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MIDNIGHT  作者: 赤良狐 詠
チャプター1 日常+非日常
15/16

『その時』

 真夜中。東京都町田市南町田某所。閉鎖された小学校校舎内。一時半頃。


 春の温かさを感じる事ができる昼間と打って変わって夜には冬の肌寒さが残っていた。こんな真夜中の小学校に集まっている男女の姿は異様に見える。彼らがいるのはかつて子供達が騒いでいた教室の中である。彼らの背丈では椅子に座ることが難しいので、全員が机に腰掛けている状態であった。六人の男女は一人の男を縁で囲むように座っている。中心にいる男の方には小さな人形のような人の姿があった。彼は徐に口を開いた。


「そろそろ始めようと思う」


「隆さん、始まるんですね」


「そうだよ小春。その時は来た」


 小春と呼ばれたおかっぱの女性は、隆と呼んだ男の言葉に笑みを溢さずにはいられなかった。彼女の他の五人も無表情から笑みへと変わっていた。


「では、それはいつなのですか?」


 全身黒づくめで固めた腰まである長髪の男が口を開いた。男の隣には寄り添うようにクマのぬいぐるみを持った少女がいた。クマのぬいぐるみの目が大きなボタンとなっていたが、左目は取れ欠けているが、そう言ったデザインであるかもしれない。


「宗太さん、もうすぐですよ。亀裂は大きくなってきている。あと少し、もう少しすれば大きな災害となるでしょう」


「具体的には?」


 宗太と呼ばれた長髪の男は隆に問答を続けた。他の男女は二人を見つめて様子を伺っていた。


「今月中には実現できると思いますよ宗太さん。僕一人の力ではこれが限界です。すみません」


「幸喜君、私は謝罪など求めてはいませんよ。こちらこそ申し訳ない。あなたのお気持ちを察する事ができませんでした」


「そんな、勿体ない言葉ですよ」


 幸喜と呼ばれた男青年は金髪で両耳には多くのピアスを開けていて男女の中では若い方に入ると思われる。彼ともう一人の青年は見た感じは同い年くらいではないだろうか。そのもう一人の青年は幸喜の発言に何かを言いたそうにしているが歯を食いしばっている。


「まぁ、幸喜は良くやってくれているよ。ありがとう。あと、情報の共有だ。これは非公式な情報だが、我々のことが国会で議論されるかもしれない」


「どうしてですか?」


「湊、警視庁には我々を捜査するための組織が編成されているのは知っているな」


「はい」


 もう一人の青年である湊は隆の言葉に返答した。


「もう我々を隠しておくことが困難な状態になって来たんだ。恐らく、ここ数年で起きているクラウドの事件が原因だろう。警視庁での捜査班も拡張される見通しだ」


「それでも私達を捕まえるなんてできないでしょう」


「それは解りませんよ小春さん。現に捕まえたクラウドが逃げたことがない。これは何らかの方法で彼らの能力を抑えている可能性がありますよ」


「宗太さんの言う通りだ。それにミッドナイトのこともある。彼らの邪魔が入ることは解っているが、果たして表に出て来るかな?」


 隆の言葉に全員が身震いした。


「では、太陽の光の下に晒すのですね」


「そうですよ。我々からの宣戦布告です。これは一種の愛ですよ」


「ふふふ。愛と憎しみは表裏一体ですよ。隆さん」


「愛憎とは良く言ったものですね」


「早く、始め、たい」


「由香里さん、その時はもうすぐですよ」


 ぬいぐるみを持っていた少女を由香里と呼んだ宗太は隆の方に座っている小さく偉大な存在を見た。彼女は黙って話しを聞いているだけで何も発言していない。


「ラファエル様、何か私達に言うことがあるのではないですか?」


 隆の肩でじっと黙っていたラファエルは重く閉ざしていた口を開けた。


「あなた達の好きにすれば良いのよ。私はただの目撃者であり続ける。世界が変化する瞬間をただ見つめているだけよ」


 ラファエルは言葉にした自分の言葉に固く閉ざしていた表情を和らげた。その表情はとても歪んだ笑顔だった――。

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