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第9話 この料理旨いピヨ……ダンジョン飯ピヨ!?


 沼地のような池に手を突っ込み、電力を走らせる。



「〈電気疾走エレクトリック〉」


【キシャアアアアアア!!!!】


「……浮いてきましたわね! 〈風切ウィンドカッター〉」


【ゴギャア!?………ギシャァ………】


「………すごいや、宵宮さん。まさか風魔法まで使えるようになってたなんて」 

〖モンスターが細切れピヨ。そして池が血の池地獄ピヨップ。……恐ろしい小娘ピヨ〗


 俺の肩に乗るスザクが、青ざめてた顔をしていた。



 最序盤の鬼門・「ミノタウロス」を倒した俺たちは、各階の希少アイテムを素早く回りながら、勢いをそのままに45階まで駆け上がり、フロアボス「イール・フィッシュ」を倒した。



「綺麗に切られてる。すごい威力の風魔法だね。宵宮さん」


「はいっ! これも私と天照さんの愛の力ですわ!」


「そうなんだ。それは良かったね」


 宵宮さんが、この場をなごませようと冗談を言っている。


「それよりも、「イール・フィッシュ」の死骸を回収しようか」


スキル発動────「巾着袋」


〖ピヨップププ!!! 小娘。陽光ようこうに華麗にスルーされたピヨ。残念だったピヨップな……グエエェェピヨッ!!!〗

「お黙りになって下さる? 私、ちょっとセンチメンタルですの」

〖我の……くちばしの向こう側から、中身が飛び出ちゃうピヨッ!!〗


 今日も、宵宮さんとスザクは激しいコミュニケーションを取っている。


 俺はそれをながめながら、池に浮かんだ《《食材》》を鮮度が良いうちに回収した。





◇◇◇


 45階と46階の間にある安全地帯セーフティーゾーンへとやって来て、先ほど回収した「イール・フィッシュ」と集めてきた素材を宿屋の不思議存在アンタッチャブルズに見せた。


「こんにちは。この食材と他にも……すぐに調理してもらえますか?」

「こんにちはですわ。不思議存在アンタッチャブルズさん」


【いらっしゃいね〜! 新規のお客さんなのね? ダンジョン食材お持ち込みありがとうなのね〜!……その黄色い鳥もダンジョン食材ね?】


「はい、どうぞですわ!」

〖違うピヨッ!! 我は、この渋谷ダンジョンの主ピヨッ!〗


【………ふ〜ん。そうなのね。お客様。いらない素材とか食材はうちで買い取っていいのね? お高く買い取らせて頂くのね。うち等は美味しい物に目がないのね……えさせたら、旨そうな食材になりそうな、ひよこなのね】


〖聞けピヨップッ! そして、我を見て、よだれをらすなピヨッ!〗

「あ、それでお願いします。調理が終わったら呼んで下さい」


【了解ね〜!】


 ダンジョン内では、一定の階層を越えると、人間が食べても美味しく感じられるレベルのダンジョン食材が手に入る。


 渋谷ダンジョンの場合は40階を超えてからで、ミノタウロスまでのモンスターは、人間が食べるダンジョン食材に不向きとされていて、食べてしまうと激しい腹痛を起こすことになる。


 まぁ、ダンジョン攻略の序盤がスライム、ゴブリン、虫モンスターのため、そんなものを食べれば身体を壊すのは当たり前といえば当たり前だけど。


 でも、40階からは違う。森林エリアだった場所が池や湖のような水辺に変わって、新鮮な魚系統のモンスターが現れるようになって、食べても体調を崩さなくなるんだ。


「むしろ食べると基礎ステータスが上がるからね。新鮮なうちに食べておかないと」


「次の階からは、香草や木の実も集めていきましょう。ダンジョン攻略中盤に備えなくてはいけませんわね」


「うん。……後5階昇れば、50階。そこで一気にレベリングして、渋谷ダンジョン中間地点に居る250階のフロアボス″雷幻馬キリン"を倒せるようにしないとね」


雷幻馬キリンですか。……戦力的にかなり厳しい戦いになりそうですわね」


 不安そうな表情になる宵宮さん。

 たしかに俺たちの現在のパーティーメンバーは、2人と1匹。階層を上がって行くに連れて、戦うモンスターも強くなっていき、戦いは厳しくなっていくに違いない。


「……この先、ダンジョン内で仲間は増やせないこともないかな。そこら辺は色々と考えてるよ」


「まぁ!? 本当ですか? まさかダンジョンの外にいたマリア様たちが内部に来られると?」


「いや、マリアたちは来ないと思うよ。スザクに聞いたら、『太陽宝玉プロミネンス・プラネット』が正しい持ち主に渡るまでは、渋谷ダンジョンの反転は収まらずに出れないって言っていたからね」


「出れないですか…………」



【旨いもん作るからね〜!】【久し振りのダンジョン食材ね。腕がなるね〜!】【今日は豪華なお食事なのね〜!】

〖ピヨ!ピヨ!ピヨ!ピヨッ! 頑張るピヨ〜! 我に美味しい物を提供するんだピヨ〜!〗


 宵宮さんは、厨房で料理している不思議存在アンタッチャブルズたちを、楽しいそうに応援しているスザクを見つめて大きな溜め息を吐いた。


「ふぁ〜! あの雛鳥。私にはそんなこと一言も言ってませんでしたわ。謎の塊過ぎですわね。あの雛鳥は」


「そう? 俺には、渋谷ダンジョンの事情とか細かな構造とかを、すごく丁寧に教えてくれるよ。昨日なんて、スザクの好きな食べ物も教えてもらったんだ」


「………私、そんな会話、あの害鳥と一言も喋ったことありませんわ」


「ツバメの巣が大好物なんだって、面白いよね」


「……………そうですわね。あの雛鳥は後でお仕置き確定ですわ」


 宵宮さんは、なぜかイライラした表情をしていた。額に青筋もバッチリ見える。


〖ピヨ!ピヨ!ピヨ!ピヨ〜!〗



【お待たせしたね〜! 遅くなって悪かったね。味付けにこだわってたら、時間かかったのね】

【お待たせしちゃったから、お詫びに「アリスドールの右腕」をあげるのね。本当にごめんなのね】

【申し訳なかったのね。それにウチ等の分まで食材を貰っちゃって、本当にありがとうなのね 】


 不思議存在アンタッチャブルズが申し訳なさそうに、女の子の腕のような物を俺に手渡してきた。


「あ、いえ、気にしてませんから。良かったら。一緒に食事にしませんか?」

「あ、天照さん? 不思議存在アンタッチャブルズさんたちになにを……んんん!?」



 不思議存在アンタッチャブルズからのプレゼントを右手で受け取って、左手で宵宮さんの口を素早く抑えた。


【【【一緒に食べていいのね?】】】


「ええ、一緒に食べましょう。食事はみんなで食べた方が美味しいですからね」


【【【ありがとうなのね〜!】】】


 俺が許可すると、不思議存在アンタッチャブルズは自分たち用の作った料理を持ってきて、俺たちのテーブル近くに座った。


「ぷはぁ!? あ、天照さん。どうしたんですの? こういうのは2人きりで優しく取り扱って下さらないと……めっ!ですわ」



 宵宮さんは、可愛らしくウインクしながら俺の口元へ指をくっ付けた。

 どうやら俺がいきなり彼女の口を塞いだから気が動転しているみたいだ。


「………渋谷ダンジョンの一周目の100階辺りで気がついたんだ。不思議存在アンタッチャブルズたちにも好感度があることがさ」


「はい? 好感度ですか?」


「うん。宵宮さんは、同じパーティーメンバーのアキラたちは、彼等をぞんざいに扱ってたの覚えているかな?」


「………え、ええ、安全地帯セーフティーゾーンについて宿に泊まる度に、不思議存在アンタッチャブルズの方々に暴力を振るっているのを何度も見かけましたわね。あの方たちが温厚でやり返さないのをいいことに」


「そう。アキラたちは不思議存在アンタッチャブルズに嫌われていた。だから今後必要になるプレゼントを貰えなかったんだ」


「プレゼント。……人形の腕ですか」


「うん」



 俺が初めて、不思議存在アンタッチャブルズからプレゼントを貰ったのは渋谷ダンジョン一周目の100階クリアの時だった。


 その時は、脚をプレゼントされたっけ……


「この二周目では、彼等となるべく友好的になっておこう。それが後に回り回って、俺たちに必ずプラスになるからね」


 そう。俺は一周目はクリアしてるんだ。


 同じ失敗は繰り返さない。


〖ピヨピヨ……お前たち料理が旨いピヨ!〗

【食材がなにか喋ってるね】

陽光ダンナさんのペットらしいね】

【……成長したら食う気なのかね? 不味まずそうなのね】

〖なに、我を食材扱いしてるピヨップ!!〗



 俺たちが頂きますをする前に、スザクと不思議存在アンタッチャブルズが食事を始めていた。


「ハハハ、賑やかだね。俺たちも食事にしようか。宵宮さん」


「はいですわ。天照さん」


 その日、ダンジョン食材を使った料理を食べた俺たちの基礎ステータスがほんの少しだけ上昇した。




◇ 


 安全地帯セーフティーゾーンのダンジョンの夜は不思議なもので、夜になると快晴の星空がよく見える。


 そんな夜空を、俺は外に出てボーッと見つめている。



 ここまでのダンジョン攻略は順調、これから必要になっていくアイテムも全部回収できている。


「気をつけるのはレベリング調整。……それと欠損した右腕かな」


「眠れませんか?」


「……宵宮さん」


 寝巻き姿の宵宮さんが、いつの間にか俺の横に立っていた。


「うん。……少しだけ今後のことで不安になってたかな」


「まぁ! 《《あの》》天照さんが不安になるなんてあるんですのね」


「そりゃあ、あるよ。宵宮さんを無事に外の世界に帰してあげないといけないんだからね」


「…………天照さん。少しお話しましょう。いつも雛鳥が私に付きまとって、なかなか天照さんと2人きりでお話できませんし」


「お話か、そうだね。今後のダンジョン攻略とか……んぉ!?」


 口を塞がれた。さっきの仕返しかな?


「いいえ、外でのお話ですわ。天照さんが知っている世間話を楽しくしましょう。たまにはそういうのも大切ですもの」


 彼女はそう言うと俺の口元から手を放し、右隣に腰を下ろした。


「天照さん。さぁさぁ、私の隣に来て下さい。今夜はゆっくりとお話致しましょう」


「ハハハ。こんな強引な宵宮さん、初めてだね」


「そうですわ。天照さんは少し強引に誘わないと駄目ですもの。さぁ、私と楽しくお話致しましょう」


「うん、分かったよ。宵宮さん」


 俺たちはダンジョン内の星空をながめながら、楽しい一時を過ごした。



天照あまてらす陽光ようこう

レベル100(縛りの首飾り装備中)

スキル 模倣 巾着袋 心眼 業物 瞬動

火魔法(中級)雷魔法(初級)

宵宮よいみやカノン

レベル99(縛りの首飾り装備中)

スキル 福音 補助 天幕 結界

水魔法(中級)風魔法(初級)

回復魔法(初級)

スザク(不死鳥フェニックスの雛鳥)

レベル4

スキル 隠密 物真似ものまね


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