五分咲き
「…コハルーっ!!…ゲホっ!!」
コハルとはぐれてもう30分経っただろうか。…いまだにコハルは見つからず、ここがどこかも分からないまま、俺は喉を潰してしまった。…くそ…くそっ…くそっ…!!
「どこだ…コハルっ…」
なんでこんなに一生懸命なのかは分からない。…ただ、この状態じゃカオルさんに顔向けは出来ない。…はっきりさせなくてはいけない、コハルへの答えを…
「…ん?」
…さっきから、道の先がすこし明るくなっている気がする。出口か?
「だけど、コハルが…」
…だが、今このままでも仕方ない。もしかしたら外に出てるかも知れないし、そうでなくても外に出れば助けを呼べる。…俺はとりあえずその光に向かって歩き出す。そしてその光の最終地点は…
「…は??」
そこには…桜が咲いていた。時期はとてもじゃないけど咲く時期じゃない。だけど、これは間違いなく桜だ
「…だけど、まだ五分咲きか…?」
その桜は見た感じ、満開にはほど遠かった。…すると…
「私は、いつも五分咲きですから」
「…は?」
…桜から、声?いや、この声は…コハルか?
「…」
すこし桜に近づいて見ると、その木の後ろにコハルは居た。目が真っ赤でかなりつらそうだ。…原因は俺なんだろうが…
「…五分咲きって…」
「そうです。私はいつも五分咲きなんです。なにをやっても私はお姉さまの影に隠れてしまいます。お姉さまは常に満開で皆が立ち止まって見てくれるくらい魅力があります。だけど私はそうじゃない。すべてにおいて五分咲きだから、誰も立ち止まってくれない。…本当なら、好きな人にだけでも立ち止まって欲しかった。だけど、それもお姉さまが連れていってしまったの」
「…カオルさんが、俺を…」
確かにコハルのいう通りかも知れない。だけど、俺は1つ疑問があった
「…だが、コハル。お前はいつから俺が好きなんだ?俺はいつからお前に好かれてるか分からない。出会ったのだって最近じゃ…」
「淳さんは、私にも優しかった。ちゃんと見てくれた。…桜カオルの妹としてでは無く、一人の人間として、桜コハルとして」
「…それは…他の奴だってそうじゃないのか?」
「いや、あくまで"お姉さまの妹"でした。だからこその期待、羨望…私にそのようなものを向けられても困るだけなんですけどね」
「…」
「だから、その様な感じが無い淳さんが私には嬉しかった。そして、惹かれたんです。特別扱いされない喜びが、変化したんです」
「…」
「でも…」
ここでコハルの動きが止まる。…唇が震えてる…
「私の名を漢字で表すなら"小春"なんです。…所詮、大きな春は来ないんです。大きな幸せは、決して訪れない…んですよっ…」
そして、目から再び涙が溢れ始めた。…多分、今までずっと我慢してたんだ。姉の手前、弱い自分は見せられなくて…
「でも…せめて今だけはっ…貸してください…私にっ…」
そう言い、コハルは俺のうでの中に収まり、泣いた
「…ごめんな、つらい思いさせたのは、俺も同罪かな」
「…そんな事っ…無いですよ…これは…仕方ないんですよ…」
五分咲きの桜の下、俺たちはしばらくこのまま時間を過ごした…




