そうに頷き、手を合わせた。「南無加特林仏、善哉、善哉」
「少し待ってろ、後始末をしてくる」 「行ってこい。あの雑魚道士め、大技を出す前に逃げ出しおって……」大男は背中の酒瓢箪を外し、豪快に喉を鳴らして呷った。
謝必安は遠くの山並みを見つめ、舌打ちした。あの変形する神具、どれほどの値打ちがあっただろうか。質に入れれば数万両にはなったはずだ。惜しいことをした。
馬車の御簾が揺れた。 毛並みを乱し、足を引きずりながら、阿奴が車内から這い出てきた。 いつものように彼の肩へ跳び乗る気力もなく、馬車の縁に低くうずくまり、緑の光が消え去った方角をじっと見つめていた。耳をかすかに震わせ、尾を垂らしている。
「気にするな。あいつはお前じゃない、お前はあいつじゃない」謝必安は呟くように言い、麻痺の残る右手を振って、『驚蟄』を腰へ戻した。
振り返る頃には、いつもの官僚の顔に戻っていた。 「近衛兵の諸君! 動ける者は二手に分かれろ! 一隊は遺体を収容、残りは夫人方を奥殿へお連れしろ! 九嶷山の残党による凶行だが、司天監が撃退した。犬の死骸には猛毒がある、決して触れず、直ちに生石灰を撒いて封鎖せよ!」
指示を飛ばしながら、青の馬車へと歩み寄る。護衛たちの敬礼を受けながら御簾の前で一礼した。
「貴人様、ご無事で何よりでございます。この場は司天監が制圧いたしました。このまま参詣を続けられますか、それともお屋敷へお戻りになられますか。ご指示を」
しばしの沈黙の後、御簾が内側から静かに押し上げられた。 武陵王妃が端座していた。乱れた後れ毛を押さえ、静かに謝必安を見つめていた。
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【司天監内部メモ】
世に奇妙な噂あり。念珠の法具『六根』について、所持者の弁によれば、この珠は一息に三千六百回転するという。
巷間に伝わる口訣に曰く。
「両手に六根清浄の珠を執り、一息に三千六百転。
大慈大悲ガトリング、成仏せしむるは人に非ざる妖邪のみ。
苦海は無辺なれど終に尽くるあり、衆生平等なる涅槃の天」
注:上記の記録は方外の口伝に過ぎず、司天監雑項科の検分を経ておらぬ。法具の実在性には疑義あり、暫く巻末に附して後日の調査に備う。




