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闇の王子、影の王子  作者: チェル
二章───町の少年R編
31/79

「お忍び的な何か」

お久しぶりです!!



時がたつのは早い。

俺が王子(レグネス)になってから、3ヶ月が過ぎた。




城に遣えている召し使いやその他の人たちは、ここに来た三ヶ月前に比べて大分優しく接してくれるようになっていた。

そうなると、自然と町に住む人々にも情報がまわったのか、対応が前よりも断然いいものになっていた。



「おっ、王子。また抜け出したのかい?」

「“また”って…。あ、またか。最近来るのが多くなったからね。おじさん、スコーン3つちょうだい。あと、出来れば“王子”はやめて。」



3か月前、この店のおじさんから店を閉め出されたときとは大違いである。

俺は根に持ったりしないタイプだけどね。


「ほいよ、オマケでもう一個。」


「ありがとう!はい、お金。」


今ではすっかり打ち解けて、今のようにオマケまでくれるようになった。



さて、城を抜け出してまで町に来た理由は何だと思う?

理由は二つある。


1つは、武術を教える気満々だったランソワおばさんから逃げてきた。


2つ目は…



「おーいラグ、遅かったなー!」


「早くしないと、おばさん怒るよー。」


俺は噴水広場の二人に向かって走っていく。


「ゴメン、買い物してたら遅くなってさ!」



彼らは町に住む、マイトとヘレナ。


俺の友達だ。






「はい、これ遅れたお詫びね。」


俺は二人にスコーンを1つずつ渡す。その為に買ってきたものだから。


「おっ、ありがと。いつもながら、お前は何かしら美味しいもの持ってくるよな!」


走りながらマイトが言う。こいつはなかなか食い意地の張る奴である。


「ありがとう。あ、この店のスコーン美味しいよね!私たまに買いに行くんだよ。」


スコーンの入れてあったマークのついている袋を見て、ヘレナはにっこりと笑った。マイトほど食い意地は張ってないけど、こいつは以外とたくさん食べる。



そして、三人でバイトをしている町外れの小さな工房へと向かうのだった。



──────────────



「「「おばさん、こんにちはー!」」」


俺たち三人は、工房の扉を勢いよく開けて、中へと入った。


「遅かったわねぇ、またラグが遅刻でもしたんでしょう。」


図星である。


「おばさん、お詫びにスコーンあげるよ。俺だけでもこれで許して!」


「「コラコラ。」」


俺は、オマケでもらったスコーンをおばさんに渡した。


「まあ、そんなに怒ってもいないし、別にいいわよ。スコーンは貰っておくけどね!」


大きな声で笑いながら、おばさんが俺たちに言った。おばさんは仕事には少し厳しいけど、とても優しい、暖かい人だ。




さて、さっきから俺が“ラグ”と呼ばれているのは、偽名を使っているからである。

おばさん含めマイトやヘレナ、町の仲のいい人の一部には、俺が王子だって事は秘密にしていて、一応町に住む少年ということになっている。

名前をまんま出すとバレそうだから、“レグネス”の頭文字をRの母音を残して“ラグ”にしたのである。


このおばさんの工房は染め物屋で、俺たち三人は染め物の布を作るバイトをやっている。

俺とヘレナはお金はそこまで困ってない家庭(という設定)だが、マイトの家が貧しくて稼がなければならない。

そこで昔から仲の良いヘレナが手伝い、最近だけど俺も手伝うようになった。

給料はマイトに全額あげている。マイトの家庭が潤うなら、それで俺もヘレナも満足だ。


俺が城から小遣い持ってきた方が多いんだけどな…。

いきなり大金渡すと怪しまれそうだし。



毎回爪まで藍色に染まったりするけど、三人で楽しくやっているから気にしていない。おばさんも優しくて面白い人だし。


あの怒ると怖いランソワおばさんから逃げてくるだけあって、 少年Rの生活は楽しいものだった。(帰ってからが怖いけど。)



そんな平和なサリマーダ王国に、ある事件が起きたのは次の日のことだった。






事件っても国が滅びるとかそんな大事ではない…はずです!

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