第27話 初戦-第二試合
裏で問題が発生している事は伏せられ、二戦目は予定通りに始まった。
観客や他の選手達は何故、シンが自分のカードを使用しなかったのか、何故、ンドゥーが棄権したのかは知らされなかったが、それでも大会が進む為、気持ちを切り替えてバトルに臨むしかなかった。
『トーナメント二戦目は"黄金林檎"冬姫選手対よしつね選手の戦いだーッ!』
二人の選手が同時に現れ、同時にシエルデヴァイスを起動させる。そして、同時にカードをセットした。
全ての動作に無駄がなく、熟練の選手同士の戦いであると一目で分かる程だった。
「私は【果実を守護する小動物】を召喚」
「僕は【迷宮の小動物】を召喚」
冬姫の前に召喚されたのは巨大な西洋風のドラゴンだった。その姿は全身に百の頭を持ち、尾や腹部にも顎を持つ。
同様によしつねの前に召喚されたのは斧を担いだ牛頭人身の怪物――ミノタウロスだった。
「「ランクアップ・エヴォリューション!」」
互いに最初のターンは進化を選択し【果実を守護する小動物】は【果実を守護する幻獣】へ、【迷宮の小動物】は【迷宮の幻獣】へそれぞれ名前と姿を変えた。
ドラゴンもミノタウロスも更に巨大となり、スタジアムを揺らす。
「【迷宮の幻獣】で攻撃!」
先攻のよしつねの指示に従い、ミノタウロスがドラゴンに向けて斧を振り下ろした。
固い鱗に阻まれ刃は通らなかったが確実にダメージは与えているようで、大スクリーンに映し出された体力ゲージは減っている。
そんな攻撃に怯む事のないドラゴンは百の頭部を一斉に冬姫に向けて、二百の目で瞬きした。
「私は【果実を守護する幻獣】で【迷宮の幻獣】を攻撃」
ドラゴンは巨大な腹部にある顎でミノタウロスにかぶりつき、半身を喰い千切った。
そのグロテスクな光景に目を背ける観客も居る中、ミノタウロスの体力ゲージは大幅に削られる。
テレビ生中継の為、モザイク処理は出来ず、ホログラムでは再現不可能なリアルなモンスター同士の戦いが放送されてしまった。
「あぁ、僕のモンスターが……。ぼ、僕は防御する」
痛がるミノタウロスの姿を見て絶望するよしつねは震える声で音声入力を行ったが、冬姫は容赦なく、右手で【迷宮の幻獣】を指し示しながら攻撃を宣言した。
彼女の首元で黄金の林檎のネックレスが揺れる。
ミノタウロスが斧で防御しようとも、お構いなしに噛み砕くドラゴンは百の口で咆哮した。
よしつねの前に鎮座する、その姿は禁断の果実を守るドラゴンに相応しいものだった。
「リアルですね。これは放送して良いのかしら」
全国の子供達にトラウマを与えかねない戦いを繰り広げた冬姫はスタジアムを後にする。
へたり込み、彼女の後ろ姿を眺めるよしつねが立てるようになるのは暫くしてからの事だった。
「麻々乃、どう見る?」
「私達の蛇では勝てない。でも兎なら勝てる。亜梨乃とリョウを信じるしかない」
「…どう戦えば良い?」
シンと麻々乃は【魅惑の小悪魔】のカードが届く事を信じて、次の対戦相手となる冬姫対策を練りながら、観戦を続けた。
【迷宮の小動物】→【迷宮の幻獣】
ランク:序→破
カテゴリー:mythical
モチーフ:幻獣 ミノタウロス
効果:不明
契約者:日本人 よしつね選手




