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描かれる物語③…私はお嬢様の夢を奏でます

「…この本は…?」


とある日、私…草影が執務室に入ると私の机の上に緑色の本が置かれていた。…タイトルもないし、本を開いてみても何も書かれてない…


「…何か書けと、そういう事ですか…」


…仕方ない、この茶番に付き合いますか…



「…今日からお前の執事として雇った、草影奏夢だ。仲良くするんだぞ」


「…」


「…」


私が草影家の執事となった今日、私は早速お仕えする令嬢にあいさつに来ました。だがどうでしょう。当の彼女…大道寺憐香はこちらを一瞥すると、すぐにそっぽを向いてしまいました。…なんという教育をしているのだろう、ここの両親は


「え、えーと…よ、よろしくお願いしますね、憐香様?」


「ふんっ」


…しまいには逃げられた。初日から気分はこの上なく悪い。さて、勤め先を間違えたかしら



「憐香様、今日はお友達がお見えですよ」


「いいよ、追い返して」


「…は?ですが…」


「早く」


あれから2週間。私はなんとなくではあるが憐香様と話ができるようになっていた。ただ、この子の対人関係は最悪で、基本家の人以外とは交流を持ってないらしい。…小学校に入学したのだから、もう少し友達と遊ぶなりすればいいのに…


「…では、お帰りいただきますよ?」


「うん」


とりあえず命令なのでやって来た少女にはお帰りいただいた。…これは、かなりまずいような気がするんだけど…



「…憐香様。何かほしいものはございますか?」


「…」


とある日、私と憐香様は商店街に買い物に来ていた。…富豪なのだからもっと高価な店に連れていけと言われるかとも思ったのだけど、憐香様の希望でこの町の商店街になった。…うーん…


「…何かございませんか?ご両親からは何でも好きなものをお買いになっていいと言われてますが…」


「…」


そう聞くと、憐香様は一度こちらを見て、そしてある店の前まで歩いていく。…たこ焼き屋?


「お腹が空いたのですか、憐香様?」


「…」


無言ではあるが、しっかりとうなずく憐香様


「…では、すいません。たこ焼きをひとパ」


「二パック」


「…え?」


「二パック」


…憐香様は真面目な顔で二パックと訴えてくる。…一パック10個だから、二パックだと20個。いささか食べ過ぎな気がするけど…


「…分かりました。二パックお願いします」


「あいよーっ」



そして私たちはそれを食べるために公園に来た私たち。ベンチに腰を下ろしパックを開ける。…ソースの香りがおいしそうだ


「では憐香様、お召し上がりを」


「…ん」


憐香はパックを受けとると、つまようじで1つ刺し食べ始める。…本当に、なんかイメージとずれるな、この子


「…あたし」


憐香様がおもむろに口を開く。…?


「ぜいたくが嫌い…たこ焼きおいしいけど、ぜいたくじゃないから、おうちじゃ出ない。…本当なら、もっと普通がいい。普通が一番いい」


「…」


それは、憐香様との初めての"会話"だった。…今まで口を開かなかったのは、もしかしたらこれが原因なのかも知れない。自分が口を開けば、金持ちのわがままに聞こえるから…


「…憐香様、何かお願い事はありませんか?」


そんな彼女に私は手をさしのべた。…この子は、そういうのが嫌なんだ。だったらすこしでもそのしがらみを取ってあげることが、私の仕事だろうと思ったから


「…普通の学校に行きたい」


「…分かりました。じゃあ、指切りしましょう。約束ですからね」


「…指切り?」


この子は指切りをしらないらしい。まぁ、今までは大体金で解決してきたお嬢様らしいな


「小指同士で握って、こう言うんです。指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます、指切った、と」


「こわい!?はりせんぼん!?」


憐香様は飛び退いた。…確かに初めて聞くと結構エグいね


「大丈夫です、飲むのは私ですから」


「それはダメ!!」


すると今度は抱きついてきた。…心配されてる?


「…大丈夫です。私は、間違いなく約束は守ります」


「…ほんと?」


なお不安そうな彼女に、私はこう告げた。これが、今でも覚えてる二人の絆‐



「…はい、私は、憐香様の夢を奏でる人、草影奏夢ですから」

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