第15話 尊いでござる
薬草採取依頼を受けたモブ彦達は、
森へ向かっていた
「平和な依頼で安心しました……」
リリアが心底ほっとした顔をする
「失礼でござるなぁ」
全然信用されていなかった
シロは、
小型化した姿でトコトコ歩いている
モフモフだった
しばらく進むと、
森の近くに小さな村が見えてくる
「おぉ……」
モブ彦が感心した
「こんな危険な森の近くで暮らすとは、
なかなか恐れ知らずでござるなぁ」
リリアが肩を竦める
「森の恵みがある以上、
離れられない人達もいるんですよ」
村では、
子供達が遊び回っていた
シロを見つけた瞬間、
目を輝かせる
「わぁぁぁ!!」
「白いワンちゃん!!」
シロは嬉しそうに尻尾を振った
モフッ
「かわい〜!!」
一瞬で囲まれる
「完全にマスコットでござるな」
「元は災害級神獣なんですけどね……」
リリアは遠い目をした
その時だった
ガァァァァァァッ!!!!
森の奥から、
巨大モンスターが飛び出した
「きゃぁぁぁ!!」
村人達が悲鳴を上げる
巨大な牙
鋭い爪
明らかに普通の村人では対処不能だった
リリアが杖を構える
「下がってください!!」
しかし
モンスターの進行方向には、
転んだ子供がいた
「あっ……」
母親の顔が青ざめる
その瞬間だった
シロが前へ出た
モフモフだった毛並みが、
光を放ち始める
「……シロ?」
次の瞬間
ドォォォォォンッ!!!!
白銀の光が弾け飛んだ
小さかった身体が、
一瞬で巨大化する
白銀の巨狼
全長八メートルを超える、
神々しい神獣の姿
「なっ……」
村人達が息を呑む
シロは、
子供を庇うように前へ立った
そして
ガァァァッ!!!!
咆哮
空気が震える
巨大モンスターが吹き飛んだ
圧倒的だった
モブ彦が、
思わず呟く
「……尊いでござるなぁ」
リリアの動きが止まる
「……っ」
嫌な汗が流れる
「モブ彦さん」
「なんでござる?」
「その単語、
今すぐ撤回してください」
「えっ」
ゴォォォォォォッ!!!!
白銀混じりの光が、
周囲へ溢れ出した
「禁呪《尊い》ですよ!!」
「またでござるか!?」
「またです!!」
リリアが絶叫する
その瞬間だった
「グル……」
敵モンスターが固まる
ポロッ……
涙を流した
「え?」
モブ彦が困惑する
モンスターは、
シロを見つめながら震えていた
「グルゥゥ……」
戦意が消えていく
そのまま静かに森へ帰っていった
「帰ったでござる」
「《尊い》は感情干渉系禁呪です!!」
リリアが頭を抱える
「対象への感情共鳴を極端増幅させ、
戦意喪失・感涙・精神浄化を引き起こす危険禁術なんですよ!!」
「平和でござるなぁ」
「どこがですか!!」
その時だった
助けられた子供が、
巨大化したシロへ抱きつく
「ありがとうぉぉ……」
シロは、
優しく鼻先を擦り付けた
モフッ……
「尊ぉぉぉぉい!!!」
母親まで泣き崩れた
周囲の村人達も、
涙を流し始める
「白狼神様……」
「守り神だ……」
また変なのが生え始めた
リリアが天を仰ぐ
「だから感情系は危険なんですよぉ……」
その頃
遠く離れた聖教国家ニム
聖女は、
新たな報告書を見つめていた
「神獣形態への変化を確認……?」
神官が震える
「はい……
さらに対象周囲で、
精神干渉現象も……」
聖女は静かに目を閉じる
「……やはり危険ですね」
小さく呟く
「《ルシファー》は」




