第16話 本戦-休戦(控え室にて)
朝ぶりにリョウ、亜梨乃、麻々乃と再会したシンは疲れ切っていた。
「よっ! Dの極意を持つ者」
「シン君、お疲れ様。決勝戦進出おめでとう」
「お疲れ。災難だった」
それぞれの労い方をする友人が控室に押し寄せ、早速からかわれてしまった。
何も触れられないよりもマシだと思いながら悪態をつく。
「うっさいぞ、お前ら。人の事言えるのか?」
「な、なな、なぁ!? シン君、それは立派なセクハラだよ!」
「シンはむっつり」
「まぁまぁ、そう怒るなよシン。俺もお前を尊敬してるぜ。なんせネットではヤバい事になってるからな。学校バレおめでとう。休み明けからは有名人だな」
既に各選手の個人情報はネット上で拡散しており、手をつけられない状態になっていた。
「とにかく家で休みたい」
そんな些細な願望を漏らしていると室内にノック音が響いた。
「シン選手、決勝戦進出おめでとうございます。一時間後に最後のバトルを行います。暫し、こちらでお休み下さい」
公式大会のスタッフが用意した弁当を食べながら作戦会議を始めた。
例によって麻々乃がタブレットを取り出して決勝戦の相手について説明を始めた。
「Aimee選手の契約カードは【導きの小神】。これまでスキルや効果は使ってない。ランク破まで進化させて、単純な強さで勝ち抜いてる。難敵」
淡々と説明を続ける麻々乃は第三回戦の動画を流した。
彼女は三人の中で唯一、シンのバトルではなく、もう一つの戦いを観戦していたのだ。
「勝てるか?」
「分からない」
「ん? 待てよ、フランス出身だよな。もしかしてシンのカードの進化先を持ってる人か?」
「否定は出来ない」
「でも、これってどう見ても猫じゃないよねー」
Aimee選手が使役するモンスターは狼の姿をしている。
SNSのフランス人は【嫉妬の魔猫】というカードを求めている為、この魔王杯に参加している可能性は高いが彼、或いは彼女が同一人物である確証は無かった。
「シン、次は最初からスキルを使えよ。初戦はただのラッキーだと俺は思うぜ」
「あぁ、分かってる。反省してるよ」
シンはスマートフォンを取り出すとアプリを起動し、未だに寝ている兎の画面を確認した。
そして、画面を指先でスクロールする。
まるで本当に背中を撫でられているように安らかな表情となった兎に微笑み、アプリを閉じた。
「完っ全にハマってるよね」
「え、あ、いや。……うん、まぁ」
いつも笑顔を絶やさない亜梨乃は今日も真っ直ぐな瞳でシンを見つめながらふと呟く。
「兎さんの尻尾は蠍の尻尾だと思うんだよねー」
愛らしい兎だと思って近づくと強力な毒を持つ蠍が姿を現し、迅速に狩りを行う。それがシンの契約モンスターなのだ。
まさにカテゴリーdevilに相応しいと言えるだろう。
「あ、そうだ。お前と兎って好感度いくつ?」
「今は83%だった筈」
「「83っ!?」」
シンが明かした数字は何気なく質問を投げかけたリョウと亜梨乃が想像していたよりも斜め上を行くものだった。
口をパクパクしている二人の反応はシンにとっても予想外のものだった。
「え、なんで?そんなに高い数字か?」
「初心者で83は驚異的。ランク破に進化させるには好感度70%が必須。リョウは75%、亜梨乃は71%」
カードの入手方法についての情報は得たが、細かい仕様について調べていないシンはこの大会が終わったらシエルカードについてもっと学ぼうと決意するのだった。




