真っ白な本
「…お疲れーっす」
「あ!来たな、この物語の主人公め!物申す!ですよ!」
「…えー」
とある日の放課後、俺はいつも通り部室に足を運ぶと、なぜか入ってすぐのところに真昼が仁王立ちで立ちふさがっていた。…まあ、塞がってはいないんだが…
「…何だ真昼。脈絡もないことを…」
「脈絡なら大有りです!私は気づいたのですよ!」
「…何にだ」
目から火が出るくらい力の入った状態で真昼が俺に掴みかかってくる。…いきなりなんなんだよ…
「私はですね…貴方がこの作品の中の主人公だってことを!」
「…作品?主人公?全然理解できないんだが…」
「今からその言葉を証明してあげます!これを見やがれ!ですよ!」
「…?」
真昼が俺に手渡したのは一冊の本だった。それの表紙は真っ白で、タイトルも、どんな内容なのかもわからない。俺はそのままページをめくるが、どのページも変わらず真っ白。…もう本じゃなく、ただファイリングされた白紙の紙の束だ。…これが何だというのか
「…真っ白じゃねえか」
「はい!なぜかと言われればそれは河内先輩が執筆をしなければならないのですよ!」
「俺が?でも俺、そんな職業希望してないし…」
「でも私はわかるのです!これは先輩の人生なのです!なので先輩が持っていてください!」
そういうと、真昼はいそいそと帰る支度をし始めた
「ほかの皆は?」
「今日は休みと、部長先輩からメールきてましたよ?」
「マジ?…あ、マジか」
携帯のメールを確認すると、確かに阿見津先輩からメールが来ていた。ただ文面はなし。…?
「…文面がないんだが…って、あれ?真昼?」
携帯画面から目を離すと、真昼も姿を消していた。…いつの間に…
「…何か、不気味だな…」
俺は何か嫌な予感がしていた。学校の人影が少ない。今は掃除が終わってまだまだ賑やかなはずだが…ほとんど学生の姿が無い。これはどういうことだろうか?それにショー部の皆は未だに姿を現さず、阿見津先輩に送ったメールにも返信がない
「…カオルさんの仕業か?」
こういう時、一番問題を起こしてそうなのはカオルさんだ。俺はそう思い、電話を掛けるが…
『おかけになった電話番号は現在電波の届かないところにあるが、電源が入っておりません』
留守番電話サービスにつながってしまった。…なんでだ?なぜつながらない?
「…とりあえず、帰るか…」
どうしようもなくなった俺は、とりあえず家に帰宅する…
「…蜜柑もいないのか」
変だ、変すぎる。蜜柑は基本部活に顔を出さないときはまっすぐ家に帰ってきていた筈だ。何故いない?
「…返信も、折り返しの電話もない。偶然なんだかわからないが…ショー部に関係があるのか?」
俺は少しそれに引っかかった。さっきショー部以外のクラスの奴らに電話をかけて見たが、普通につながった。風と憐香のことを聞くと
「今日は二人とも休みだったろ?寝ぼけてるのか?」
ときたのだ。…そんな筈はない。風は去年一回休んだだけだし、憐香は皆勤賞のはず、それに今日は一緒に登校した記憶もある。…なのにクラスの奴らは休みと言う。…俺の物語…
「…この本が真っ白…なのが、今の状況に関係があるのか?」
俺がたどり着いた結論はこうだ。この本には俺がショー部であったことが記されていて、だけど今この本は真っ白だから、今までの出会いから全部”なかったこと”になっているのか?…という推理だ
「…真昼は、これを書くのは俺だって言ってたな…。ダメもとでやってみるか?」
俺はとりあえず、風との出会いを書き出していく…




