表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/12

第8話 最序盤の鬼門 40階ミノタウロス


 現在、渋谷ダンジョン39階「シンリン神殿」階段前。



「やれるだけの準備と休息は取った。後は、死なずに40階を踏破クリアしよう……………行こうっ! 宵宮さん、スザク!」


「はいっ!」

〖倒すピヨップ!〗


 俺たちは、39階の転移門ゲートを潜り。いざ、渋谷ダンジョン最序盤の鬼門と呼ばれる40階へと向かった。



 渋谷ダンジョン40階「牡牛の部屋」。その階はシンプルな造りのダンジョンだった。


 古びた石柱がそこら中にある、ギリシャ神殿を思わせるような建物。

 その中に41階へと上がるための転移門ゲートが設置されていて。


 それを守るようにフロアボス「ミノタウロス」が、弓を構えて俺たちを待ち構えていた。



【ルオオオオォォ!!!】


 黄金のような両角、日緋色金ひひいろかねに輝く全身、4メートルはあるであろう巨体が両足を地面に付け、両手で器用に弓を構えている。


 間違いない。初心者は4人以上で、攻略することが推奨されるミノタウロスだ。



【……………〈早弓矢ファスト・ショット〉】


 

「初撃が来る! 宵宮さん、スザク。俺の後ろへ」


「はいっ!」〖ピ、ピヨ……〗




 宵宮さんとスザクを俺の後ろへと避難させて、ミノタウロスが放った矢を真っ直ぐに見つめる。


「まだ……まだ……まだ……今だっ!」


スキル発動────「巾着袋」


【…………………?】


 ドスッ!………っと、俺に矢が刺さらなかったのが不可解だったようで、ミノタウロスが不思議な表情をしている。


 それはそう。あれほど渾身の一撃で放った矢が、突然消えたらそんな顔にもなるだろう。


「よし、初見殺しは《《回収した》》。戦闘を開始しよう。宵宮さん、今回は作戦通り後衛に徹して、スザクはあれの準備を」


「了解しましたわっ! お返しです! 〈水弓ウォーターアロー〉」

〖バレないように遂行するピヨップ……ピヨ……ピヨ……〗


 俺の後ろで、水魔法の〈水弓ウォーターアロー〉を発動し、射る機会をうかがっていた宵宮さん。


 魔力を溜めに溜めた渾身の水矢をミノタウロスの頭頂部へと放つ。


【ルオォ……ルオオオオォォ!!!】


 宵宮さんの殺気に気がついたミノタウロスは、腰に帯刀たいとうしていた「錆びた大剣」を両手で持つと、宵宮さんが放った水矢を弾こうと大剣を頭上へと振り上げた。


「それだと腹部ががらきだよ。エメラルドゴブリンの右腕────〈小緑鬼の太刀〉」



 翡翠色に光る自身の右腕だけで、重い「翡翠の鉄剣」を振るう。




ズバンッ!!………ブシュウウウウ!!



 ミノタウロスの腹部から、大量の血飛沫ちしぶきが噴き出す。


【ルオ?………】


 一瞬なにが起こったのか理解できていないミノタウロス。そんなミノタウロスの顔面目掛けて、宵宮さんの水矢が当たる。


ドスッ!


【グルオオオオオオオ!!!!】


 水弓は、ミノタウロスの右目へと見事に命中し、失明させることに成功した。



「…………ここまでは想定内。ここからが、正念場か。〈雷躍動ライトニング・ヴァイブラント〉」

 

 スキル発動―――「心眼」


 覚えたての「雷魔法」と「心眼」。


 身体能力を少しだけ上げる〈雷躍動ライトニング・ヴァイブラント〉と、相手の弱点を見つけやすくする「心眼」で、こちらの人数不足を補う。


「斬るっ! ハアァァァッ!!」


 失明して視界が悪くなったミノタウロスの胸部へと「翡翠の鉄剣」を片手で振り上げる。


【ルォ!?……ルオオオオォォラアアア!!!】


 そして、ミノタウロスは俺の殺気を感じたのか。宵宮さんに襲いかかろうとしていた行動を止め、俺が放った「翡翠の鉄剣」の突きをすんでのところで防いだ。


「つっ!…………死角からの完全な必殺の一撃を防がれた。以前の攻略だったら、最初の一撃で瞬殺だったくせに! 硬すぎだってのっ!

火球ファイアーボール〉」


【ルオオオオォォ!!!】


 左手から火球ファイアーボールをミノタウロスの顔面へと放ち視覚を奪う。


 そして、ミノタウロスから距離を取るために3メートルほど後方へと下がって、適切な間合いを図る。


「…………40階ミノタウロスのレベルは、たしか48だったはず。倍くらいのレベリングで挑んだけど、人数が少ないとここまで戦い方がシビアになるんだね」


【……………〈牛刀乱闘シェフズナイフ・ブロール〉……ルオオオオォォラアアア!!!】



 きた。

 ミノタウロスのユニークスキル「牛刀乱闘シェフズナイフ・ブロール」。


 両手に持った大剣を、狙いを定めた相手に一心不乱に振り回し続ける自爆技。



「厄介なのが、この技の威力は、渋谷ダンジョンの100階クラスの攻撃力がある。………つまり当たれば即死するリスクがある。〈雷光ライトニング〉」


 雷魔法(小)で再び身体能力を上げた。


 少しでも躱せる確率を上げるために。


 今の俺のレベルでは、ミノタウロスの「牛刀乱闘シェフズナイフ・ブロール」を一撃でも喰らえば死ぬことはなくても、身動きは封じ込められる。


 そうなれば、動けるのは宵宮さんとスザクのみになり。俺たちは一方的に蹂躙されて死ぬことになる。


【ルオオオオォォ!!!!!】


「至近距離からの咆哮ほうこうで俺をひるませる気かい? そんな対策済みだよ。〈小緑鬼の太刀〉」


 こちらが警戒の色を見せたことで油断したのか、ミノタウロスは大口を開けて大声を上げた。


 俺は、その一瞬の隙を見逃すわけもなく。右手に持っていた剣を大きく下から振り上げ、ミノタウロスの顔面目掛けて攻撃した。


 したけど。

 ミノタウロスは、身体をねじり。俺が放った攻撃を左腕で防ごうとした。


【…………ガギィァ!?】



 この攻撃でミノタウロスの左腕が斬れ、空中に血飛沫を上げて飛ぶ。


「エメラルドゴブリンの右腕をなめすぎだよ。腕力なら、君と……ミノタウロスとタメを張れるんだからさ」


【ルオォオァオオオ!!!】


 左腕を切断されたことで、再び雄叫びを上げるミノタウロス。


「だから怯まないし聞かないよ。俺の両耳は、宵宮さんの「補助」のスキルで守られているんだからさ」


 かなり離れた場所で、立っている宵宮さんを見つめる。


「…………………………」


 彼女は今、「補助」スキルを発動することに全集中しているため、額……いや、身体中から汗をかいていた。


 ミノタウロスとの戦う前、俺たちは作戦を立てていた。


 今回の戦いでは、俺が前衛になり、ミノタウロスと一対一で対峙。今現在できる肉体強化を自身にほどこして、時間を稼ぐ。


 宵宮さんは、「補助」スキルで俺の身体能力を上げつつ、この戦いで視覚、触覚、嗅覚、聴覚、味覚などの五感に変化が起きないようにプロテクトを掛ける。


 そして、スザクはというと────


〖ピヨ……ピヨ……ピヨピヨ。我は無垢なるヒヨコピヨ。我は人畜無害なヒヨコピヨピヨ……四方に女王蜂クイーンビーナスの針をセットピヨ。陽光ようこう! 準備完了ピヨップ!!〗


 スザクからの掛け声。


 俺の時間稼ぎは、これにて終了。


「お疲れ様、スザク! くらぇ!〈火弓矢ファイアーアロー〉────〈小緑鬼の太刀〉」



 「翡翠の鉄剣」に火魔法を纏わせ、動きが鈍くなったミノタウロスの首元へと深く突き刺す。


 そして、突き刺したと同時に、「翡翠の鉄剣」から火の弓矢をミノタウロスの身体全体へと放つ。


【ルオオオオォォ!!!】


 全身丸焦げと化したミノタウロス。


「………決める」


 右腕におおっていた「抑えの布」をほどいて、ミノタウロスの角へと巻き付け、そのまま「抑えの布」を持った状態で、スザクがセットした女王蜂クイーンビーナスの極太の針へと、俺は走り始めた。


【ゴオォ!!……ゴォアアアア!!】


 俺に引っ張られないように、その場で踏ん張り始めたミノタウロス。それを見た俺は、とあるスキルを発動させた。


スキル発動────「模倣」


 「模倣」は俺が模倣コピーしたいと念じた対象を一時的に増やす効果がある。


 そこで俺は、右手に持っていた「抑えの布」の先端……"繋ぎ目"の部分を増やし始めた。



「極めて序盤で手に入る「抑えの布」が、切れにくく伸縮性に富んでいるなんて、渋谷ダンジョンの初心者ビギナーじゃまず分からない。二週目からはこんな戦い方ができるんだ。ミノタウロス!」


 度重なる魔法とスキルの併用で、自身の魔力が尽きかけているのは分かる。


 なので、身体を酷使するミノタウロスの近くに置かれ、四方に設置された女王蜂クイーンビーナスの極太の針に向かって。


 何十回と回り続けた。



【………ブモオオ……オオオォ……】


 四方に巻かれた「抑えの布」のせいで、ミノタウロスの身体自体も身動きがとりづらくなっている。


「ハァ……ハァ………そういえば……まだ返してなかったよ。君から貰った最初の一撃」


スキル発動────「巾着袋」


 俺は残りの魔力を使って、「巾着袋」の中にしまっていたとある矢の攻撃をミノタウロスの地面の下に取り出した。


「威力は殺してないからさ。直ぐに逝けるよ……さようなら。最初の鬼門ミノタウロス。チェックメイトだ」


【ブモオォ!? ブオォオオオオオ!!!】



 ただならぬ危険を察知したミノタウロスが激しく暴れだそうとした瞬間だった。


シュゥゥ……ドスッ!


【………ブォ……オォ……】


 最初の開戦でミノタウロス自らが放った〈早弓矢ファスト・ショット〉が、「巾着袋」から地面へと飛び出し、ミノタウロスの内股を貫通し、頭蓋骨まで勢いよく貫通した。


ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!


【グオオオオオ!?】


 そして、突き刺しはそれだけでは終わらなかった。

 四方に置かれていた女王蜂クイーンビーナスの極太の針が「抑えの布」に巻き取られて、ミノタウロスの身体へと針を向けて迫り、その身体を容赦なく貫通させたんだ。


 ミノタウロスの身体から大量の血飛沫が舞い。ミノタウロスは絶命した。


「…………悪いけど勝たせてもらうよ。俺は宵宮さんを、必ず地上に帰す使命があるからね。だから、ごめん」


 ミノタウロスの死骸を見つめながら、静かに謝った。



〖ピコンッ! タラタタッタタッタラ〜!〗


スキル発動────「模倣」


 レベルが上がり、「模倣」のスキルが勝手に発動した。


 右腕がミノタウロスの腕へと変わっていく。

 

 今回の腕は流石にデカすぎるため、応急措置として血まみれになった「抑えの布」で右腕ぐるぐる巻きにして《《封印》》する。


「次に目指すは、50階スライム島だね」



天照あまてらす陽光ようこう

レベル99

スキル 模倣 巾着袋 心眼 業物

火魔法(中級)雷魔法(初級)

宵宮よいみやカノン

レベル98

スキル 福音 補助 天幕 結界

水魔法(中級)風魔法(初級)

回復魔法(初級)

スザク(不死鳥フェニックスの雛鳥)

レベル4

スキル 隠密 物真似



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ