そういえば、これはしなかったな?
「…お疲れさまっす」
「お疲れさまっ」
「お疲れですわね」
「お疲れさまです」
とある日の放課後。俺はいつも通り部室に来ると今日は暦先輩、憐香、ユキの布陣だ。とりあえず俺は荷物を置き、自分の定位置に座ると、おもむろに憐香が話を切り出してきた
「そういえば、うちの部活では"からおけ"と言う遊戯はやらないのかしら?」
「カラオケですかっ?」
「…カラオケか」
そういえばやった事無かったな。…でもいきなりなんぞや
「どうせなら、部活で一度皆様で行ってみたらいかがかしらと」
「…カラオケを?」
憐香の提案にすかさずユキが不満の顔を浮かべる
「…うちの部は大所帯、すこし厳しい気がする」
ユキの言い分ももっともだ。うちの部は知らぬ間に結構大人数になって来たからな。だがこれには暦先輩が反論してきた
「でもっ、からおけっていっぱい人居ると楽しいとこなんですよねっ。だったら、私は行きたいなっ」
「奏夢に、大人数での遊戯なら何がおもしろいかしらと聞いたらからおけと言われたものですから、それもいいんじゃなくて?それとも雪さんは歌が下手なのがばれるのが怖いのかしら?」
「…そんな事、断じてない」
ユキを挑発する憐香。…何で挑発するかは謎だが、まぁ確かにそんなとこに遊びに行くのも悪くないよなぁ
「…皆、お疲れさま?」
そこに阿見津先輩が現れる。…部の活動の決定権は阿見津先輩にあるから、決めてもらうのがいいだろう
「阿見津先輩、憐香から部活動でカラオケはどうかって案が出てるんすけど…どうっすかね?」
「…え?」
俺が代表して阿見津先輩に聞く。阿見津先輩はすこし考え…
「…部活動、としては難しいかな?」
という結論を出した。これには憐香が反発の声をあげた
「な、何故ですの?」
「…この部は、あくまで勝負する部活動だから、かな?」
「な、ならそのからおけと言う遊戯についてる採点機能で勝負するのはどうかしら?」
「…でも、部の皆で行くとなるとそれなりな人数になるから、組を二つに分けなきゃならなくなると思うよ?」
「う…」
阿見津先輩に論破され黙り込む憐香。さすがは阿見津先輩、しっかり正論を並べてきたな
「…でも、皆でいくって言うのは楽しそうだよね?」
だがそこで阿見津先輩がふらっと呟く。…?
「…だったら、皆で遊びにいくって事で、この話を解決したらダメ、かな?」
「…へぇ」
「…なら、いいですわね」
その見解には憐香も理解したようで、暦先輩も納得らしい。…どうやら、近々皆でカラオケに行くことになるらしい。そしていつもの駄弁りの時間になると、阿見津先輩が俺の肩をトントンと…
「…なんすかね?」
「…あの、カラオケって、歌うんだよね…?」
…実に当たり前の事を聞いてきた。だが、俺にはその意味は理解できた
「…不安っすか?」
「…話せるようにはなっても、歌えるかどうかは別物だから…」
「てことは、今まで一度も言ったことは…」
「…お恥ずかしい限り、かな?」
阿見津先輩は頬をかきながらそう呟く。ただ、この人の人生上仕方のない事だとは思う。今でこそ一人カラオケが認知されるようにはなっても、やはり複数人が主流のカラオケには抵抗があったんだろう
「…嫌なら無理しなくてもいいんすよ?」
「…嫌じゃないよ?ただ、場を盛り下げちゃうかなぁと…ね?」
「大丈夫っす、皆、阿見津先輩の事は分かってますから」
「…うん」
ただ、阿見津先輩の表情は晴れなかった。…どうしたんだろうか…




