第3話 推ししか勝たん
ゴォォォォォッ!!!!
暴風が市場を吹き抜けた。
「きゃあああっ!?」
「伏せろ!!」
騎士達が咄嗟に身を低くする。
リリアの背後。
白銀の魔力が渦を巻き、
巨大な光輪が展開されていた。
「なっ……」
リリア本人が一番驚いている。
「魔力出力が……
急激に上昇してる……!?」
周囲の魔術師達が青ざめた。
「ば、馬鹿な……」
「通常の三倍以上だぞ……!」
「ありえない……
人間の魔力量じゃない……!」
男は一人、
目を輝かせていた。
「うおぉぉ……
解釈一致でござるぅぅ……!!」
「解釈一致!!?」
騎士隊長が絶叫する。
「SS級精神共有型禁呪だ!!
これ以上喋らせるなァァァ!!」
市場がパニックになる。
「逃げろ!!」
「街が消えるぞ!!」
「子供を連れて避難しろ!!」
「ちょ、ちょっと待つでござる!?
吾輩なにもしてな――」
「黙ってください!!」
リリアが叫ぶ。
だが。
その瞬間。
彼女の足元の石畳が砕けた。
ドゴォンッ!!
「えっ」
本人が固まる。
「魔力制御が追いついてない!?」
白銀の魔力が暴走し、
周囲へ雷のように散っていく。
「危険です!!
全員離れてください!!」
「リリア様!!
魔力障壁を!!」
「無理です!!
出力が高すぎて――」
その時だった。
男が、
ぽつりと呟く。
「いや〜……
リリアたん、
マジで推ししか勝たんでござるなぁ……」
――瞬間
世界が光った。
「…………」
一拍遅れて。
ドォォォォォォォン!!!!
市場中央に、
巨大な光柱が突き刺さった。
「ぎゃあああああっ!!」
「EX級禁呪だァァァ!!」
「《推ししか勝たん》発動確認!!」
騎士達が半泣きで叫ぶ。
「対象以外への認識阻害が始まってる!!」
「えっ?」
通行人の一人が目を瞬かせた。
「リリア様しか見えな――」
ドシャッ
その場に倒れる。
「精神容量が耐えきれてない!!」
「まずい!!
周囲が“推し”へ上書きされる!!」
市場は完全に地獄だった。
だが。
当の本人達だけ温度が違う。
「えっ……
えっ?」
リリアは混乱しながら、
男を見る。
「あなた……
本当に何なんですか……?」
男は困ったように頭を掻いた。
「いや吾輩にも分からんのでござるよ……」
そして。
少し照れながら言う。
「でも……
三次元に興味なかった吾輩が、
初めて“推せる”って思ったの、
リリアたんが初めてでござる」
「――っ」
リリアの顔が真っ赤になる。
次の瞬間。
バギィッ!!
市場の中央広場が吹き飛んだ。
「感情連動で威力上がってるゥゥゥ!!」
「もう終わりだこの街ィィィ!!」




