第14話 そ、それは解釈違いでござる
第十四話 解釈違いでござる
「聞いたか?」
「白い神獣を従えた禁呪使い……」
ギルドの空気は、
完全に噂話一色だった
「裏で世界征服狙ってるらしいぞ」
「王都を落とすとか……」
「魔王では?」
「いや、
世界崩壊そのものだろ……」
好き勝手言われていた
モブ彦は頭を抱える
「盛られすぎでござる!!」
シロは隣で、
のんびり尻尾を振っていた
リリアは深いため息を吐く
「まあ、
半分くらい事実なのが怖いんですが……」
「違うでござるよ!?」
周囲がザワつく
「必死に否定してる……」
「怪しい……」
「黒幕ほどそう言うんだ……」
モブ彦の顔が引き攣る
「いやいやいや!!
吾輩ただのキモオタでござるから!!」
誰も信じなかった
むしろ後退りされた
「終わったでござる……」
モブ彦が崩れ落ちる
その時だった
受付嬢が小声で呟く
「でも、
神獣に好かれてるんですよね……?」
「案外、
神の使いだったりして」
別方向の噂まで生え始める
「白銀神獣……」
「伝承の救世主……?」
「神託か……?」
モブ彦は困惑した
「なんか変な方向行ってるでござる」
リリアの顔色が悪くなる
「これ、
かなり危険な流れなんですが……」
しかし
別の冒険者が叫ぶ
「騙されるな!!
あれは悪魔の洗脳だ!!」
「世界を乗っ取る気だぞ!!」
「魔王だ!!」
ギルド内が一気に荒れ始める
「救世主だ!!」
「いや悪魔だ!!」
「神の使いだ!!」
「災厄だ!!」
モブ彦は頭を抱えた
「そ、
それは解釈違いでござる!!」
ピシッ
リリアが固まった
「……最悪です」
ゴォォォォォォッ!!!!
紫黒い魔力が、
ギルド全体を覆い尽くした
「禁呪《解釈違い》ですよ!!」
「またでござるか!?」
「またです!!」
リリアが絶叫する
その瞬間だった
「やはり神の使いだ!!」
「白狼神を従える救世主!!」
数人が突然跪いた
逆側では
「見るな!!
精神を汚染されるぞ!!」
「悪魔だ!!」
「世界を壊す気だ!!」
完全に真っ二つだった
リリアが頭を抱える
「《解釈違い》は認識汚染系禁呪です!!」
「対象への認識を極端化・分裂化させ、
周囲へ認識対立を発生させる危険禁術なんですよ!!」
「推し界隈みたいでござるなぁ」
「そんな地獄知りません!!」
その時だった
一人の老人が、
シロへ跪いた
「白き御使い様……」
「この世界をお救いください……」
周囲まで釣られる
「救世主様……!」
「白狼神様……!」
「ルシファー様……!」
なんか混ざった
「増えてるでござる」
モブ彦が引いた顔をする
シロは、
そんな空気など気にもせず
モフッ
老人へ頭を擦り付けた
「おぉぉぉぉ!!」
「奇跡だぁぁぁ!!」
「だからやめてくださいぃぃぃ!!」
リリアの絶叫が響いた
その頃
遠く離れた聖教国家ニム
聖女は静かに資料を閉じる
「認識分裂まで発生……」
神官が震える
「やはり危険です」
聖女は静かに目を閉じた
「……いえ」
そして小さく呟く
「実際に会わなければ、
何も分かりませんね」




