幼馴染みしてる
「…」
「どうした、食が進まないようだが…」
「そうだよあっつん。食べなきゃ大きくなれないよ?」
「大きくならねえし、食欲がないわけでも無いし…」
朝野家の食卓で夕飯を取る俺たち。今日の献立は焼き肉らしい。俺の隣に風が座り、前には朝野家の夫婦が居る。…昔は平気だったが、今となると結構普通じゃないような…
「遠慮するなら10年早いぞ、淳君。ずっと昔からこんな感じで持ちつ持たれつなんだから、食わなきゃソンだ」
「損得もなんか違う気がするんすけど…」
「でも淳くんは本当に息子だと、私は思ってるのよ?」
「それはまぁ、嬉しいっすけど…」
「そんな息子の食が細かったら、親なら心配して当たり前なのよ?だから遠慮せずに食べてね?」
「は、はぁ…」
そしてとなりの風はただ笑ってるだけ。…家族、ね。そういや親父達は元気にしてっかな
「今日は泊まっていくのだな?」
「…へ?」
夕食が済み、俺と朝野家は居間で話し込んでると急に親父さんがそう聞いてきた。時計を見れば既に夜9時になろうとしていた
「いやいや、さすがに家は隣ですし、迷惑をかける訳には…」
「いや、ここは泊まっていった方が良い。むしろ泊まるべきだ。俺がそう言ってるんだから間違いないだろ」
「…はぁ…?」
なんだこの強制具合。母親の方は…
「うちの人が言うんですから、そうしたら良いんじゃないかしら?」
…この人もか、なら…
「風、お前はさすがに急に俺が泊まりになると困るだろ?」
「ふぇ?」
俺は最後に風に訪ねた。多分昔の流れなら居間にはねかせられないとか行って、間違いなく風の部屋で寝ることになる。昔はよかったが今はそうはいかないだろ。だが風は…
「私は別にいいよ?部屋もきれいにしてあるし…」
まじかよーいっっ!?
「「決まりだな、淳君」」
「うぐ…」
風の支持を受けた朝野家夫婦が圧力をかけてくる。…こうなると断れない…
そして、俺は今風の部屋に布団を用意してる最中だ。なんでも俺が了解すると『今日は早く眠くなったから居間から出てけ』と言われ、この部屋に押し込まれたのだ。まぁ、風の部屋にもテレビとかあるから良いんだが…
「…」
「…」
…沈黙が部屋を支配してる。…間が…
「あっつん?」
「ん?」
風が読んでた漫画を閉じ、俺に視線を向けている
「…な、なんだ?」
「もうそろそろ寝るけど、電気消して良い?」
「あ?え、ぁ、…あぁ、いいぞ?」
部屋の電気が消される。とりあえず用意した布団に入るが…。…落ち着かない…。何でだ?昔は普通だったのに…
「…」
そんな事を考えてると、何やら布団が動く気が…
「…って、風!?」
隣のベッドで寝てた風が俺の布団にっ…!?俺はとっさに風に背を向けてしまう
「…あっつん…」
「お…おい風!?一体何を…してんだっ!?」
「…なにをって…」
風は少し間を置き…
「添い寝?」
「頼んだ覚えは無いっ!!」
「だってアイコンタクトしたよ?」
「第一風の目は見てない!!だから分からねぇんだよ!!」
「…あっつん、何で私の目を見てくれないの?」
「…は?」
…風の声音が、なんだか寂しそうだ。俺はそれなり寝返りを打つと…そこに寂しい目をした風が居た
「…あっつん…何か、かわったね?」
「…そ、そうか?俺は別に…」
「ううん…かわったよ?私は…あっつんの力に居たから分かるんだよ?…あっつんは、格好つけるようになったよ」
「…」
もしかして…哀れまれてる?
「そして優しくなった。強くなった。…一人前の男の子になった」
「…ずいぶんと偉そうだな」
「伊達に幼馴染みしてないからね!」
そこで何やら得意気になる風。なんかしんみりした空気も無くなっている。…そして俺たちの意識は睡魔に飲まれていくのだった…




