冬なんだが…
「…しょっ、と。…本当になんでこんな所に桜を植えたんだか…」
とある日の放課後。俺は珍しく足を部室では無く、いつぞやの地下迷宮に向かっていた。前回はまぁ、ライトを切らしたせいで行くのに苦戦したが、今回はなんか道しるべらしきものが出来ているため容易に行けた。…てことは、コハルも迷ったんだな
「…よいっしょ」
とりあえずそんなこんなであの場所にたどり着く。どんな魔法か知らないが、常に"五分咲き"の桜が咲いていた。…さて…
「おい、コハル」
とりあえず俺はここに居るであろう人物に声をかける。…ただ、返答が無い。う~ん、最近部室に来てないから、ここにいるかなと思ったんだが…
「…すう…」
「??」
…耳をすましてみると、どこからか寝息のような音が聞こえてくる。…上…か?
「…」
目線を上に上げると、そこには枝に乗りながら寝ているコハルが居た。…枝が強いのか、コハルが軽いのか、器用に寝てるな…
「…ん…すう…」
「…」
さて、どうしたものか。来たはいいが、これじゃあどうしようも無いよなぁ…
「…」
それにしても、見事に五分咲きだ。だからコハルを見つけるのも容易かったのだが…
「…あれ、先輩…?」
そんなこんなのうちにコハルが目を覚ましたらしい。コハルは目を擦りながら木から降りてきた
「…何でここに来たんですか?」
「最近部室に姿を現さなかったから、多分ここじゃないかと思ってな」
「…そんな事でここまで来るなんて…大変じゃなかったですか?」
「二度目だからそうでもなかったぜ?…にしても、最近なんで部室に来ないんだ?」
俺はとりあえず目的を果たすため、コハルに聞く。するとコハルは少し戸惑った様子を見せたが…
「…この桜、私が放置したら、枯れちゃうかもしれないじゃないですか」
「?それが普通なんじゃないのか?」
「淳先輩の様な反応をするのも無理は無いです。ですが事実なんですよ。私が来ると、なんでか知らないんですけど毎日が五分咲きながら咲いてるんです。ですけど、私がここに初めて来たときはこの桜は枯れてました。…この桜は、人の温もりが欲しいんだと思うんです」
「…コハルにしては、随分メルヘンチックだな」
「私も女の子ですから」
さすがにそれは知ってます
「…だが、なんで枯れない?時期は冬だ。普通なら枯れるだろ」
「それが分かってるなら、毎回わざわざここまで足を運ぶ物好きが居ますか?」
…なんだろう、さっきから遠回しにバカにされてる気がする…
「…でも、いつしかそれが日課です。五分咲きの桜が満開になるのを信じて、毎日足を運んで、共に頑張るんです」
「…ふむ…」
コハルは前「この子と私は同じ」と言っていた。だが、本当にこれでいいのか?常に五分咲きとして咲き続けるなんて…
「…なぁ、コハル」
「なんでしょう?」
「…冬の間、見に来るのやめようぜ?」
俺は覚悟をもってコハルに問いかけた。無論コハルはいやな顔をするのは分かってはいたが、それでも言わざるを得ない、と俺は感じたから
「…なんでですか」
「確かにこの桜は綺麗だ、とても五分咲きとは思えない。だが、あまりにも季節感が無い。…正直言えば、生きてるって感じじゃないんだ」
「…っ!!」
コハルの肩が跳ね上がり、そのままうつむく。…ここは、鬼になるしかない…
「確かに今見に来るのをやめたら、こいつは枯れるかも知れない。だけど、こいつを信じてやれるなら今度は桜が咲く時期に見に来たらいいじゃねぇか。桜って、その時期に咲くのが風流だろ?」
「…そう、ですね」
コハルは俯きながらなんとか言葉を絞り出している。…そりゃ、一心同体のような桜を俺は生きてないって言ったんだ、嫌われても仕方ないわな
「なら、淳先輩。約束してくれませんか?」
「?何をだ?」
そこでコハルは顔をあげ、今出来る最大限の笑顔で答えた
「今度は…春に、淳さんと一緒にここへ来て、桜を咲かせてくれますか?淳先輩となら…」
「…そんなに、この桜が大事なのか」
「まぁ…もう居場所みたいなものであり、仲間みたいなものですから」
コハルは自嘲気味に笑った。…やっぱり姉の存在がでかすぎるのか。なら…
「コハル、ならカオルさんを越えるんだ、勝負でな」
「…え?」
多分、あまりに突飛な発言なんだろう、コハルは呆気に取られている。…本当に、無駄に毒されたな
「俺たちはショー部だ。だからそーいうのは勝負で決めるのが手っ取り早い。カオルさんだってそういうだろうさ」
「…敵いませんね、さすがですよ」
コハルの表情が晴れる。どうやら決まったようだ
「分かりました。じゃあ舞台を用意してください。…お姉さま」
次回、姉対妹の姉妹喧嘩勃発!!
「…誰に対しての次回予告ですか?」




