第28話 初戦-第三試合
第三試合は無名同士の戦いだったが【呈色の小動物】と【騎士の小妖精】が召喚されると会場がざめいた。
【呈色の小動物】は雉を豪奢にしたようで、青色の羽には五彩の文様がある。
美しく煌びやかな姿だが、その派手さに恐怖感を抱く者も少なくない。
更に鳴き声は五音になっており、聞き手により印象が異なる特徴を持つ。
対して【騎士の小妖精】は首から上のない騎士の姿であり、その頭部は小脇に抱えている。
一見するとゾンビとも思えるが、傷だらけの甲冑が騎士であると主張している。
『第三試合は皇選手と亜門選手の戦いだッ! 情報は少ないが、全く異なる戦い方をすると予想しておく!』
曖昧な実況でも会場は盛り上がり、緊張感に包まれながらも最初に動いたのは皇だった。
「あたしは防御して終わりっ」
【呈色の小動物】が羽を折り畳んで、防御体勢を取っただけでも描かれた文様は威圧感を放っていた。
「俺は【騎士の小妖精】を進化。ランクアップ・エヴォリューション!」
首無し騎士には似合わない光り輝く繭に包まれ、本来の姿を取り戻すように進化する。
その姿はシンが見てきた中で一番の変化を伴っており、首から上のない馬に騎乗した騎士はランスと頭部を抱えていた。
「見たか! これが四枚之聖騎士の一席だ!」
突然の宣告に日本中が驚愕した。
四枚之聖騎士とは世界に四枚しかないと公表されているカテゴリーであり、公式発表では進堂首相もとい、ンドゥーのみが所持している。
そのような希少価値の高いカードがこのような形でお披露目されたのだ。
「んーっ? イマイチ納得出来ないんだよなーっ。ま、いっかっ」
皇は小首をかしげ、またしても防御を命じた。
より強固に翼を折る【呈色の小動物】を満足げに眺める彼女の意図は誰にも分からない。
「俺は【騎士の妖精】で【呈色の小動物】を攻撃!」
頭部のない馬が勢い良く走り出し、騎士の持つランスが五彩の鳥の羽を突き刺した。
防御しているとは言え、ただの青色の羽は脆く舞い散り、その身に穴が穿たれると血液が羽を伝い、スタジアムを汚す。
しかし、契約モンスターを傷つけられたとしても皇は不敵に笑っていた。
「オッケーっ。あたしは【呈色の小動物】で【騎士の妖精】を攻撃っ」
雉に似た鳥が飛び立ち、出血を撒き散らしながら鉤爪で騎士を攻撃したが、甲冑に阻まれて大したダメージは与えられなった。
それでも笑みを絶やさない彼女の視線の先では【呈色の小動物】がスタジアムの天井付近からバサバサと翼をはためかせ、血液を降り注いでいた。
「なんだ、その攻撃はぁぁ!? 行け【騎士の妖精】!!」
先程と同じように特攻する頭部のない騎士だが、先程と同じようにはいかなかった。
スタジアム中に撒き散らされた血液と、甲冑に付着した血液が蹄と各関節を固め、身動きが取れなくなってしまったのだ。
「【呈色の小動物】の効果発動っ」
心底楽しそうな皇は亜門と彼の契約モンスターを眺めながら告げる。
「【呈色の小動物】の血液はとっても粘り気が強いのっ。膠って言うんだけど、接着剤みたいなものかなっ。もう動けないけど、バトル続けますかっ?」
「ふざっけんな! こんな糊、引き剥がして攻撃しろ! お前は四枚之聖騎士だろッ!!」
亜門の指示に応えるように【騎士の妖精】は動こうとするが、動けば動くほど【呈色の小動物】の血液が関節に入り込み、より強固に接着していく。
遂に諦めたように脱力した【騎士の妖精】は胴体を亜門に向けた。頭部は無いが、その視線は彼だけを見つめているのだと、誰もがそう思った。
「なんだよ!? お前が弱いから負けちまうじゃねーかッ!こっちを向いてる暇があったら攻撃しろよ!」
その光景は痛々しくて見ていられず、会場全体が【騎士の妖精】を同情しているような空気感の中、思いもよらない現象が目の前で起こった。
愕然と肩を落とした【騎士の妖精】が【騎士の小妖精】へと姿を変えたのである。
これには実況者も声を荒げたが、意見を求められた解説者は淡々を業務をこなしていた。
『あれは退化です。シエルカードゲームは契約者と契約カードもとい契約モンスターとの絆で戦うゲームです。この一戦で彼らの好感度が70%を下回ったのでしょう。それから【騎士の小妖精】はカテゴリーfairyなので、四枚之聖騎士には属していません』
『そ、そうでしたか。皆様、大変失礼致しました。亜門選手の【騎士の小妖精】および【騎士の妖精】は四枚之聖騎士ではございません。誤った情報を発信してしまい、申し訳ありませんでした』
名物実況者の隣に座る解説者は鷺ノ宮エンタープライズ技術部の役職者である田中。
彼はシエルカードの製造に携わっており、全カードのカテゴリー、効果、スキルを把握している男である。
バトルの勝敗は既に決しており、亜門は降伏を宣言するしか選択肢はないのだが喚き続ける為、警備員により取り押さえられ、シンに続いて皇も素直に勝利を喜べない立場となってしまった。
【騎士の小妖精】→【騎士の妖精】
ランク:序→破
カテゴリー:fairly
モチーフ:妖精 デュラハン
効果:不明
契約者:日本人 亜門選手




